3組に1組は離婚する時代。しかし、細かい離婚の顛末は案外知らないし、男性側からの言い分を聞く機会は少ないのではないだろうか。『ぼくたちの離婚』を上梓したばかりの稲田豊史さんに男性の離婚事情をご寄稿いただきました。
* * *
「離婚の原因」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。平成29年度司法統計によると、男女ともに原因の1位は「性格が合わない」だが、ざっくりしすぎていて、よくわからない。ちなみに、男の2位は「(妻が)精神的に虐待する」、女の2位は「生活費を渡さない」である。
筆者はここ1年半ほど、離婚した男性へのインタビューを行っている。ルポ連載用の取材だが、実際には企画を構想した4年ほど前から離婚話を意識的に収集しはじめた。そんな彼らの離婚原因で特に目についたのが、「男が夫という役割を担えない未熟さ」だ。
なお企画の性質上、離婚男性のサンプルは偏っている。簡潔に言えば「東京圏在住の30代後半〜40代で、知的職業に従事する、比較的高偏差値・高学歴の男性」だ。
「守ってあげたい」がわからない夫
10年前、31歳の時に離婚した田中元基さん(仮名、41歳)は、「相手を“守ってあげたい”という気持ちがまるでわからない」という。「元妻の里美(仮名)は僕に、夫として、未来の父親として、家長としての立ち居振る舞いを求めていましたが、応(こた)えてやれませんでした」
では、なぜ結婚したのかと聞くと、こんな答えが。「里美は僕よりずっと学歴が低くて、職種もごく普通の事務職。キャリアへのこだわりもない。誰かと結婚して子供を作ってお母さんになって生きていく以外にプランがないように見えました。僕はそんな彼女のことを哀れんでいて、かわいそうな存在だと思ったんです。だから7年も付き合ったあげく放り出したら、この人は生きていけなくなるだろうと不安になり、結婚しました」
田中さんは4年前に5歳年上の女性と再婚しているが、その理由は「金銭的にも精神的にも支える必要がないから」。再婚相手の収入は田中さんより上だそうで、ふたりの間に子供はない。
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