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あぁ、だから一人はいやなんだ。

2025.02.28 公開 ポスト

第242回 バク転いとうあさこ

私は小さい頃からよく動いていた。中でもダンスはずーっと好きで。記憶にある中で一番古いのは、やっぱりピンク・レディーとか。いや、ピンク・レディーのデビューが幼稚園の年長さんの時だったから、もっと古いのあるな。そうだ、CMソングだ。例えばハトヤ。♪4・1・2・6 4・1・2・6 踊ってないわけがない。あとあれだ。文明堂。♪カステラ一番、電話は二番、三時のおやつは文明堂ぉ~ の最後のところでうつぶせになってお尻を振った記憶、あります。ええ。

 

CMで言うなら大人になっても武富士のCM、“もちろん”踊りました。あのCM観て、じっとしていられるわけがありません。最後の♪ジャジャジャジャ、であの反り返ったポーズ決めると、ハアハア息は切れますが、見上げた空が何せ気持ちよかった。そう言えば以前、青森の屋外でのイベントにて。当時やっていた浅倉南ネタで新体操のリボンを振り回してステージに出て行ったのですが、天気は最悪。最初ポツポツだった雨が、ネタを進めるうちにどんどん強くなっていった。お客様が濡れちゃうので「どうぞ木陰や建物の中へ行ってください!」と申し上げまして。ほとんどの方が遠くから私を見守っていた。リボンも濡れると当然回せなくなりますから、もうにっちもさっちも、です。でも持ち時間は20分。土砂降り状態になったので、一度リボンを置いた。突然「武富士ダンス、踊ります!」と私。そして踊る前に一声。「雨よ、やめ!」以前インドネシアに行った時に“レインストッパー”という、結婚式や大事な祭りなどの時に雨をやませる、要は“晴れ乞い”の人がいる、というのを聞いた事がありますが、まあそれ“風”、です。そして武富士ダンスを土砂降りの中、ずぶ濡れになりながらめっちゃくちゃ一生懸命踊りました。するとどうでしょう。最後の♪ジャジャジャジャ、でポーズをした瞬間、雨、やんだんです。本当にピタッとやんだんです。超奇跡。「うおぉーーーー!!!!!」今まで雨宿りしていた物凄い数のお客様が歓喜の声をあげながらステージ前に戻ってきてくれたのです。その時MCの古坂大魔王さんも舞台に駆け上がっていらして抱き合ったりして。あの時の興奮は忘れられない。そんなCMソングたちの他にも「フットルース」「フラッシュダンス」「コーラスライン」などの映画のダンスや、どこかから聞こえたリズムで勝手な“オリジナルダンス”も含めると、気づくと踊っている自分がいます。

子どもの頃はダンスだけでなく、ただただ“動きたい”の気持ちだけで、公園のブランコをもう一周しちゃうんじゃないか、ってくらい漕いだり。そのブランコの周りの柵の上を猛ダッシュしたり。小学校の休み時間の15分をフルに使って、校庭の鉄棒で黙々と一人でダルマ周りをしたりもしました。まあ全体的に“よいこはマネしないでね”なものばかりですが、とにかくがむしゃらに動いていました。そういう子だったんです、私。

