須藤元気さんが3ヶ月で日常会話レベルの英会話を身につけた方法を綴った『面倒くさがり屋の僕が3ヶ月で英語を話せるようになった唯一無二の方法』。話題騒然の本書の「まえがき」を抜粋してお届けします。
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須藤元気が英語の本?
この本を手に取ったあなたはそう思ったかもしれません。僕自身、自分が英語学習の本を出すとは思っていませんでした。一年前までは。
WE ARE ALL ONE.
格闘家の頃から僕が掲げていたキャッチフレーズです。僕はそのビジョンに向かって自分ができること、自分がやりたいことをやり続けてきたのですが、一つだけ、「こうなりたい、こういう自分でありたい」と思いつつ、長年にわたって実現できていないことがありました。
英語です。
正確に言うと、「英語が話せる自分」です。
「WE ARE ALL ONE」と言いながら、英語で思いを伝えることができていませんでした。
格闘家としてデビューしたときは、一年間ロサンゼルスに格闘留学していたので、「逆輸入ファイター」と紹介されていました。そのおかげで、「英語できる人なんでしょ?」と思われたときもありましたが、「なんとなく英語ができる」フリをして日々を過ごしていたのです。
当時、「Nice to meet you. I'm Genki」くらいは言えましたが、そのあとの英語のやり取りに関してはキアヌ・リーブス風の微笑を浮かべて「Oh, yeah」と言っているだけでした。相手が「これがオリエンタリズムか」と思ってくれればよかったのですが、そうではなかったはずです。
格闘家を引退してから、何度か英会話学校にも通いました。というか、何度も通いました。そして、何かいい方法はないかと英語学習の本を合計五〇冊以上買いました。「英語をやらなきゃいけない」と、使命感みたいなものを抱えて英語に取り組む日々。……ダメでした。
誰でも「~しなければいけない」と思っている何かよりも、「~したい」と感じる何かに夢中になるはずです。そのときの僕は英語に対して「~しなければいけない」モードだったのかもしれません。
「海外でも活躍できるようになるために英語をマスターする」という目標を自分の中に掲げながら、他のことに気を取られ三日坊主。
スマホのゲームをついついやってしまう試験前の受験生みたいなものです。「やらなきゃいけない」というものほど、やるのを後回しにしてしまうという法則。
そんな僕に転機が訪れたのは、二〇一一年七月でした。このときの僕は、格闘家時代からやりたいと思っていたことの一つ、ダンスパフォーマンスユニットWORLD ORDERの活動を中心に日々を過ごしていました。
そのWORLD ORDERが、ロサンゼルスで開催されたマイクロソフト主催の「WPC2011」のオープニングイベントに招待されたのです。
興奮しました。でも、「いざ本番」の前夜のことだったのですが、主催者側からまさかの依頼。
「冒頭、英語でスピーチしてくれませんか?」
……え?
ただでさえ、うまくダンスができるか不安でしたし、公の場で英語を話したこともありません。しかも、そのときのお客さんは四万人。
「そんなのムリだよ!」と僕は心の中で叫びました。
でも改めて考えてみたら、日本人である僕らが、二〇一一年に海外でパフォーマンスをするのであれば、東日本大震災に触れたスピーチをしてもらいたい気持ちはわからないでもない。覚悟を決めてスピーチすることにしました。
僕は戦略を練りました。まず、現地のスタッフに英語でスピーチ原稿を作ってもらい、実際にスピーチするような感じで話してもらいました。そしてそれを録音し、原稿と音源を持ってホテルの部屋に戻り、一人で何度も何度も声に出して繰り返したのです。
そして次の日。いよいよ本番!
