試験運転中に重力波をキャッチした!
さて、正式な観測は、2015年9月18日に開始することが予定されていました。しかし実際には、その数日前から検出器の試験運転が始まっていました。ブラックホール連星の合体による重力波が地球に届いたのは、その実質的な運用開始からたった2日後の9月14日です。運用開始が3日遅れていたら、その重力波は地球を通り過ぎてしまい、LIGOには検出できなかったでしょう。
LIGOの研究者たちに、いや、私たち人類に、幸運が訪れた瞬間でした。その日に受信したデータを時間をかけて慎重に分析した上で、翌2016年2月11日に発表されたのが、「初の重力波直接検出」だったのです。
今回LIGOが検出した重力波は得られたデータの詳しい解析の結果、13億光年遠方で起こったブラックホール連星の合体から放射された重力波であり、2つのブラックホールはそれぞれ太陽の29倍と36倍の質量を持っていたことがわかりました。
ここで特筆すべきは、アドヴァンストLIGOの感度がまだ目標感度の3分の1しか出ていない状態で初検出がなされたことです。実際、今回の観測で重力波が検出されるであろうと思っていた人はそれほど多くはなかったと思われます。つまり、今回の初検出によって、重力波の発生源は我々の予想より多く宇宙に存在しているということがわかったことになります。したがって、もし、アドヴァンストLIGOが目標感度を達成すれば、重力波がどんどん検出されるようになると期待できます。
次のページ:思わずスキップ♪ サイエンスに国境はない
重力波とは何か
2017年のノーベル物理学賞はアメリカの「重力波」観測チームが受賞しました。重力波とは一体何なのか? 重力波の観測にはどんな意義があるのか? 日本の第一人者がわかりやすく解説します。