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落語DE古事記

2019.12.09 公開 ポスト

『古事記』でいちばん有名な女神様アマテラスの誕生シーン、びっくりしすぎてのけぞる!桂竹千代(落語家)

今年は令和元年ですから、即位関連のさまざまな儀式がありました。
つい先日も、天皇皇后両陛下が伊勢神宮に参拝なさっていました。伊勢神宮の内宮(ないくう)に祀られている天照大神(アマテラスオオミカミ)に、即位の礼や大嘗祭を終えたことを報告されたとのこと。
このアマテラスオオミカミ、『古事記』の中に何度も登場しますが、いったい、どんなふうに生まれた神様なのでしょうか?
その登場のシーン、かなり印象的なんです! さっそく、落語家・桂竹千代さんにによる新刊『落語DE古事記』より、その部分をご紹介します。

*  *  *
「第四話 泣くなー!」より

『古事記』のもっとも有名な女神様アマテラスは、こうして生まれた!

黄泉(よみ)の国から帰還したイザナギは、全身が穢(けが)れているので、禊(みそぎ・お清めみたいな

もの)をしなければなりません。

日本では古来、死と接すると、自分のもつ「気」が枯れると考えられてきました。

「気枯れ」が「ケガレ」という言葉になったと言われています。穢れた人はお祓いをしなくてはいけません。お祓いの中でも、滝に打たれることや、沐浴など、水を使うものを禊と言います。

この時イザナギは、日向(ひむか)というところにある川で、禊をしたそうです。宮崎県に日向(ひゅうが)という地名があるけど、イザナギが禊をしたところかどうかは不明。宮崎県は日本神話の舞台と言っていいほど、伝承地がこれからもたくさん出てきます。また、宮崎県宮崎市には「みそぎ池」という伝承地があります。この近くに、江田神社というイザナギ&イザナミをまつった神社もあります。

イザナギは身に着けていた衣服を脱ぎ、アクセサリーを外していきます。杖、帯、衣、袴(はかま)、冠(かんむり)、腕輪など……(いつの間にこんな装飾着けてたのかよ! 黄泉の国行くのに、よそ行きしていったのね)。

その外したアイテム(オシャレなアパレル店員の言い方)を投げると、そこから神が生まれていきます。

陸と海の神。計12柱の神々が誕生します(また入りました神様の確変フィーバー!!)。

さあ、生まれたままの姿になって、禊スタート!

黄泉の国の垢あかから、また神がどんどん生まれていきます。

……意味わかんないですか? つまりカラダの汚れを落とすだけで、神が生まれちゃってるんです。

はい、せーの! アンビリーバボー!!

垢を落とすと様々な神々が生まれますが……このシーンで覚えておいて頂きたいのはこちらの3兄弟。

長男:底筒之男命(ソコツツノオノミコト。水の底の方ですすいだ時に生まれたよ)

次男:中筒之男命(ナカツツノオノミコト。水深の中間くらいのとこですすいで生まれたよ)

三男:上筒之男命(ウワツツノオノミコト。水面あたりですすいで生まれたよ)

この3柱の神様は、大阪の住吉大社にまつられています。3柱を合わせて「住吉大神(スミヨシノオオカミ)」と言います。全国に約2300社あると言われる住吉神社の祭神はすべて住吉大神で、航海の神様と言われています。

順番はこう覚えてください。

一番上は三男♪ 三男♪

一番下が長男♪ 長男♪

間にはさまれ次男♪ 次男♪

すみよし3兄弟♪

……すみません。歌ったことを後悔しております(航海だけにね。いいぞ落語家)。

イザナギさん、体を洗ってさっぱり、最後は洗顔です(髪の毛洗わないのかな)。

左目を洗って生まれたのが天照大神(アマテラスオオミカミ。キター!! 日本の最高神。ナルシストな女王様。以下、アマテラス)。

右目を洗って生まれたのが月読命(ツクヨミノミコト。意外とこの後あまり出てこないので性格よくわからん。以下、ツクヨミ)。

鼻を洗って生まれたのが須佐之男命(スサノオノミコト。乱暴者。末っ子気質のイタズラ好き。後に大活躍。以下、スサノオ)。

目と鼻から生まれたことからこれを目くそ鼻く……バチあたるわ!!

