【年の差バディのお仕事は銃撃戦!?これぞ日本版キングスマンだ!】サラリーマン必読!「ニンジャスレイヤー」チームが描くスパイアクション「オフィスハック」待望の新連載! 第1回はコチラ→#1 働き方改革 時は令和元年! 舞台は東京丸の内の巨大企業T社! 人事部特殊部隊"四七ソ"の香田&奥野に今日も新たな指令がくだる。不正を働くオフィス内のクソ野郎どもをスタイリッシュかつアッパーに撃ち殺せ! テイルゲート! ダンプスターダイブ! 禁断のオフィスハック能力を正義のために行使せよ!
#13
「やばいッスよ~。俺のゆにポ、ついに30万ポイント溜まったんですけど~」
社員用カフェテリアの列に並びながら、井上が自慢してきた。おれたちはまた偶然、この前のメンバーで昼食をとることになったんだ。ちなみに高ポイント所持者のための優先レーンも作られていたが、目立つのが嫌だからか誰も使っていなかった。
「凄いですね井上さん。私はまだ300ポイントくらいですよ」
奥野さんが驚いていた。素直に驚いていたのかもしれないし、呆れていたのかもしれない。奥野さんのことだから、たぶん前者だろう。
「そんなに貯めてどうするんだよ。綾小路副社長とのランチミーティングでも申請するのか、井上?」
「しないッスよ~」
「Yahoo!トップにニュースが来てたけど、100万ポイント集めたら副社長とナイトクルーズできるみたいよ」と鉄輪。
「いやいやいやいや、無いでしょ~。なんで苦労して貯めたポイント使ってまでそんなことしなきゃいけないんですか~」
そこは井上に完全に同感だ。綾小路はタレント気取りでTVにも出演し、自分をブランド化するとか言い出して、グッズまで作らせている。ゆにポで購入できるアイテムには、綾小路Tシャツまで存在する。確かにそれでT社のニュースは増えたが、そんなので注目度を集めたから何だっていうんだ。
「じゃあ、集めたポイントは全く使う予定なし、ってことか?」
「マッサージに使おうと思ったら予約多すぎて結局無理だし、SwitchとかPS5とかの電化製品が交換品リストに入るまで貯めとこっかな~と思ってます」
「あのな、他社製品が入るわけないだろ」
おれは呆れ気味に言った。
「えっ? 入らないんですか?」
「当たり前だ。T社グループの関連製品しか入らないよ」
「そりゃそうだよね」鉄輪が笑った。「私もジムの割引とかが入るのなら少しやる気出すけど、そういう人気のやつも入らなそう」
「マジっすか? Switchとか入んないんだったら、俺もうかなりテンション落ちますよ~。実際もうかなり攻略に飽きてきたってのに……」
井上がため息をつきながら言った。そういえばこいつ、もう大量にポイントがあるのに安心したのか、朝はいつも通り遅刻し始めた。やっぱりこいつはゲームみたいな気分でゆにポを集めていたんだな。それはそれで稀有な能力と言えなくもないが……善行を積んで得られる信用とか信頼ってのは、本当はデータにできないもので、ポケモンとかお買い物ポイントじゃないんだぞ。と、おれは人生の先輩として井上に忠告してやろうとしたが、面倒なのでやめにした。
「待ってください井上さん。私にいい考えがありますよ」」
奥野さんが言った。井上に対して人生の含蓄を教え諭してくれるのかな。
「えっ? いい考えですか?」
「綾小路副社長とランチミーティングをして、Switchを交換品リストに入れてもらうというのはどうです? そんな大胆な進言をすれば、評価も上がるかもしれませんよ」
「あ! それいいっスね~! あれ? でもそうすると30万ポイントまた貯め直し?」
「あははは」鉄輪が小さく笑っていた。
「さすが奥野さんですね。おれ、ゆにポのことなんて、全然真面目に考えていなかったですよ」
おれはそう言いながら昼食のうどんを受け取り、いつものテーブル席に向かった。歩きながら、もしかするとさっきのは、奥野さんなりのジョークだったのかもしれないと思い直しながら。だが奥野さんはいつも真顔なので、おれたちは全員、うんうんと頷いて拝聴してしまうのだった。
おれが席に着くと、他の3人も各々のランチセットを持って集まった。
本題を最初に切り出したのは、鉄輪だった。
「……で、実際どう? OMNISの調整援用」
「良い所も悪い所もある。使い方次第だろうけど……」
「実際、ならず者部署の予測はかなり精度が高いです。ここ数週間の調整業務は、OMNISとゆにポに助けられている側面も、大きかったと感じます」
「出動が多くなったのが玉に瑕だけど、それで助かる真面目な部署があるなら、まあいいかな……とも思うよな。これで給料下げられたらたまったもんじゃないけど、ハハハ」
「案外、笑い事じゃないッスよ~。そのうち、俺たちみたいなオフィスハック能力者じゃなくても、バリバリ調整できるような時代が来ちゃうんじゃないッスかね~?」
井上は相変わらず鋭いところをついてくる。おれの能力なんて、ガラパゴスもいいところだ。他の会社に転職して年収が上がるビジョンが全く描けない。それどころか、社会的におれたちの能力が必要とされなくなったら、どこへ行けばいんだろう。
「九人が揃いも揃って強力なオフィスハック能力者っていう、四七ソが特殊なのかもね。五六シスなんかは元々そうでしょ? 能力者は全体の半分以下しかいないっていうし」
「あんな感じに四七ソもなって行くって? でも五六シスは元々秘密警察みたいで、融通が利かない感じだからなあ……」
「うん、悪い人たちじゃ無いんだけど、マニュアル最優先だからね。私は五六シスでやるのは無理かも」
「そうッスね~~。冷たい感じありますね。あ、五六シスが秘密警察だとしたら、俺たちは何になるんですかね?」
「何だろうな。おれたち絶対、正義の味方じゃないからな」
「知っていますか、ダーティハリーっていう映画。いや、あんなにかっこいいわけじゃないですし、もっと人情味がありますが……」奥野さんはそう自分で言って、何か照れ臭そうにして、忘れてください、と言った。
「ダーティハリー? 知らないッスね~」
「西部警察とか……? いや、これも違いますね。すみません……」
「先にもっと極端なやつを考えればいいかも。三七ゴはどうだったんだろう?」
三七ゴは、おれたちの宿敵であるサカグチが昔所属していたという社内調整部署だ。当時は社内でひどい恐怖政治が敷かれ、三七ゴはその死神として恐れられていた。「社内調整」も仰々しく「略式解雇」と呼ばれていた時代だ。
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