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アメリカ中間選挙レポート

2018.10.25 公開 ポスト

第16回

共和党が猛追する理由は、民主党が得意なLGBT政策や移民問題へのあえてのカウンター攻撃渡瀬裕哉

減税などの経済政策の引きは、中間選挙は強くない

グアテマラとの国境近くで、ホンジュラスの警官隊に阻止される移民集団(10月17日、ホンジュラス西部アグアカリエンテ、撮影:ロイター=共同)。トランプ大統領は、不法移民の入国防止などの社会争点を強く打ち出し始めた。


 米国中間選挙まであと2週間足らず、民主党の圧倒的優勢で終わるかに見えた中間選挙情勢は大きく揺れ動きつつある。共和党は上院では過半数を維持できる状況を確定しつつあり、下院では大敗予測を接戦まで持ち込む奮闘ぶりを見せている。2016年大統領選挙でも共和党側は選挙の直前9月・10月になってから本腰を入れており、前回同様に選挙直前まで世論調査上の支持率差は縮小を続けていくことになるだろう。

 2000年の中間選挙では「現職大統領の所属政党は不利」という一部の有識者が述べる米国選挙相場は時代遅れのものとなっており、選挙の主力である労働組合が衰退している民主党よりも、福音派や全米ライフル協会などを中心とした強固な草の根組織力を持つ共和党の地力がやや上回っている状況にある。したがって、選挙前に共和党のエンジンがかかれば両党の支持率差が拮抗することは何ら不思議なことではない。

 メディア上で共和党関係者の説明では、「同党猛追の原動力はカバノー最高裁判事の上院承認を巡る民主党リベラル派の横暴が共和党支持者の危機意識を掻き立てたことが原因」とされている。本連載でも触れた通り、承認手続きを執拗に妨害しようとする民主党リベラル派の暴挙は目に余るものがあり、共和党支持者の民主党議員が連邦議会で主導権を握る姿を見たくないという気持ちは非常によくわかる。議場に踏み入る暴徒、妨害のための手続き濫用、リベラルメディアの扇情的な報道など、見るに耐えかねるレベルであった。

 トランプ大統領は選挙戦略として良好な経済環境を強調してきたが、実は経済環境の良好さと中間選挙結果に関する因果関係はそれほど強くない。大統領選挙結果と経済状況はリンクする傾向があるが、中間選挙では党派性がある社会問題の対立のほうが重視される傾向がある。有権者は大統領が経済を左右する力を持っていることには同意するが、個別の連邦議員の経済への影響力を過大評価していないのかもしれない。

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アメリカ中間選挙レポート

11月6日の米国議会選。トランプ大統領の共和党は勝てるのか? 著者独自の情報源と現地報道をもとに、刻一刻と変わる中間選挙の行方を共和党視点で分析。アメリカは変わるのか変わらないのか。この結果が日本にもたらすものとは?

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渡瀬裕哉

1981年東京都生まれ。国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。創業メンバーとして立ち上げたIT企業が一部上場企業にM&Aされてグループ会社取締役として従事。著書に『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか―アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図』(すばる舎)などがある。

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