
そろそろ桃の花も咲くころでしょうか。可憐な桃の花ですが、花言葉には「天下無敵」というものがあるそうで!
一家に一冊あるといいね、と評判の『神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること』より、3月について学びましょう!
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神話にも登場する桃は、仙木。魔除け効果は絶大
この季節、神社ではヒヨドリの「ヒーヨヒーヨ」、メジロの「チュルチュルチュル」という声が聞こえて、境内に出てみると桃の花の蜜を吸いに来ている彼らに会うことができます。
そして、鳥たちが大好きな桃の木はまた、人間にとっても特別な存在です。
そもそも、桃の木は、中国では仙木(せんぼく)と呼ばれるほど邪気を祓う力がある植物。桃の種の核にある白い部分「とうじん」は、生薬として漢方にも配合され、体の中の悪いものを流してむくみを取る効果があります。日本でも弥生時代の遺跡からたくさんの桃の核が出土していることから、古代から生えていて、盛んに食べられていたと考えられています。

私のおつとめしている神社では、ふだんのお祓いや厄除けなどは木の棒と白い紙でできた「祓串(はらえぐし)」を左右左と振ることで成しますが、半年に一度の大祓で、大勢の人々の、積もり積もった穢れを祓うときには、切ってきたばかりの桃の枝を使っています。桃の枝は邪気を祓う力が強いので、大勢の積もった穢れを一気に祓えるからです。

「古事記」には、桃の実がイザナギから神様の名前を授けられる場面があります。
男神のイザナギと女神のイザナミが、「いい女」「いい男」と声をかけあって性交し、イザナミが次々と国土を産んだことは1月のところで書きました。イザナミは国土を産んだ次に、石や風や海などその“風土”を司る神々を産み、さらには船などを作る“生産”の神、“技術”の神を産みました。人間が生活し、国の産業をまわすための“火”の神も産みましたが、この火の神を出産したことが原因で、女神イザナミは体の中から大やけどを負い、やがて死んでしまいます。
死んだイザナミは死者の国である黄泉国(よもつくに)へ旅立ちますが、彼女に会いたくてたまらなくなったイザナギは、黄泉国に会いに行きます。が、時すでに遅く、黄泉国の食べ物を食べてしまったイザナミは醜悪な姿になっており、その姿を見て逃げ出したイザナギに怒り、ヨモツシコメ(予母都志許売)という無茶苦茶強い女を使って追わせます。
イザナギは、なんとかヨモツシコメを振り切って黄泉国の出口付近まで来ましたが、怒りのおさまらないイザナミは、黄泉の軍勢千五百をさしむけてイザナギをつかまえようとします。ぎりぎりで黄泉の国の外に出たイザナギは、その境界に立っていた桃の木の実を三つもぎとり、軍勢に投げつけます。すると、黄泉国の軍勢はしゅるしゅると勢いを失い、退却していきました。桃には邪悪なものを打ち祓い退ける霊力があったからです。これをよろこんだイザナギが、桃に「桃よ、ありがとう。国民が邪悪なものに苦しめられているときは、今みたいに、おまえが助けてくれ」といって、オオカムズミノミコト(意富加牟豆美命)という名前を授けました。という展開です。
おいおい。妻の言うことを聞かんかったうえに、妻を邪悪なもの呼ばわりかい。しかも桃に名前をつけるんかい。
とは思いますが、このエピソードから、桃の花言葉には「天下無敵」という言葉があるのです。神話が先にありきというよりは、桃には古代から実際に、病気や、まがまがしいことを退ける力があった、その実績から、神話の大事な場面で登場したのだと思います。
日本神話とは関係ありませんが、フランス語では「私は桃を持っています」という言葉が「私は元気です」という意味で使われます。桃は、フランス人にとっても「元気の玉」なのですね!

(つづく)
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神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること

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