2020年の東京オリンピック・パラリンピックを来年に控え、都内の再開発や工事も盛んになり、マンションの価格も高騰、期待とテンションも上がりまくりの東京都。どんどん躍進を続ける大都市ですが、平成から令和へと新しい時代に移ろうとするなか、二十三区には、ずっと、ずぅっと変わらず言い伝えられている、都市伝説、逸話、噂話から歴史的事実まで、過去から脈々と続く色んな物語があるのはご存知でしょうか。
東京市を消滅させ、東京都が誕生した理由
東京都は現在、二十三区と二十六の街、五つの町と八つの村で形成されています。その東京二十三区の成り立ちは、明治時代に遡ります。江戸幕府が滅び、江戸城が新政府軍に明け渡され、江戸は東京府と改称されました。やがて東京府は拡大を続け、現在の二十三区に相当する範囲を「東京市」と称することに。昭和十八年には、第二次世界大戦が激化する中、東京市と東京府が合併し東京都が誕生。表向きは、帝都の行政機能を強化することが目的とされましたが、実際のところは、戦争に反対していた東京市の自治権を奪うことが目的だった、という説もあります。
語り継がれる「東京の闇」
時代が令和に変わるとはいえ、まだまだ誕生して間もない東京。そこには、実しやかに囁かれる都市伝説、怪奇現象、噂話、昔話がたくさんあります。なぜこんなにも新しい都市にたくさんの物語が言い伝えれているのか。明治以降、大きな戦争と、震災、それによる空襲や火災など、度重なる被害にあってきた大都市でもあり、そのたびに、大幅に街の様子を変えてきた歴史が、過去を未来にすげ替えることで、新しい姿を得てきた街だからではないでしょうか。しかし、いくら街が見た目や形を変えても、消し去ることができない土地の記憶、人々の過去が、物語となっていまも語り継がれている。それが、真実の東京の姿であり、誰もが見て見ぬふりをしている闇の部分でもあるかもしれません。その隠された物語をミステリとして小説にした作品『東京二十三区女』には、東京二十三区の闇がこれでもかと詰まっています。
夢の島に込められた願いは? お台場に”お”が付く意味は?
街が開発されるなかでいちばん変わっていくのは「名前」。いろんな願いを込めて変えられた名前には、逆に隠したかった「何か」が隠れている場合もあります。一方で、街の様子が変わっていっても名前が残っていることで、その土地のもともとの様子がわかることも多いです。例えば夢が溢れる地名の「夢の島」。小説『東京二十三区女』(幻冬舎文庫)ではこうあります。
「もともとこの地は、ごみの投棄場所として埋め立てらえた場所ではなかった。昭和十四年、まだ羽田空港ができる前、この場所は飛行機が建設される予定の土地だったんだ。だが太平洋戦争のため工事は中断された。戦後は海水浴場になり、ヤシの木が植えられ、『東京のハワイ』としてリゾート地になる予定だった。夢の島という名前は、その時つけられたんだがしばらくして海水浴場は閉鎖され、東京都のごみ処理場になった」
夢が詰まった都市開発。その願いが名前に込められているからこそ、現実と夢の狭間に潜む闇が物語を生むのかもしれません。
また、いまや観光客で賑わう「お台場」。うやうやしく「お」が付くのには、もともとの場所の役割にありました。
「台場ができたのは、江戸は幕末の頃、黒船の来航がきっかけでした。開国を迫るペリーの黒船に恐れをなした幕府が、品川沖に十一基もの大砲を設置しようと考え、砲台場を作らせたんですね。急ピッチで工事が進められ、わずか一年三ヶ月の間に六基も作らせた。しかし、一度も砲台は火を噴くことなく日本は開国し、計画は中止になったということです。台場が幕府の施設だったということで、『お城』『お殿様』とかと同じですね」
まだまだ知られざる秘密と闇と物語にあふれている、東京二十三区。その噂の真相を探るのも面白いかもしれません。