
業界が隠したがる「本当に安全なお金の守り方」とは? 金融庁を経て現在は保険・金融コンサルタントとして活躍する我妻佳祐さんが、投資初心者~中級者向けにさまざまな罠から身を守る術を伝授する幻冬舎新書『金融地獄を生き抜け 世界一簡単なお金リテラシーこれだけ』。本書より一部を抜粋してお届けします。
「自称中級者」がいちばん危ない
ここまで、いろいろな金融トラブルについてお話ししてきました。みなさんも、「ちゃんと勉強して金融トラブルにあわないようにしよう」と思ったかもしれません。でも、ひとつ注意しておくことがあります。それは、「自称中級者」がいちばん危ない、ということです。
では「はじめに」で紹介した図1のグラフをもう一度、見てください。
これは、金融広報中央委員会というところが実施した調査です。これによると、「金融教育を受けたけれどもあまり金融リテラシーが高まらなかった人」は、「金融教育を受けておらず、金融リテラシーが低い人」のなんと3倍以上も金融トラブルにあっているということが示されています。
金融リテラシーの高い人のあいだでは3倍もの差はありませんが、それでも金融教育を受けた人のほうがわずかに金融トラブルの経験率が高くなっています(ただし、このくらいの差であれば誤差の範囲内かもしれません)。これでは、金融教育など受けないほうがマシだということにもなりかねません。
このデータの解釈の仕方はいろいろあると思いますが、「金融教育を受けて生半可な知識で投資に手を出した結果、トラブルに巻き込まれた」という可能性が高そうに思えます。「勉強したから大丈夫」という「自称中級者」など、海千山千の金融機関の営業マンや詐欺師にとっては、警戒心が下がっている分、むしろ食い物にしやすいのかもしれません。
もちろん、トラブルにはあったけれどもほかの投資で儲かったのでトータルではプラスになったという可能性もありますが、やはり金融トラブルにあわずに済むならそれに越したことはないでしょう。
このようなことにならないためには、「インデックス投資信託以外はやらない」という心構えがとても有効です。もちろん、インデックス投資信託でも損失が出ることはありますが、それは「金融トラブル」ではないのです(損をするなら一緒だよといわれるかもしれませんが)。少なくとも、ものすごくハイリスクな商品をつかんでしまったり、詐欺被害にあったりすることはまずありません。
世の中の金融教育では、金融業界に遠慮してか、はっきりと「インデックス投資信託以外の投資はすべきではない」といっているものは少ないように思います。そのせいで、投資初心者がハイリスクな商品や詐欺的な商品に手を出して金融トラブルにあっているのだとしたら、ひどい話です。
投資は「正しく怖がる」のが大切
私は本書を通じて、多くの人に投資を始めてもらいたいと思っています。ですから、みなさんが必要以上に投資を怖がるような話はしたくありません。
それなのに、本章では「おいしい儲け話」のおそろしさをいくつも伝えてきました。前章でせっかく投資する気になったのに、また腰が引けた人もいるかもしれません。
でも、これからよい投資をしていくためには、「自称中級者」の手前で、少し腰が引けているぐらいのほうがよいと思います。「必要以上」に怖がるのはダメですが、どんな投資にもリスクはあるのですから、「必要かつ十分」なレベルで怖がるのはとても大切です。
これまで日本は貯蓄率が高く、投資にあまりお金が回らなかったので、どちらかというと「怖がりすぎ」の人が多いことは間違いありません。しかしその一方で、投資のリスクを「侮りすぎ」の人も増えている印象があります。
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この続きは幻冬舎新書『金融地獄を生き抜け 世界一簡単なお金リテラシーこれだけ』でお楽しみください。
金融地獄を生き抜け 世界一簡単なお金リテラシーこれだけ

業界が隠したがる「本当に安全なお金の守り方」とは? 金融庁を経て現在は保険・金融コンサルタントとして活躍する我妻佳祐さんが、投資初心者~中級者向けにさまざまな罠から身を守る術を伝授する幻冬舎新書『金融地獄を生き抜け 世界一簡単なお金リテラシーこれだけ』。本書より一部を抜粋してお届けします。