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アメリカ中間選挙レポート

2018.10.22 公開 ポスト

第14回

サウジ記者殺害事件と、シリコンバレーの偽善の仮面渡瀬裕哉

2018年保守派年次総会 保守政治行動会議(CPAC)でのFBブース(著者撮影)

人権感覚に問題ありのサウジから多額の投資を受けるシリコンバレー

 サウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏がイスタンブールのサウジアラビア総領事館で死亡した件は、トランプ政権の対中東政策の根幹を揺るがす事態となっている。そして、サウジアラビアの人権問題が浮上することによって、シリコンバレーの偽善性もまた同時に明らかになりつつある。

 シリコンバレーの住人のイデオロギーは非常に複雑である。彼らは経済的には自由貿易促進・労働法制強化反対という共和党的な側面を持ちつつ、社会的には環境規制強化・ダイバーシティ強化という民主党的な側面を有している。そして、彼らは普段の生活では前者の顔を覆い隠しながら後者のポリコレによる美辞麗句を並べる生活をしている。共和党的な発言をシリコンバレーで行うことはご法度であり、原則としてあたかも民主党のリベラル派のような発言が好まれる傾向がある。

 当然であるが、そんなシリコンバレーの人々は、人権感覚に問題があるサウジアラビア政府の体質には目をつぶりながら、サウジアラビアの公的投資基金(PIF)からの多額の投資を受け入れてきた。たとえば、シリコンバレーの代表的なユニコーンであるUberはサウジアラビアからの多額の投資を受け入れて、取締役会にPIFからのメンバーを招き入れている。

 米国の新興企業に投入されたサウジアラビアの資金は1兆円以上に膨らんでいるとされる。そのため、今回のジョマル・カショギ氏殺害疑惑を受けて、シリコンバレーはそのリベラルな偽善の仮面が剥ぎ取られる形となって明らかに動揺を示している。「正しいことをする」をキャッチフレーズとして掲げるUberはムハンマド・ビン・サルマン皇太子が主導する未来投資イニシアチブ会議に出席しないことを認めたが、依然としてサウジマネーを手放すつもりは毛頭ないらしい。

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アメリカ中間選挙レポート

11月6日の米国議会選。トランプ大統領の共和党は勝てるのか? 著者独自の情報源と現地報道をもとに、刻一刻と変わる中間選挙の行方を共和党視点で分析。アメリカは変わるのか変わらないのか。この結果が日本にもたらすものとは?

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渡瀬裕哉

1981年東京都生まれ。国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。創業メンバーとして立ち上げたIT企業が一部上場企業にM&Aされてグループ会社取締役として従事。著書に『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか―アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図』(すばる舎)などがある。

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