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才能の正体

2020.06.20 公開 ポスト

「彼女はもともと才能があったんでしょ?」僕の答えはノーです。「ビリギャル」坪田先生による才能の話。坪田信貴

コロナ禍は、学習シーンにも大きく影響し、休校になったり、授業がオンラインになったりした。学校の授業だけでなく、塾も、部活も、コロナ前の体制に戻るには時間がかかりそうだ。いや、そもそも、戻らないのかもしれない。

でも、だからといって、能力を伸ばせなくなったわけではない!

「才能の本質」について知れば、体制に関係なく、能力を伸ばすことはできる。その方法を知りたくありませんか?

『ビリギャル』の坪田信貴先生が「才能とは何か」について考察を重ねた話題の本、才能の正体』の文庫化記念で、本文を公開します。

*  *  *

はじめに

こんにちは。坪田信貴です。

突然ですが、お尋ねします。

あなたは、「自分には才能がない」と思ったことはありませんか?「もともと才能に恵まれている人はいいなあ」なんて言ってしまったことはありませんか?

誰でも一度や二度はあるでしょう。いいえ、一度や二度どころか、わりと多くの人が、何かにつけて思ったり言ってしまったりすることではないでしょうか。

僕は塾講師として、これまで1300人以上の子どもたちの学習に伴走をしてきたのですが、実際に、そんなふうに言う生徒さんや親御さんに大勢会ってきました。

ご存知かもしれませんが、僕は、2013年に『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(以下『ビリギャル』)を出版しています。主人公のさやかちゃんは、最初に僕の塾へ来たときは全国偏差値30以下、成績は学年でビリだったのですが、そこから猛勉強して、現役で慶應義塾大学に合格しました。そのいきさつをまとめたものです。

この本がベストセラーになると、多くの人からこう言われるようになったのです。

「彼女は、もともと才能があったんでしょ?」

(写真:iStock.com/y-studio)

──どうやら人というのは、“才能の有無”を、安易に断定したがるようです。 でも、「才能」って、生まれつきのものなのでしょうか? 一部の人にしか備わっていない、特別なものなのでしょうか?

それに対する、僕の答えは「ノー」です。

才能は、誰にでもある 。

僕はいつもそう言っています。

しかし、この言葉を素直に信じてくれる人は、とても少ない。「そんなのはきれいごとだ!」と思う方もいるようです。でも、そういう人たちは、非常にもったいないことをしています。せっかく「ある」のに、手に入れようとしないのですから。

“ビリギャル”のさやかちゃんのような成績だった子どもたちが“一流大学”に合格するのを、僕はこの目でたくさん見てきました。その僕が言うことを、ぜひ信じてください。

もう一度言います。

才能は、誰にでもある。

みんな、その才能をどう見つけたらいいのか、どう伸ばせばいいのかが、わからないだけなのです。自分の才能も、我が子や、教え子や、部下や、後輩の才能も。

そればかりか、多くの人たちは、その才能を潰してしまうことばかりしている……。このことにこそ、気づくべきなのです。

そもそも、「才能」ってどういうものなんでしょう?

 

僕は学生時代から才能についていろいろと考えてきました。実は、自分のことを「才能研究家」と言ってもいいかなと思うくらい、いろいろなことを試みてきています。

成績がきわめて悪かった子を、「100%無理!」と周りの全員から言われていた難関大学に合格するまで指導したり、他の会社では採用されないような変わった人を採用して、誰よりも優秀な人材に育成したり。

“普通の人”は、成績が悪い子に「君なら難関大学に入れるよ。目指そうよ」とは言わないでしょう。“普通の会社”は、「変わった人」「扱いにくそうな人」を採りたがらないかもしれません。

でも僕は、そんな彼らに限りない才能を感じました。彼らが、周りの人から期待されていなければされていないほど、僕のやる気には火がつきました。これこそ、「才能研究家」の腕の見せどころですから!

結果的に、『ビリギャル』のさやかちゃんのような、奇跡的な(僕は奇跡だと思っていませんが)結果を残した子どもたちを何人も送り出してきましたし、僕が自分の会社で採用した「変わった人たち」は、その能力を伸ばし、大いに実績を上げています。彼らがどんな人たちなのか、僕がどんな課題を与えて彼らの才能を伸ばしたのかについても、じっくり述べたいと思います。また、“ビリギャルの先生”の印象が強いので意外かもしれませんが、僕は人材育成や組織改革の仕事もさせていただく機会が多くありますので、そんなマネジメントの視点も入ってきます。

《第1章》では、「才能」とは何か? 僕の考えをまとめています。「あの人は地アタマがいい」「私には才能がない」みたいなことをつい言ってしまう人に、ぜひ読んでいただきたい。本当にあなたには、才能がないのか? それともあるのか? ──その答えが明らかになります。

