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重力波とは何か

2017.12.02 公開 ポスト

アメリカに先を越されて悔しくありませんでしたか?川村静児

試験運転中に重力波をキャッチした!

 さて、正式な観測は、2015年9月18日に開始することが予定されていました。しかし実際には、その数日前から検出器の試験運転が始まっていました。ブラックホール連星の合体による重力波が地球に届いたのは、その実質的な運用開始からたった2日後の9月14日です。運用開始が3日遅れていたら、その重力波は地球を通り過ぎてしまい、LIGOには検出できなかったでしょう。

 LIGOの研究者たちに、いや、私たち人類に、幸運が訪れた瞬間でした。その日に受信したデータを時間をかけて慎重に分析した上で、翌2016年2月11日に発表されたのが、「初の重力波直接検出」だったのです。

 今回LIGOが検出した重力波は得られたデータの詳しい解析の結果、13億光年遠方で起こったブラックホール連星の合体から放射された重力波であり、2つのブラックホールはそれぞれ太陽の29倍と36倍の質量を持っていたことがわかりました。

 ここで特筆すべきは、アドヴァンストLIGOの感度がまだ目標感度の3分の1しか出ていない状態で初検出がなされたことです。実際、今回の観測で重力波が検出されるであろうと思っていた人はそれほど多くはなかったと思われます。つまり、今回の初検出によって、重力波の発生源は我々の予想より多く宇宙に存在しているということがわかったことになります。したがって、もし、アドヴァンストLIGOが目標感度を達成すれば、重力波がどんどん検出されるようになると期待できます。

関連書籍

川村静児『重力波とは何か アインシュタインが奏でる宇宙からのメロディー』

祝・ノーベル賞受賞! 重力波は、1916年にアインシュタインが存在を予言。 彼の数々の予言のうち、最後まで残った宿題「重力波」を、 2016年に世界で初めて観測したアメリカの観測施設LIGOのメンバーが 2017年のノーベル物理学賞を受賞した。 そのLIGOプロジェクトで、かつて「ノイズハンター」として名を馳せたのが、 現在は日本の観測施設KAGRAの中心メンバーとして活躍する川村静児氏。 受賞者のひとりレイナー・ワイス博士は、受賞後のインタビューで 「川村氏の存在なしに受賞はあり得なかった。 彼は最高の科学者であり、実験者」と、川村氏の功績を称えている。 本書では川村氏が「重力波天文学」の世界をやさしくエキサイティングに解説。 重力波をとおして宇宙誕生の謎に迫る、決定版の入門書である。

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重力波とは何か

2017年のノーベル物理学賞はアメリカの「重力波」観測チームが受賞しました。重力波とは一体何なのか? 重力波の観測にはどんな意義があるのか? 日本の第一人者がわかりやすく解説します。

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川村静児

1958年高知県生まれ。土佐高校卒業。早稲田大学理工学部卒業。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士(東京大学)。カリフォルニア工科大学Member of Professional Staff、国立天文台助教授、准教授などを経て、東京大学宇宙線研究所教授。専門は重力波物理学。

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