台詞を忘れるリスクに備え、本番ではメインカメラの下にあるモニターでカンペを出してもらいました(笑)。
あれは、僕の人生の中でも五本の指に入る緊張の瞬間だったと思います。
スピーチもダンスパフォーマンスも大きな失敗をすることなく無事に終え、ホッと胸をなでおろしたその瞬間、会場から沸き起こった大きな拍手。このとき思いました。
「やはり、英語が話せるといいなー」
英語が、僕の中で「~しなければいけない」から「~したい」ものへと変容した瞬間でした。
ただ、これでメキメキと英語が上達したわけではないのが、学びの難しいところ。
僕の中にある「英語でコミュニケーションが取れる自分」というビジョンは、まだまだ明確ではなかったのかもしれません。
ただ、ありがたいことにWORLD ORDERはその後も活動の場を海外へ広げていき、また学生レスリングの日本代表監督としても海外遠征が増えていきました。それに伴って英語の必要性も上がっていき、英語で聞かれたり、英語で答えたりする機会が多くなっていきました。
僕の中で少しずつ、でも確実に高まっていった「英語を喋りたい、英語で自分の思いを伝えたい」という願望。長年の目標だった英語に「ハマる」日が、ついにきたのです。
正直、ハマるというより無理やり自分でハメました。
「このままでは何となく話せるだけで、自由に話せるようにはならない」と気がついたからです。
そして僕は、「ここで一気に英語を習得する」と決意して、英会話学校「eLingo」を設立しました。
英会話学校の代表となれば、世間からは「英語が話せて当たり前」と思われるはずなので、モチベーションを維持できます。さらに、ビジネスをしながら自分の学校で英語の勉強もできるので一石三鳥です。そして、運良くナズと出会いました。彼は当時、ある英会話学校の先生として働いていたのですが、人間としても英語の先生としても大変素晴らしく、一緒に学校を立ち上げることになりました。そのおかげもあって、毎日のように英語と接することができるようになり、上達が早まりました。
この本では、英語がほとんど話せなかった僕が、日常会話で困ることがないレベルの英語力を身につけた戦略と思考法を書こうと思います。英会話の学習法としては、それなりに自信があります。なぜなら、誰より面倒くさがり屋の僕が喋れるようになった実体験を踏まえて書いているからです。
「英会話」という目的だけに徹した学習法なので、そこから外れるものに関しては思い切って捨てていきます。「やらないこと」を明確にし、「やるべきこと」を何度も繰り返すことで、最大の効果を得る。それが目的です。
この本は、「英語での対人コミュニケーション(=スピーキング)」に特化しています。英語の初心者はもちろん、TOEICなどである程度の点数はあるけど「英会話」が苦手な方向けです。
旅先で困らない英語力、道に迷っている外国人観光客を助けられるレベルの英語力、お店で隣り合わせになった外国人と一~二時間会話できるくらいの英語力。自分はどういう人間かを初対面の外国人に伝えられるレベルの英語力。そういったものをお求めの方の参考になれば嬉しく思います。
そして、英語でのコミュニケーションの楽しさを知り、もっと英語学習を深めていただくのもいいかもしれません。実際に僕がそうで、現在、もう一段階上を目指して勉強を頑張っています。
あと、本題に入る前に、これだけは言わせてください。
やると決めたら短期集中でいきましょう。何年もかけて地道に英語を勉強するのは素敵だと思いますが……たぶん、飽きます。たくさんのことを覚えようとするのではなく限定して覚え、実践で使えるようにする。要するに、「一点突破全面展開」。
バケツ一杯の水を溢れさせようとするのではなく、コップ一杯分の水を溢れさせるイメージです。
こんなことを書くと、噓っぽく響いてしまうかもしれませんが、この本に書かれていることを実践すれば、「どこの国に行っても、英語で外国人とコミュニケーションが取れるレベルの英語力」が三ヶ月で身につきます。
断言する理由は、英語学習において僕は「遠回り」したからです。たくさんの学校に通い、たくさんの学習メソッドの本を読み、それでも挫折して何とかここにたどり着きました。
遠回りして学んだことは、たいていの場合、「近道」して学んできたことよりも実りがあるんです。その経験を皆さんと共有したいと思います。
須藤元気
※続きは『面倒くさがり屋の僕が3ヶ月で英語を話せるようになった唯一無二の方法』でお楽しみください。
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面倒くさがり屋の僕が3ヶ月で英語を話せるようになった唯一無二の方法/目次
まえがき
Chapter 1 準備篇――英語を学ぶ前に意識しておくべきこと
英語を極めるよりも大切なこととは?
「学校で一番」「クラスで一番」と言えるものを複数揃えて、オンリーワンを目指す。
三ヶ月で喋れるようになるか?短期集中 is the best.
どうすれば、「一日三時間」の勉強時間を確保できるか。
逆輸入ファイターが明かす留学のメリットとデメリット。
英会話学校に行っても英語が喋れない理由とは?
Chapter2 学習篇――どうすれば三ヶ月で英語を習得できるか
最も効率的な英語学習法。「自己紹介イングリッシュ」。
相手の興味をひくにはどうすればいいか?
会話は総合格闘技。だからこそ文法が何より大事。
音読で英語を体に馴染ませたら、英語カフェなどで実践練習する。
書くべきか書かざるべきか。僕の単語習得法。
発音記号を覚えるのは面倒くさい。でも、長い目で見ると一番効率的。
先生は手の平にいる。スマホティーチャーに学べ。
フライト時間に英語のウォーミングアップをしよう。
コミュニケーションでは、「間」が大事。
ネイティブっぽく見せる秘訣。「場をつなぐ言葉」の威力。
Chapter3 実践篇――身につけた英語をどう活用するか
元大統領アル・ゴアさんとの対談。
僕のリアル英会話。珍味好きのアメリカ人の場合。
意外に知らない?失礼にならない「会話の終わらせ方」。
あとがき