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あぁ、だから一人はいやなんだ。

2025.01.30 公開 ポスト

第240回 富士キャン<前編>いとうあさこ

さてはて。前回は“一富士 二富士”を静岡側から堪能した新年の話を聞いていただきましたが、今回は更なる“三も富士”のお話。今年三回目の富士山は山梨側から。場所はキャンプ場。二度目のソロキャンプをしながら拝みました。

昨年1月に初めてソロキャンプをし、注意報が出るほどの信じられない強風で、晩御飯のお鍋をまだ一口しか食べてないのに全部吹っ飛んだ、という話を以前書かせていただきましたが、今回はリベンジ。二度目のソロキャンプへ。

 

いや、リベンジはかっこつけ過ぎか。正直言うとみんなに断られての、ソロ、です。いやね、いつかリベンジ出来たらステキだな、とは思っていましたよ、本当に。だけどそんなわけでご飯も一瞬でなくなり、ずっと空腹だったし、風がすご過ぎてテントを止めているペグという杭が何度も抜けたし、風の轟音で一晩中怖かったし。一人の心細さをイヤというほど味わったので、「やっぱり二人キャンプがいい!」と思っていたのです。なので連絡しました。「キャンプ行かない?」って。三人。断られました。そりゃそうなのよ。皆さまちょうどお正月休み明けて仕事始まったばかりのタイミングだったから、お休みなんて申請できる時じゃない。こちらの仕事は、毎年1月上旬は生放送以外、そこまで本格的に始まらないので余裕あり。ん-、だったらやめようかな。何度もそう思いました。一人、というのももちろんのこと、私のキャンプにつきもののお天気問題。その日が、その日“だけ”が、雨予報。ずーっと雨が降らな過ぎなくらい降ってなかったのに、そこだけ、雨。まあまあでもね、言っても天気“予報”ですから。今までも近くになったらお天気変わること、多々あったから。でも結局、日程がいくら近づいても、その日の雨予報は変わらず。それどころかその日の前後、曇り予報だったのが、次々に晴れ予報に変わっていっているのに、キャンプ当日だけ、雨予報のまま。そりゃあ、行こう、という気持ちも薄れちゃいます。なので実は1回キャンプ場予約したんですけど、キャンセルしたんです。でも何故か毎日お天気チェックをする自分がいる。やっぱり行きたいんですよね、キャンプ。

3日前。ここまでくると1時間ごとの天気もわかるようになるのですが、「ウソでしょ!?」と思わず叫んでしまった。本当にずーっと晴れなのに、私がキャンプ行く日の14~22時だけ、そこまでの雨量じゃないけど雨が降り、その後また曇りなど挟まず晴れ、の予報。そんなことある? なんだろう。誰かに試されているのか? 私。ただスケジュールを確認したところ、ここで行かないと今季の冬キャンプはもう行く時間なさそう。ううう。こりゃあもう行くしかない。よし、行こう。私は、決めた。

そうと決めたらもう進むのみ。もう雨はほぼほぼ確実なので、だったら逆手にとってやろう。“雨予報の平日が狙い目”と書かれていた、富士山の見える、予約のとれない超人気キャンプ場を検索。ホントだ。めっちゃ空いている。これはチャンス。人気キャンプ場だけあって、行った方のあげた動画がたくさんあったので、片っ端から観まくり。広いキャンプ場の中、どの区画サイトから見る富士山がいいかをチェック。しかもサイトが砂利なので、雨でも水はけ良さそう、ということも知れた。いいぞ。富士山もよく見えて、トイレや炊事場も近いサイトを選び、予約完了。

