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アメリカ中間選挙レポート

2018.10.09 公開 ポスト

第6回

中間選挙直前にペンス副大統領が事実上の「対中国・冷戦宣言」を叫んだ理由渡瀬裕哉

 

米メリーランド州で演説するペンス副大統領(2018年2月22日撮影、ロイター=共同)

 

トランプの言動よりペンスの動向が重要

 10月4日ハドソン研究所でマイク・ペンス副大統領が中国に対する事実上の「冷戦宣言」を行った。米中関係を両国の歴史的関係から見直すとともに、直近の中国の政治行動を厳しく批判した上で、米国が総力を挙げて中国に対抗していく旨を宣言した異例の演説である。

 これに対してCNNは中国の脅威を根拠がないこじつけの主張かのように報道しているが、まるで冷戦期の左翼メディアのような醜態を相変わらず晒(さら)している。

 トランプ政権はペンスを筆頭とした共和党保守派が主導する政権であり、その政権事情を理解している米国政治の分析者は、トランプの言動よりもペンスの動向に注目している。トランプの言動は二転三転するが、ペンスが発言した内容は粛々と実行される傾向があるからだ。

 したがって、ペンスが中間選挙の約1か月前に対中国政策に関する演説を行う意味は重いが、実は演説内容自体は真新しいものではなく、中国との一連の経緯を改めて振り返るものでしかない。政権発足以来、トランプ政権は中国との間で貿易問題だけでなく、企業買収阻止、経済制裁、台湾問題など、多くの観点で激しく対立を繰り返してきた。そのため、ペンスが同演説を行うタイミングは他に幾らでもあったわけだが、あえて中間選挙直前に行われたことの意味を解き明かすことで中間選挙情勢及びトランプ政権の意図を探ることができるだろう。

 

今のタイミングからわかる4つのこと

 第一に、中間選挙情勢が極めて厳しいということだ。共和党の上下両院での勝利が確実な場合、本来は対中関税などについて有権者の信任を改めて受けた形で、選挙後に満を持して対中国の強硬方針を強烈に打ち出すべきだろう。ただし、仮に中間選挙で共和党が上院・下院で敗北した場合、対中国政策を強硬に推進する共和党保守派の政治力が政権内で失われる状況になる可能性がある。そのため、共和党保守派が同演説を政権の方針として確実に行うことができるタイミングは、中間選挙直前の今しかなくベストなタイミングだった。

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11月6日の米国議会選。トランプ大統領の共和党は勝てるのか? 著者独自の情報源と現地報道をもとに、刻一刻と変わる中間選挙の行方を共和党視点で分析。アメリカは変わるのか変わらないのか。この結果が日本にもたらすものとは?

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渡瀬裕哉

1981年東京都生まれ。国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。創業メンバーとして立ち上げたIT企業が一部上場企業にM&Aされてグループ会社取締役として従事。著書に『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか―アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図』(すばる舎)などがある。

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