そんな私が先日オンエアの「王様のブランチ」にて、生まれて初めてのバク転体験をさせていただきました。バク転も元々めっちゃ憧れていて。昔、うちの学校の山荘が四阿山にありまして、林間学校や部活の合宿などで泊まるのですが、ものすごい広い畳のお部屋がありましてね。一クラス50人近いみんなで寝たりする部屋です。小中の頃はそこに枕をいくつか積み重ねまして。それを乗り越えるようにブリッジをするのです。今や、床に寝そべったところからのブリッジすらままならないのに、あの頃はそのくらいはお茶の子さいさいでした。で、そこから足をえいやっと蹴り上げて、着地してポーズ。言うならば“二段階”バク転、といった感じでしょうか。まあ勝手にやっていた練習なので、いろいろ違うのでしょうし、これ以上自己流でやるのは危ないと、ちゃんと思えていたので、このやり方でよくクルクル回って遊んでおりました。まあ言っても当時は今と違って身体も柔らかかったし、腕や肩も上がったし、何より体重がこんなじゃなかったし。そりゃね、な感じでしたが、今、挑戦、はなかなかハードルが高い。番組の事前アンケートで“やってみたいこと”を聞かれたので“ゴスペル”“和太鼓”“バク転”と3つ書きました。私の予想は、挑戦のロケ時間も1時間くらいと聞いていたので“ゴスペル”辺りが採用されるかな、と思っておりましたのですが結果、“バク転”。自分でアンケートに書いといてなんなんですが、嬉しい1:不安9。「大丈夫か? 私?」でした。

年齢、体重、膝などなど、不安要素をすべて先生に伝えましたが、先生はにっこり笑って「大丈夫ですよ」と。「しかも1時間しかないんですよ!」「はい。大丈夫ですよ。」これはもう先生を信用して身をゆだねるしかありません。結果から申しますと、補助あり&マットの上ではありますが、クルンと出来ました。もちろんこれが普通の床で、とか、先生無しでとなったら100%無理なのはわかっておりますが、1時間でここまでいけたのは十二分だな。やっぱり後ろに飛ぶって怖かったですが、先生方で補助付きのやり方を見せていただき、それを頭の中でものすごい回数リピート再生。もう脳内のイメージで飛びました。正直100%出来ないと思っていたので、この数日後に来た、異常なまでの“激イタ筋肉痛”は置いといて、めっちゃ楽しかったです。いつかちゃんと教わりたいなぁ。とは言え1日でも“若い”うちの方がいいに決まっている。いや、還暦の時にやっても面白い? うん、とにかくまた“ちゃんと”やりたいです。

まあこの日の企画は別にチャレンジものだったわけではなく『買い物の達人』のコーナー。実に15年ぶりの出演でした。15年前はまだテレビに出始めた頃で、痩せていて、腰の骨を折って松葉杖で、NGワードも“イケメン”“好き”だった頃。しかも1回言う度に買い物額が減ってしまうこのNGワードを言いまくり、ほとんどのものを失うという。時代、なんかいろんな意味で感じるな。あ、その時なんとか手元に残った小さなプラスティックのワインクーラー、今でも大事に使っております。ブランチさん、ありがとうございました。

 

【本日の乾杯】おつまみではないですが、こないだフグのひれ酒を飲みました。蓋にこれだけはっきり“ひれ酒”と書いてあったら間違えないね。

関連書籍

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。3』

海への恐怖を感じた、初めての遠泳。4人で襷を繋いだ「24時間駅伝」。お見合い旅inマカオ。“初”キスシーンに、“初”サウナ。ドラクエウォークで初めての高尾山。接続できずに大騒ぎのリモート飲み会。拍子抜けだった大腸検査。ブームに乗って、のんびり「おばキャン」、のつもりが……。いくつになってもあさこの毎日は初めてだらけ。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。2』

セブ旅行で買った、ワガママボディにぴったりのビキニ。いとこ12人が数十年(?)ぶりに全員集合して飲み倒した「いとこ会」。47歳、6年ぶりの引っ越しの、譲れない条件。気づいたら号泣していた「ボヘミアン・ラプソディ」の“胸アツ応援上映”。人間ドックの検査結果の◯◯という一言。ただただ一生懸命生きる“あちこち衰えあさこ”の毎日。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

ぎっくり腰で一人倒れていた寒くて痛い夜。いつの間にか母と同じ飲み方をしてる「日本酒ロック」。緊張の海外ロケでの一人トランジット。22歳から10年住んだアパートの大家さんを訪問。20年ぶりに新調した喪服で出席したお葬式。正直者で、我が強くて、気が弱い。そんなあさこの“寂しい”だか“楽しい”だかよくわからないけど、一生懸命な毎日。

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