●今回取り上げる本:『病が語る日本史』(酒井シズ)
過去を全否定することなく過去から教訓を引き出すために
新型コロナウィルスが世界各地に広がり、いまだに終息する素振りを見せない。死者数も恐ろしいスピードで積み上がっていく。
私は企業のコンサルタントに従業している。まわりから聞こえてくる意見に、象徴的な二つがある。それは「グローバリズムが発展しすぎたがゆえの、反グローバリズム」と「サプライチェーンが高度化したがゆえの、反サプライチェーン」だ。
これは専門的な内容を解説する場ではないので、簡易的に話す。日本企業は、中国や東南アジアに事業が拡大し、それがゆえに新型コロナウィルスの打撃を受けている。そこで前者は、だからこそ中国などを外して事業を再構築しようというもの。
そして、現在、生産・在庫・販売など一連のサプライチェーンは、極限までムダな流通量を削っている。それがサプライチェーンの進化だった。しかし、そうすると、脆弱になり、今回のような災害時にはすぐさま止まってしまう。だから後者は、サプライチェーンを高度化するのではなく、むしろ余裕をもたせろと主張するもの。
この二つが、なぜ私にとって象徴的かというと、その思考の振れ幅があまりにも極端だからだ。大きな事故の際には、多くの人たちが過去を突然に全否定しようとする。平和な日常を過ごしていたときには疑いもしなかったくせに。災害から教訓を引き出すにしても、それは過去を完全に否定するのではなく、きっと、過去の良かったところも見逃さずに、改良する目が必要だろう。
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