
「健康診断結果は気にしない」「毎日の晩酌は欠かさない」「お金はためるより使う」……。ホリスティック医学の第一人者で現役医師の帯津良一先生が実践する、人生100年時代を楽しく健やかに老いるコツとは。新刊『ときめいて大往生』より、一部をお届けします。
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お金はたくさんあると、むしろ邪魔になる
老後が不安だから、お金はたくさんあったほうがいいと考える人もいるでしょう。
価値観は人それぞれですが、私は、お金はたくさんあると、かえって邪魔になるように感じています。
結局使うことなく命が尽きそうになったら、この世に悔いが残るかもしれませんし、遺族がその分け前をめぐって骨肉の争いをすることがあるかもしれません。
そもそも、老後というのはいつを指すのでしょうか。
かつて親しくしていたある方は、しばらく沖縄に住んでおられましたが、70代の後半になって東京へ引っ越すことにしました。
私が、「老後は東京よりもハワイがいいんじゃないですか」と言うと、その方はキッと顔を上げてこう言いました。
「私に老後はありません。私の老後は死んでからです!」
あっぱれな考え方です。こういう人は、寝たきりにもならず、認知症にもならず、ときが来れば颯爽と旅立っていかれるものです。実際、その方もそのようにして旅立ちました。
この方の考えにならうと、老後は死んでからです。だから、現役まっさかりの今は、お金をためこむのではなく、使うべきということになるでしょう。
ちなみに中国医学では、人間の元気のもとは、気という生命エネルギーだといわれています。気が不足しても多すぎても病気になります。上手に循環させるのがいいのです。お金もエネルギーだと考えれば、ためこむのではなく、上手に循環させていくのが一番ではないでしょうか。
お金はときめきのために活かす
先述したとおり、私は幼少時、お小遣いをすぐに使い切っていました。大学生になってもそれは変わらず、アルバイトで稼いだお金は、酒と麻雀に消えていきました。
要するに、目の前のときめきを得るために、お金を使ってきました。
そんな私が、お金と引き換えに、最も大きなときめきをキャッチしたのは、1982年のこと。我が故郷・埼玉県川越市に自分で病院を建てたときです。
私は、自分が思い描く医療を提供するために、それまで勤めていた病院をやめることにしました。当時の役職は外科医長。あとは部長、副院長とのぼっていくので、世間一般ではエリートコースだったかもしれませんが、私はそういうものには興味がありませんでした。
しかし、開業を決意してみたものの、お金の管理は女房に任せていたので、貯金がいくらあるかもわかりません。女房に通帳を持ってきてもらうと、600万円ありました。「こんなにためたのか!」と驚きましたが、病院を開業するにはまったく足りないようでした。そのため、医療金融公庫といくつかの銀行からお金を借りて、なんとか開業しました。
その後、2004年には池袋のホテルメトロポリタンから、ホテル内にクリニックを作りたいと声をかけられ、二つ目のクリニックを開業しました。
そのおかげで、私のもとには大きな借金が生まれ、今も必死にそれを返しています。
しかし、それと引き換えに私は大きなときめきを得たのです。「一人でも多くの人に健康を取り戻してほしい」という思いで病院を作り、患者さんと共に明るい未来を目指すことで、日々、ときめきをキャッチしているのです。
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ときめいて大往生

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