この3柱の神々を三貴子(さんきし)と呼び、特に尊い神とされます(結局、髪の毛と耳は洗ってないわね。耳は洗ってないから穢れたままですよね。実はボクも耳が穢れてるんです……というか潰れてるんです。高校の時に柔道やってて潰れました。柔道と落語は似てるんです。

どちらもオトしたら勝ちです……いっぽん!)。

イザナギ「よしっ。まずはアマテラス、お前は高天原を治めなさい」

アマテラス「はいはい、やりますよ(女王様気質なので)」

イザナギ「次、ツクヨミ、お前は夜の世界を治めなさい(歌舞伎町とかすすきのとかのことじゃないわよ)」

ツクヨミ「はいお父様。月にかわっておしおきよ!」

イザナギ「で、スサノオ、お前は海の世界を治めなさい」

スサノオ「……やだーーー!!」

スサノオだけは父ちゃんの言うことを聞かず、ずーっと泣いていました。とにかくずーっと。どれくらい泣いていたかというと……その涙で青々とした山はことごとく枯れ、川と海が干上がってしまい、ありとあらゆる災いが起こるほど。

イザナギ「もう泣くなー! やめろー!!」

スサノオ「……ぐすっぐす……わあーん!!」

イザナギ「泣くなー!!」

スサノオ「……ぐすっ……うん」

イザナギ「……やっと泣き止んだか」

スサノオ「ゔわーーーん!!」

イラスト:半崎リノ

~ここから先は本書でお楽しみください!桂竹千代著『落語DE古事記』

*   *   *

特に尊い神様「三貴神」ですが、生まれ方がファンタジー。
古事記に欠かせない偉大な女神様・天照大神(アマテラスオオミカミ)は、黄泉の国から帰ってきたイザナギの左目を洗ったら、そこから生まれたのでした。謎過ぎる…。
アマテラスオオミカミは、ここから先も、なにかと登場する、見せ場の多い神様ですので、覚えておきましょう。

さて、次回は……「神宿る島」はどーこだ? です!

関連書籍

桂竹千代『落語DE古事記』

日本の神様は、奔放で愉快でミステリアス! 海をかき混ぜて日本を作ったかと思えば、一目惚れしたり、嘘ついたり、嫉妬に燃えたり。女の取り合いで大蛇と喧嘩する神様も、娘の恋人をイタズラでいじめ抜く神様もいる。さらに神同士の殺し合いも度々勃発。壮大すぎて難解と言われる日本最古の歴史書を、落語家が爆笑解説でスラスラ読ませる。

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落語DE古事記

神社に行けば、私たちは神様にありとあらゆることをお願いしますよね。商売繁盛に合格祈願に延命長寿に縁結びに厄除けに……。
でもちょっと待って。こんなに頼りにしてる「神様」のこと、ちゃんと知ってますか?
神様について書いてあるのが「古事記」です。歴史の教科書でも最初の方に出てくるので、「古事記」について聞いたことのない人はいないと思いますが、でも何が書かれているかまで説明できる人って、少ないんじゃないでしょうか。
そこで、大学院まで古代史を専攻していた落語家の桂竹千代さんに、「古事記」を楽しく解説していただくことにしました。
爆笑注意ですから、静かな場所では読まないようにしてくださいね! 

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桂竹千代 落語家

落語家。千葉県旭市出身。1987年3月17日生まれ。2005年千葉県立匝瑳高校卒業。2009年明治大学文学部史学地理学科考古学専攻卒業。2011年明治大学大学院文学研究科古代日本文学専攻修士課程修了。元ニュースタッフエージェンシー所属漫才師、ゴーギャン職人。2011年7月、桂竹丸に入門、前座「竹のこ」。2015年9月、二ツ目昇進、「竹千代」。2019年3月、第18回さがみはら若手落語家選手権優勝。

新宿末広亭や浅草演芸ホールなどの寄席を中心に、全国各地で落語会に出演。その他、イベント・結婚式司会、温泉ツアーガイド、古代史講座、大学講師、社会教育講演など幅広く活躍。旭市観光大使も務める。

エンタの神様(日本テレビ)、爆笑オンエアバトル(NHK)、メレンゲの気持ち(日本テレビ)、グリコポッキーCM、どうする東京(MXTV)、50ボイス(NHK)、BS笑点特大号(BS日本テレビ)、ミッドナイト寄席ゴールデン(BS12)、夕やけミッドナイト寄席(BS12)SHARP・アクオス落語(全国の家電量販店にて放映)、日曜バラエティー・レギュラー出演(NHKラジオ第一)2018年4月~2019年3月、桂竹千代のJAGARAKU(FM帯広)2018年4月~2019年3月、OH! HAPPY MORNING「Today’s Focus」(JFN)※古代史専門家としてニュースコメント、春風亭昇太のピローな噺(dtvチャンネル)、竹千代の風土記(CS寄席チャンネル)などに出演。

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