【年の差バディのお仕事は銃撃戦!?これぞ日本版キングスマンだ!】サラリーマン必読!「ニンジャスレイヤー」チームが描くスパイアクション「オフィスハック」待望の新連載! 第1回はコチラ→#1 働き方改革 時は令和元年! 舞台は東京丸の内の巨大企業T社! 人事部特殊部隊"四七ソ"の香田&奥野に今日も新たな指令がくだる。不正を働くオフィス内のクソ野郎どもをスタイリッシュかつアッパーに撃ち殺せ! テイルゲート! ダンプスターダイブ! 禁断のオフィスハック能力を正義のために行使せよ!
#20
「いやあ、おつかれさま。四七ソの無力化は完了、OMNISの強行リリースも無事完了だ! フフフ、Twitterで早くもOMNISが燃えてるから、またバカどものために燃料を投下しておかないと」
円卓会議室では、顔の見えない男がスマホを操作しながら小さく笑っていた。
「ま、俺の筋書き通りといったところですか」
サカグチは分厚い最高級パンチェッタを口へと運び、ワイングラスを傾けた。他の3人もスマホを操作しながら笑い、ワインやシャンパンを飲んでいる。全てT社のカネだ。
「うん。でもまさか長老に反抗するとは思わなかったなあ」
「そうですか? 俺はこっちのシナリオになると踏んでましたよ」
「ふうん」
「どっちに転んでも排除できる形にはしましたけどね。ミカミがうまくやりましたよ。これでもし脱獄でもしようものなら、四七ソと五六シスの本格的な銃撃戦の始まりだ」
「うん、満足満足」
顔の見えない男はタピオカアイスティーを啜った。
「そういえば、室長ってのはどうするんです? あれは曲者ですよ。危険察知したかで、深センに逃げたままでしょう?」
「それなら大丈夫。あいつはT社グループのホテルに宿泊しているから、腕利きのコンサルタントを数名送り込んである」
「なるほど、これで全部片付いたわけだ」
「そういうこと。それじゃあ邪魔者も消えたことだし、いよいよT社グループ内の大規模改革を始めようか。フフフ、ここからが本番だ。忙しくなるぞ」
「いいですけど、報酬はちゃんと支払ってくださいよ」
「もちろんだよ。社員の首切りが簡単になって、予算は潤沢だからね。フフフ。それに、これもある」
顔の見えない男は、円卓の奥からブリーフケースをサカグチたちに向けて滑らせた。
サカグチ、キョウコ、ダイゴ、ミカミの四人はブリーフケースを受け取り、中身を確認した。そこには最新鋭の調整用拳銃と防弾ウエストコートが収められていた。
「四七ソがいなければいないで、調整の手が足りないからね。予定通り、来月からは君たちが四七ソになる。この第1四半期から黒字化するために、無能部署や反抗的部署をバリバリ調整してもらうよ。何しろOMNISのパラメータは僕が好き勝手にいじり放題だからね。いよいよ僕のイノベーションの幕開けだ!」
顔の見えない男が立ち上がった。それこそは若きT社グループ改革の旗手、綾小路副社長であった。
◆ ◆ ◆
6月の丸の内は鉄の匂いがする。雨が近い。鉄の雨だ。
ザラついた風の中を、奥野辰雄は一人で歩いていた。
ステンコートの懐には古いウォークマンがあった。カセットテープの中身をスマホに移す方法は、結局よく解らなかった。あれだけ時間があったのだから、同僚に教わっておくべきだったなと奥野は思った。
白い有線イヤホン。曲はテキーラ。THE ROOSTERSのテープを十数年ぶりに聞きながら、奥野は早朝のT社複合ビルを見上げた。二十代の頃のような、鋭い目つきになっていた。
奥野は既に、辞表を提出した身である。職場に向かう必要はない。向かうべきでもない。だが毎日、ここへと引き寄せられる。
内閣調査室はこれまで、何人ものエージェントを一人ずつ順番にT社内に送り込んできた。T社だけではない。改正会社法の対象となるようなメガコーポ数社がターゲットだ。治外法権のメガコーポが暴走しないか適切なチェックを行うために。オフィスハック能力者たちを適切に監視するために。また時には、法の及ばぬ巨悪を敷地外へと引きずり出すために。いずれにせよ危険な潜入任務であることに変わりはない。
中でも、T社の重要度は最高ランクに位置付けられていた。数年ごとに緻密なローテーションが組まれ、奥野のような者がその都度過去経歴を偽装されて人事部に送り込まれ、溶け込み、溶け込み切る前に、去ってゆく。そのようなルーチンが繰り返されてきた。
この危険な勤めが終われば、内調のエージェントは年単位の有給休暇が得られる。めったにない骨休めの時間だ。家族と過ごせる時間だ。
だが、何か胸騒ぎがした。奥野は肩で風を切りながら、少し険しい顔で、丸の内の遊歩道を歩いた。革靴のつま先を見た。時折顔を上げ、巨大なT社社屋を見た。
奥野は四七ソの面々を思った。彼らならば大丈夫だろう。そう考えていた。
引き返す手もあった。むしろそれが正しい公僕としてのあり方だ。期間内の任務は全て終了したのだから。ここで何か下手を打てば、責任を追及される。
だが、己の内なる声が告げていた。まだやり残したことあるぞと。
キュルキュルキュル、とテープを巻き戻し、イヤホンのコードをウォークマンに巻いた。
そして奥野は、T社ビルのエントランスへと向かった。
◆四七ソの反撃が始まる!? 第6話につづく…!! COMING SOON!!◆
↓第0話~第2話収録の物理書籍はこちら!!↓
↓第3話「新人くんの社内調整」収録の電子書籍はこちら!!↓
オフィスハックの記事をもっと読む
オフィスハック
スーツ男子バディのお仕事は、銃撃戦!? 累計150万部突破「ニンジャスレイヤー」チームが描く、前代未聞の社内スパイ・アクション!