減税などの経済政策の引きは、中間選挙は強くない
米国中間選挙まであと2週間足らず、民主党の圧倒的優勢で終わるかに見えた中間選挙情勢は大きく揺れ動きつつある。共和党は上院では過半数を維持できる状況を確定しつつあり、下院では大敗予測を接戦まで持ち込む奮闘ぶりを見せている。2016年大統領選挙でも共和党側は選挙の直前9月・10月になってから本腰を入れており、前回同様に選挙直前まで世論調査上の支持率差は縮小を続けていくことになるだろう。
2000年の中間選挙では「現職大統領の所属政党は不利」という一部の有識者が述べる米国選挙相場は時代遅れのものとなっており、選挙の主力である労働組合が衰退している民主党よりも、福音派や全米ライフル協会などを中心とした強固な草の根組織力を持つ共和党の地力がやや上回っている状況にある。したがって、選挙前に共和党のエンジンがかかれば両党の支持率差が拮抗することは何ら不思議なことではない。
メディア上で共和党関係者の説明では、「同党猛追の原動力はカバノー最高裁判事の上院承認を巡る民主党リベラル派の横暴が共和党支持者の危機意識を掻き立てたことが原因」とされている。本連載でも触れた通り、承認手続きを執拗に妨害しようとする民主党リベラル派の暴挙は目に余るものがあり、共和党支持者の民主党議員が連邦議会で主導権を握る姿を見たくないという気持ちは非常によくわかる。議場に踏み入る暴徒、妨害のための手続き濫用、リベラルメディアの扇情的な報道など、見るに耐えかねるレベルであった。
トランプ大統領は選挙戦略として良好な経済環境を強調してきたが、実は経済環境の良好さと中間選挙結果に関する因果関係はそれほど強くない。大統領選挙結果と経済状況はリンクする傾向があるが、中間選挙では党派性がある社会問題の対立のほうが重視される傾向がある。有権者は大統領が経済を左右する力を持っていることには同意するが、個別の連邦議員の経済への影響力を過大評価していないのかもしれない。
ここから先は会員限定のコンテンツです
- 無料!
- 今すぐ会員登録して続きを読む
- 会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン
アメリカ中間選挙レポートの記事をもっと読む
アメリカ中間選挙レポート
11月6日の米国議会選。トランプ大統領の共和党は勝てるのか? 著者独自の情報源と現地報道をもとに、刻一刻と変わる中間選挙の行方を共和党視点で分析。アメリカは変わるのか変わらないのか。この結果が日本にもたらすものとは?
- バックナンバー
-
- トランプ再選のひとつの死角ーーウィスコン...
- 民主党を差し切れなかった共和党。民主党は...
- 2018年中間選挙、トランプ大統領がすで...
- 共和党上院の圧倒的優勢を確立するためには...
- 「トランプのアイフォンが中国に盗聴されて...
- 共和党が猛追する理由は、民主党が得意なL...
- 民主党の内部分裂、10月27日予定の大規...
- サウジ記者殺害事件と、シリコンバレーの偽...
- 「分断」を「統合」へと促すのは、民主党ネ...
- 民主党リベラルが憂う“分断”と共和党保守...
- テイラー・スウィフトが落選させようとする...
- ハリウッドや有名セレブが民主党支持を続々...
- ヒューギンはディープブルー(民主党圧勝地...
- トランプ大統領が2018年のノーベル平和...
- 共和党 ダナ・ローラバッカーが大ピンチ。...
- 中間選挙直前にペンス副大統領が事実上の「...
- 女性初の戦闘機乗りマクサリーはマケインの...
- 「白人至上主義のレイシスト」と糾弾される...
- テッド・クルーズは民主党のジャイアントキ...
- 米最高裁判事に指名されたカバノー氏の30...
- もっと見る