生き方
本書は山岳遭難者の捜索のことを書いた本だ。そう聞くと、さも険しい山での、一刻を争う人命救助の現場について書かれているのかと想像したけれど、ページを捲り始めてすぐにその先入観が間違っていたことに気づく。遭難が起こるのは、北アルプスのような標高三千メートル級の険しい山ばかりではなく、身近にある「里山」でも起こりうる。「友人が撮ってきた山の風景写真を地図がわりに持って登山に行ったが、季節の変化で山の様子が変わってしまっていて、道に迷った」「風で向きが変わった道案内の看板を信じて進んでしまった」など、ささいなことで命に関わる重大な事態を招いてしまう。山では、低いから心配無用、慣れているから大丈夫、ということにはならないのだ。
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