《第2章》では、“ビリギャルの先生”としての視点、すなわち1300人以上の生徒さんと向き合ってきた立場で、個人の才能の伸ばし方について具体的なメソッドをまとめています。お子さんの能力を伸ばしたい親御さんや、自分の能力を伸ばしたいと考えている学生や社会人の方は、この章に集中していただけるといいでしょう。

《第3章》では、人材マネジメントの話になります。才能ある人材をどう見出し、どう育成していくかについて、そして、ひとりひとりの能力を伸ばしつつ、これからの時代でチームとしていかに強くなるかについてまとめました。

《第4章》は、私がこれまでにお会いした「一流の才能の方」のお話を通して、「成功者」や「天才」は“普通の僕たち”と何が違うのか、考えてみました。

才能とは、いったい何なのか?

才能とは、どう見つけて、どう伸ばしていけばいいのか?

この本を参考にして、自分の才能、そして周りの人たちの才能の“芽”を見つけ、どんどん育てて、開花させてください。

奇跡は、起きるものじゃなく、起こすもの。そして、そんな奇跡を実際に手にしたとき、あなたはそれが奇跡なんかじゃなかったことに気づくでしょう。きちんと根拠があるから、手に入ったものなのだ、ということに。


【『才能の正体』 目次】

目次
はじめに 4

第1章「才能」とは何か?
「才能」という言葉の意味を、分析してみた 21
大きな勘違いによって、僕は「才能」の本質を知りたくなった 24
「才能がある人」とそうじゃない人 27
人はどういうときに、「あの人は地アタマがいい。才能がある」と言うのか 32 大学に落ちれば「もともと才能がない」。受かれば「地アタマが良かった」 34
人は、「結果」に合わせて、事実を「物語」にする 37
「やる気」は幻想です 41
やる気のもとである「動機付け」を分析してみた ――まず「何をどう認知しているか」45
「高すぎるハードル」を乗り越える秘訣 47
「やればできる」は、まやかしの言葉。僕は絶対に使いません 51
普通の人は「Why型」、天才は「How型」。どこが違う? 55
無邪気に才能の芽を潰す、大人たちの罪 59
「本当の成功」とは何か? ――長期的視点を持つことで、幸せな成功をしよう 62
僕の考え方に革命を起こした「赤ちゃんの抱き方」 67
「○歳からの□□教育」が才能を殺す 70
“四回転ジャンプ”も“100メートル走10秒切り”も、かつては「人類には無理」と言われていた 72
尖った部分をさらに磨けば、選択肢は限りなく広がる 76
背景や文化が違えば、認められる能力も違う 80
才能は本質的に「自分の中」にしかない 82
「最後の剣豪」と洞察力 86
才能の正体は「洞察力」 90

第2章「能力」を「才能」へ
「できる人」「頭のいい人」の言葉を聞いてはいけない 97
行動を完コピせよ! ――そのときに「メモ」ではなく「動画」を使う 100
できる人の真似をするとき、「言葉」よりも「行動」に注目する理由 104
どれだけ優秀でも継続できないと意味がない 108
親から子どもにかけた呪い!? 拮抗禁止令と13の禁止令 112
自分を出せなくなると、能力は伸びない。鍵を握っているのは「親」 118
才能ある人は、「思考停止」しない 121
今の学校教育を信じていると、能力は伸びない 126
他人の成功体験なんてあてにならない 128
「技」と「術」の違い 131
誰かが成功すると、急に「できる人」が増える理由 133
学校の勉強も「技」と「術」に分けると、理解が格段に上がる 136
才能の「壁」にぶつかったらどうするか? 142
“基礎の基礎”って、いったいどこまで戻ればいい? 144
0点だったテストは、自分を伸ばす“いいテスト” 147
東大卒の親と、それ以外の親 149
「なぜ人は勉強するか」の答えはたったひとつ 152
「成功体験がないから自分に自信が持てない」は、ただの言い訳 158

