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猫を撫でて一日終わる

2019.01.28 公開 ポスト

旅から帰りたくないpha

旅に出る前はあんなに出発するのが面倒臭いとぐずぐず渋っていたくせに、一旦旅に出てしまうと今度は元の日常に戻るのがすごく憂鬱になって帰りたくなくなってしまう。本当はもっと旅を続けていたいのだけど、今週末に用事があるのでそろそろ東京に戻らなければいけない。

風呂に入るのとか髪を切るのとか部屋を掃除するのとかも、いつも面倒でずるずる先延ばしにしてしまうのだけど、やってみるとすごくスッキリして、なんでもっと早くやらなかったのだろう、と後悔する。何年生きてもそのあたりをうまくコントロールできない。自分は馬鹿なのかなと思う。

家にいるときはあんなに全てが憂鬱だったのに、旅に出るとなんだか気分がシャキッとするのはなぜだろうか。

その理由の一つは、旅だと一泊ごとに宿泊費などのコストがかかるからかもしれない。今の状態をいつまで続けるのかを毎日シビアに意識させられてしまうし、払うコストに見合うくらいに一日を有効に過ごさなければという意識が生まれる。

終わりが見えているものや日数が限られたものが好きだ。終わるものは全て美しく見えるし、続くものは全て淀んで濁って見える。自分が普段の生活で憂鬱になるのは、いつまでもこの見飽きた日常がだらだらと続いていきそうだという閉塞感によるものなのだろう。

だけど本当は普段の生活でも同じなのだ。普段住んでいる家だって毎月家賃や光熱費を払っているのだけど、それが見えにくくなっているだけだ。普段の生活だって、本当にその生活コストに見合うだけの毎日を送れているのか、もっと真剣に考えなければいけないはずなのだ。

そしてそれは人生だって同じなのだ。我々の寿命は有限で、一日ごとに一日ずつ減っていっている。健康だとそれが見えにくくなっているだけで、自分がいつか死ぬことは何も変わっていない。なぜ見えないものに対してすぐこんなに鈍感になってしまうのだろうか。自分は馬鹿なのだろうか。自分はこの限られた人生を本当に有効に活用できているのだろうか。

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猫を撫でて一日終わる

人と話すのが苦手だ。ご飯を食べるのが面倒だ。少しだけ人とずれながら、それでも小さな幸福を手にしたっていいじゃないか。自分サイズの生き方の記録。

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pha

1978年生まれ。大阪府出身。京都大学卒業後、就職したものの働きたくなくて社内ニートになる。2007年に退職して上京。定職につかず「ニート」を名乗りつつ、ネットの仲間を集めてシェアハウスを作る。2019年にシェアハウスを解散して、一人暮らしに。著書は『持たない幸福論』『がんばらない練習』『どこでもいいからどこかへ行きたい』(いずれも幻冬舎)、『しないことリスト』(大和書房)、『人生の土台となる読書 』(ダイヤモンド社)など多数。現在は、文筆活動を行いながら、東京・高円寺の書店、蟹ブックスでスタッフとして勤務している。Xアカウント:@pha

 

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