落語家・桂竹千代さんが、余計な笑い(!)もたっぷり入れてお送りしている「古事記」解説。
超有名な神様のひとり、オオクニヌシノミコトが、80人のお兄ちゃんたちを差し置いて、みんなのヒロイン・ヤガミヒメをゲットしちゃいます。
そしたらたいへん、お兄ちゃんたちによる復讐――殺神事件が起こるのです……
* * *
第11話「クリリンかよ」
オオクニヌシは、念願のヤガミヒメを手に入れました。
お兄ちゃん達80柱は、このことにめっちゃ怒ります。
皆で作戦を立てて、オオクニヌシを殺そうとします。こういうときに限って皆仲良くなるのよね。こーわっ。
手間山(てまのやま。鳥取と島根の境)の麓までオオクニヌシを連れて行き、
ヤソガミ「おい、オオクニヌシよー、この山に赤イノシシがいんだよ。俺たちが上から追いおとすから、お前下で捕まえろ! もしできなかったらお前……殺すぞ!(どっちにしろ殺すつもりだけどね~)」
オオクニヌシ「わかったよお兄ちゃん!」
ヤソガミは、イノシシではなく、大きな岩を焼いて、山の上から転がします。
オオクニヌシ「きたっ! これだ!」
バチコーン!!
オオクニヌシ……死亡。
いや、岩かイノシシかはわかるだろ!!
岩とイノシシが区別できないくらい視力悪かったと思われるオオクニヌシ(いい眼科紹介します。岩だから岩科か)。岩に潰され、死す!
オオクニヌシ達のお母さんはこれを知って、
母「なんてかわいそうなオオクニヌシ。どうか神様、生き返らせて~! (お前も神様だろ!)」
そこで赤貝と蛤の神(貝は生命の象徴。火傷薬にも貝が使われたらしい)がオオクニヌシの身体に薬を塗ると……復活!
母「よかったわねオオクニヌシ~」
このエピソードの舞台とされるのが、鳥取県にある赤猪岩神社(あかいいわじんじゃ)です。
ここにはオオクニヌシとその母神が祀られていて、境内には囲いがあって、この地中深くにイノシシ岩が埋まってると言います。もう二度とこんなことが起こらないように、封じ込めてるんですね。オオクニヌシが復活を遂げたことから、この神社は、再生や次なる発展を期待する方にご利益があります。
さあ、ヤソガミは、オオクニヌシが生き返ったのを聞いて、さらにヒートアップします。
ヤソガミ「何? 生き返っただと? 母ちゃんめ、余計なマネしやがって! もう一回殺すまでやい!」
ヤソガミ達は、オオクニヌシを山へ連行します(さっきから山好きだな)。
木に切り込みを入れて楔(くさび)を打ち込み、
ヤソガミ「おい、オオクニヌシ! お前ここ入れ! 入らねーと殺すぞ!(だからどっちにしろ殺すんでしょ)」
オオクニヌシ「わかったよお兄ちゃん!(いや素直すぎんだろ!)」
オオクニヌシが入ったところで楔を抜くと……、
バチコーン!!
オオクニヌシ……死亡。
またー!?
よわー!!
楔の間に入れるって、小ちゃー!
ちょっとは疑って~!!
これを知った母ちゃんは、
母「何てかわいそうなオオクニヌシ。どうか神様、生き返らせて~! (お前も神様だろ! デジャブ!)」
オオクニヌシ……復活!
……もう命って何なんだろうと言いたくなります。
クリリン並みに生き返ります(Ⓒドラゴンボール)。
マリオ的に言うと、3キあったってことです(わかるかな?)。
母「オオクニヌシ、また殺されるといけないわ(いや、アンタ何度でも生き返らせられるんだろ)。キノクニへ逃げなさい」
キノクニは大きな本屋で(嘘ですよ)、キノクニ→木国→紀伊国です。つまり、オオクニヌシは現在の和歌山県の方へ逃亡します。
にしても、ヤソガミを止めるという選択肢はないのでしょうか。反抗期の子供は怖いのかしら。
まだまだ追ってくるヤソガミは、弓矢でオオオクニヌシを殺そうとします(ようやく正攻法で殺すのかよ)。
ここで、現地の木の神様(木国だからね)こと、大屋彦命(オオヤビコノミコト。以下、オオヤビコ)が、木の俣(また)からオオクニヌシを逃がします。
このエピソードの舞台が、和歌山県の伊太祈曽神社(いたきそじんじゃ)です。
ここにはオオヤビコが祀られていて、境内には「木の俣くぐり」のアトラクションがあります。エピソードにちなんで、木に開いた穴をくぐると厄除けのご利益があるというわけです。実際にこれをくぐると「木の俣くぐり体験証明書」をもらえます(有料)。
「またくぐり」だけに、二回くぐると良いでしょう(またまた!)。
何とかヤソガミから逃れたオオクニヌシは、自分の6代上の先祖、スサノオのいる根之堅州国へと逃げることにします。
根堅州国は黄泉国とは違いますが、先祖がそこにいるということは、何か似たようなところなんでしょう。
スサノオが生まれてずーっと根堅州国へ行きたいと泣いていたのを思い出します(第5
さて、どこにあるんでしょうね。
しかし、自分のひいひいひいひい(ラマーズ法みたい)おじいちゃんと会えるなんて、時代はぐっちゃぐちゃ。
さあ、オオクニヌシが先祖のスサノオと会うことになるのですが、ここから新たな試練が待ち受けます。
落語DE古事記
神社に行けば、私たちは神様にありとあらゆることをお願いしますよね。商売繁盛に合格祈願に延命長寿に縁結びに厄除けに……。
でもちょっと待って。こんなに頼りにしてる「神様」のこと、ちゃんと知ってますか?
神様について書いてあるのが「古事記」です。歴史の教科書でも最初の方に出てくるので、「古事記」について聞いたことのない人はいないと思いますが、でも何が書かれているかまで説明できる人って、少ないんじゃないでしょうか。
そこで、大学院まで古代史を専攻していた落語家の桂竹千代さんに、「古事記」を楽しく解説していただくことにしました。
爆笑注意ですから、静かな場所では読まないようにしてくださいね!
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