今年は令和元年ですから、即位関連のさまざまな儀式がありました。
つい先日も、天皇皇后両陛下が伊勢神宮に参拝なさっていました。伊勢神宮の内宮(ないくう)に祀られている天照大神(アマテラスオオミカミ)に、即位の礼や大嘗祭を終えたことを報告されたとのこと。
このアマテラスオオミカミ、『古事記』の中に何度も登場しますが、いったい、どんなふうに生まれた神様なのでしょうか?
その登場のシーン、かなり印象的なんです! さっそく、落語家・桂竹千代さんにによる新刊『落語DE古事記』より、その部分をご紹介します。
* * *
「第四話 泣くなー!」より
『古事記』のもっとも有名な女神様アマテラスは、こうして生まれた!
黄泉(よみ)の国から帰還したイザナギは、全身が穢(けが)れているので、禊(みそぎ・お清めみたいな
もの)をしなければなりません。
日本では古来、死と接すると、自分のもつ「気」が枯れると考えられてきました。
「気枯れ」が「ケガレ」という言葉になったと言われています。穢れた人はお祓いをしなくてはいけません。お祓いの中でも、滝に打たれることや、沐浴など、水を使うものを禊と言います。
この時イザナギは、日向(ひむか)というところにある川で、禊をしたそうです。宮崎県に日向(ひゅうが)という地名があるけど、イザナギが禊をしたところかどうかは不明。宮崎県は日本神話の舞台と言っていいほど、伝承地がこれからもたくさん出てきます。また、宮崎県宮崎市には「みそぎ池」という伝承地があります。この近くに、江田神社というイザナギ&イザナミをまつった神社もあります。
イザナギは身に着けていた衣服を脱ぎ、アクセサリーを外していきます。杖、帯、衣、袴(はかま)、冠(かんむり)、腕輪など……(いつの間にこんな装飾着けてたのかよ! 黄泉の国行くのに、よそ行きしていったのね)。
その外したアイテム(オシャレなアパレル店員の言い方)を投げると、そこから神が生まれていきます。
陸と海の神。計12柱の神々が誕生します(また入りました神様の確変フィーバー!!)。
さあ、生まれたままの姿になって、禊スタート!
黄泉の国の垢あかから、また神がどんどん生まれていきます。
……意味わかんないですか? つまりカラダの汚れを落とすだけで、神が生まれちゃってるんです。
はい、せーの! アンビリーバボー!!
垢を落とすと様々な神々が生まれますが……このシーンで覚えておいて頂きたいのはこちらの3兄弟。
長男:底筒之男命(ソコツツノオノミコト。水の底の方ですすいだ時に生まれたよ)
次男:中筒之男命(ナカツツノオノミコト。水深の中間くらいのとこですすいで生まれたよ)
三男:上筒之男命(ウワツツノオノミコト。水面あたりですすいで生まれたよ)
この3柱の神様は、大阪の住吉大社にまつられています。3柱を合わせて「住吉大神(スミヨシノオオカミ)」と言います。全国に約2300社あると言われる住吉神社の祭神はすべて住吉大神で、航海の神様と言われています。
順番はこう覚えてください。
一番上は三男♪ 三男♪
一番下が長男♪ 長男♪
間にはさまれ次男♪ 次男♪
すみよし3兄弟♪
……すみません。歌ったことを後悔しております(航海だけにね。いいぞ落語家)。
イザナギさん、体を洗ってさっぱり、最後は洗顔です(髪の毛洗わないのかな)。
左目を洗って生まれたのが天照大神(アマテラスオオミカミ。キター!! 日本の最高神。ナルシストな女王様。以下、アマテラス)。
右目を洗って生まれたのが月読命(ツクヨミノミコト。意外とこの後あまり出てこないので性格よくわからん。以下、ツクヨミ)。
鼻を洗って生まれたのが須佐之男命(スサノオノミコト。乱暴者。末っ子気質のイタズラ好き。後に大活躍。以下、スサノオ)。
目と鼻から生まれたことからこれを目くそ鼻く……バチあたるわ!!
この3柱の神々を三貴子(さんきし)と呼び、特に尊い神とされます(結局、髪の毛と耳は洗ってないわね。耳は洗ってないから穢れたままですよね。実はボクも耳が穢れてるんです……というか潰れてるんです。高校の時に柔道やってて潰れました。柔道と落語は似てるんです。
どちらもオトしたら勝ちです……いっぽん!)。
イザナギ「よしっ。まずはアマテラス、お前は高天原を治めなさい」
アマテラス「はいはい、やりますよ(女王様気質なので)」
イザナギ「次、ツクヨミ、お前は夜の世界を治めなさい(歌舞伎町とかすすきのとかのことじゃないわよ)」
ツクヨミ「はいお父様。月にかわっておしおきよ!」
イザナギ「で、スサノオ、お前は海の世界を治めなさい」
スサノオ「……やだーーー!!」
スサノオだけは父ちゃんの言うことを聞かず、ずーっと泣いていました。とにかくずーっと。どれくらい泣いていたかというと……その涙で青々とした山はことごとく枯れ、川と海が干上がってしまい、ありとあらゆる災いが起こるほど。
イザナギ「もう泣くなー! やめろー!!」
スサノオ「……ぐすっぐす……わあーん!!」
イザナギ「泣くなー!!」
スサノオ「……ぐすっ……うん」
イザナギ「……やっと泣き止んだか」
スサノオ「ゔわーーーん!!」
~ここから先は本書でお楽しみください!桂竹千代著『落語DE古事記』~
* * *
特に尊い神様「三貴神」ですが、生まれ方がファンタジー。
古事記に欠かせない偉大な女神様・天照大神(アマテラスオオミカミ)は、黄泉の国から帰ってきたイザナギの左目を洗ったら、そこから生まれたのでした。謎過ぎる…。
アマテラスオオミカミは、ここから先も、なにかと登場する、見せ場の多い神様ですので、覚えておきましょう。
さて、次回は……「神宿る島」はどーこだ? です!
落語DE古事記
神社に行けば、私たちは神様にありとあらゆることをお願いしますよね。商売繁盛に合格祈願に延命長寿に縁結びに厄除けに……。
でもちょっと待って。こんなに頼りにしてる「神様」のこと、ちゃんと知ってますか?
神様について書いてあるのが「古事記」です。歴史の教科書でも最初の方に出てくるので、「古事記」について聞いたことのない人はいないと思いますが、でも何が書かれているかまで説明できる人って、少ないんじゃないでしょうか。
そこで、大学院まで古代史を専攻していた落語家の桂竹千代さんに、「古事記」を楽しく解説していただくことにしました。
爆笑注意ですから、静かな場所では読まないようにしてくださいね!
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