さあ、あとはお天気との攻防戦。元々14時から降り始め予報だったのに、日が近づくにつれて少しずつ前倒しになり、直前には12時からの予報に。おいおい、ちょっと待ってよ。そのキャンプ場は13時チェックイン。しかし1000円払えばアーリーチェックインと言って11時半には入れる。30分間でテントの外側だけ建てられれば、雨量もそんなじゃなさそうだし、そっから少しずつ整えていけばなんとかなるかも。よし、それでいこう。雨が降るまでの30分が勝負だ。ただ私のテントはちょっと大きいので一人での設営はなかなか大変。前回のソロキャンプの時は実に2時間もかかってしまった。それでは1時間半のオーバーでビショビショになってしまう。ダメだ。再びYouTubeを開く。自分のテントを検索してみる。すると、あった。めっちゃベストの動画発見。“同世代”の女性が“同じテント”を“一人で”建てる動画。最高だぜ。それをくり返し何度も何度も観て、30分で建てられるよう、頭の中に手順とコツを叩きこんだ。そして再度、行くキャンプ場の動画をめちゃくちゃ見てキャンプ場全体の造り、受付の場所、受付からサイトまでの移動の仕方など、出来得る予習をしまくった。これでいける。いける、はず。

当日。朝起きてまず、天気予報を見てみた。え? あれ? 更に早まり、まさかの11時から雨予報。ちょっと待ってよ。ねえ、アーリー“アーリーチェックイン”って出来ませんか? テレビからは「まとまった雨は40日ぶりですねえ」なんて声が聞こえてきた。ああ、なんで今日に限って。出来るだけテンション上がる音楽をかけながら、私は早めに家を出て、キャンプ場に向かった。道中、雨どころかあられが降ったりして、今夜の寒さを覚悟しつつ、2時間弱で到着。ちょうど11時。受付30分前です。最終チェックアウトの時間でもあるので、何組かギリギリまでいらした方がゴミなどを始末したりしていた。予報通りパラパラと雨が降り出した。お願い、しばらくこの“パラパラ”のままでいて。まあ言っても天気予報によると降水量も夕方まで1~2ミリ程度なので、なんとかなるか。とにもかくにも11時半ジャストに受付をして、1秒でも早くテントの設営を始めたい。ということで一度車を降りて、売店を見ている感じでウロウロしてみる。そうです、“こんにちは”待ち、です。キャンプ場のお姉さんに「こんにちは」なんて話しかけていただいたらこっちのもん。受付の仕方とか聞いたりして、よりスムーズにいけるようにしたい。そのための30分前到着ですもの。表面は出来るだけ落ち着いた感じで、でも頭の中はT-SQUAREのF1の曲「Truth」がガンガン流れている。30分間の、勝負だ。あ、お時間。どうかあと1回、続き、お付き合いください。

 

【本日の乾杯】

前回登場の山田ジャパン・ゆきちゃんからいただいた島根土産の赤てん。思ってた以上にピリ辛。表面をちょっと焼いて、たっぷりの大根おろしでパクリ。くうううう、ビールしか合わん。

関連書籍

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。3』

海への恐怖を感じた、初めての遠泳。4人で襷を繋いだ「24時間駅伝」。お見合い旅inマカオ。“初”キスシーンに、“初”サウナ。ドラクエウォークで初めての高尾山。接続できずに大騒ぎのリモート飲み会。拍子抜けだった大腸検査。ブームに乗って、のんびり「おばキャン」、のつもりが……。いくつになってもあさこの毎日は初めてだらけ。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。2』

セブ旅行で買った、ワガママボディにぴったりのビキニ。いとこ12人が数十年(?)ぶりに全員集合して飲み倒した「いとこ会」。47歳、6年ぶりの引っ越しの、譲れない条件。気づいたら号泣していた「ボヘミアン・ラプソディ」の“胸アツ応援上映”。人間ドックの検査結果の◯◯という一言。ただただ一生懸命生きる“あちこち衰えあさこ”の毎日。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

ぎっくり腰で一人倒れていた寒くて痛い夜。いつの間にか母と同じ飲み方をしてる「日本酒ロック」。緊張の海外ロケでの一人トランジット。22歳から10年住んだアパートの大家さんを訪問。20年ぶりに新調した喪服で出席したお葬式。正直者で、我が強くて、気が弱い。そんなあさこの“寂しい”だか“楽しい”だかよくわからないけど、一生懸命な毎日。

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