第3章「才能」のマネジメント
「正解のない社会」で才能を伸ばすには 165
36歳、元警視庁のスナイパーが僕の右腕になるまで 167
37歳、1ヶ月連続休暇が条件のバックパッカーが僕の左腕になるまで 171
僕が、世間一般の価値観にとらわれていない人を採用した理由 174
信頼関係を生むことが、才能を伸ばすための第一歩 177
最初の細かな誤差が、やがて大きな絶対的なズレになる 179
「リーダーになりたがらなかった人材」をあえてリーダーに 180
自分が採用した人たちが本当に「才能があるのかどうか」試してみた 182
人は「ビジョン」を与えると、そこに向かって前に進む道を見つけ出す性質がある 185
徹底的に「自分の口」でアウトプットすると、 191
能力を制限していたリミッターが外れる一晩語り合うよりも、毎朝続ける1秒の笑顔の方が仲間意識を深める 194
信頼関係はなぜ崩れるのか? 197
「約束」でつながると、人は自分の強い意志で動く 199
正しく考えを共有するには、まず「前提の確認」 203
話すときに「タイトルを先に言う」ことのメリット 205
まったく興味のなさそうなことも、話し方ひとつで興味を持ってらえる 208
個々が自然と「全体最適」を選べるチームづくり 211
必ず、能力は伸びるし、人材は育つ 215
人は「フィードバックされる」と、より良くなろうとする性質がある 218
フィードバックは客観的な“事実のみ”を言うだけでOK 220
人は「自分が正しいと思っている価値観」に支配されている 222
部下の才能を伸ばすのが「中立的なフィードバック」 224
「メタ認知」ができると、四方八方へと能力が伸びていく 228
自分にも自分でフィードバックすれば、劇的に変わる 230
人を「ポジティブな思考」に変える実況中継 233
マイナスの言葉ばかり投げていると自分も疲弊する 236
教育・指導・改善は、実は「悪感情」を生んでいる 237
「指導する側」と「指導される側」はいつも大きくズレている 240
“言葉そのもの”は、あなたの思いを伝える役目を果たしていない 243
言った後に笑顔を見せると、言葉を超えて人の心を掌握できる 245
より効果的なタイプ別フィードバック 250
「個人」よりも「チーム」が絶対的に強い理由 252
成功のために「合理的に選択する」ということ 257
勝つために、何をするか。シンプルに考えること 261

第4章「才能」と「成功者」、「才能」と「天才」
目下の人に上座を勧める 269
「北風と太陽」の“太陽”になれたら、人は心を開いてくれる 271
感性を磨く、とはどういうことなのか 276
速攻で「行動の完コピ」をする西野亮廣 278
「運」は、日頃から努力していた人だけがつかむことができる 282
とんでもないお金持ちのおばあさんに偶然出会って、信頼を得て、遺産をもらう方法 286
超一流の人に会うための、超ストレートな方法 289
どうしても会いたい人がいるのなら、その人の“手間にならない”方法を 291
一流の人に会うことは、才能開花の第一歩 294
成功者は“普通”の人 297
エジソンは「失敗の天才」 302
僕たちが生きる世界は「未来」にある 306
「才能」も「人生」も、気分が9割 308

おわりに 311
文庫版あとがきにかえて。「才能」について2020 316

関連書籍

坪田信貴『才能の正体』

“地アタマ”は幻想。才能の芽は誰にでもある。しかし、ほとんどの人が無駄な努力で才能を殺している―と、「ビリギャル」を偏差値40UP&難関大学に合格させた著者が断言。「できる人の行動を完コピすると爆ノビ」「客観的事実だけをフィードバックすると能力は育つ」など、才能の見つけ方・伸ばし方を実践的に紹介した、能力開発メソッドの決定版。

堀江貴文/田中里奈/鈴木おさむ/坪田信貴/小林麻耶/佐々木圭一『ぴりから 私の福岡物語』

福岡県が大好きな6名の著名人が描く、「福岡」をテーマとした小説集。 上京前の不安な心境、仕事や恋愛の失敗、親と子のぶつかりあい……。 そんなピリッとからい出来事に直面した主人公たちは、福岡ならではのあの場所、あの味、あの人の心にふれ、新たな希望を見つけていく。

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才能の正体

コロナ禍は、学習シーンにも大きく影響し、休校になったり、授業がオンラインになったりした。学校の授業だけでなく、塾も、部活も、コロナ前の体制に戻るには時間がかかりそうだ。いや、そもそも、戻らないのかもしれない。
でも、だからといって、能力を伸ばせなくなったわけではない!
「才能の本質」について知れば、体制に関係なく、能力を伸ばすことはできる。
学年ビリのギャルが1年で偏差値が40も上がり、慶応大学に合格できたのは、坪田先生との出会いのおかげだが、その『ビリギャル』の坪田先生が、「才能とは何か」について余すことなく書いたのが、ベストセラー『才能の正体』。

その『才能の正体』が文庫化されました! 文庫化記念で、本文を公開します。

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坪田信貴

坪田塾塾長。心理学を駆使した学習法により、これまでに1300人以上の子どもたちを「子別指導」、多くの生徒の偏差値を急激に上げてきた。 一方で、起業家としての顔も持つ。また、人材育成、チームビルディングの能力が多くの企業から求められ、マネージャー研修、新人研修を行うほか、現在は吉本興業の社外取締役も勤めるなど、活躍の場は枠にとらわれない。テレビ、ラジオ、講演会でも活躍中。 著書に映画化もされて大ベストセラーとなった『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』のほか、『人間は9タイプ 仕事と対人関係がはかどる人間説明書』『バクノビ 子どもの底力を圧倒的に引き出す339の言葉』『どんな人でも頭が良くなる 世界に一つだけの勉強法』『才能の正体』ほか多数あり 。

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