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原発事故10年目の真実 ~始動した再エネ水素社会

2021.03.10 公開 ポスト

#4

「エネルギー基本計画を白紙」の意味菅直人

福島原発も全国の原発の問題も、もう先延ばししない――。急成長する再エネの今を追いながら、原発全廃炉への道筋をまとめた『原発事故10年目の真実 〜始動した再エネ水素社会』(菅直人著、2/25発売)。日本のエネルギー問題の全貌と、未来への希望が見える本書から、試し読みをお届けします。

原発をやめればすべての恐怖は払拭されるが、そう簡単にはなくせない。そこで、総理在任中にできることとして、原子力安全委員会と原子力安全・保安院の改革に着手し、新しい組織を作る方針を明らかにした。

これには新しい法律が必要なので、数か月では難しい。新組織の原子力規制庁と原子力規制委員会を作るのは、次の野田政権に引き継いで、実現してもらった。

私自身が総理大臣として行なったのは、原発ゼロへの第一歩として「エネルギー基本計画を白紙に戻して見直す」と公の場で断言したことだ。

「エネルギー基本計画」は、2002年6月に制定された「エネルギー政策基本法」に基づいて策定されるもので、2003年10月に最初のものが作られた。基本方針として、〈国がエネルギー政策を進めるにあたり、「安定供給の確保」「環境への適合」及びこれらを十分考慮した上での「市場原理の活用」〉と法律に明記されている。

平成22年6月「エネルギー基本計画」 出典:経済産業省 資源エネルギー庁HP

以後、少なくとも3年に一度は改定することになっており、2007年3月に第1回改定がなされ(第2次計画)、私が総理に就任した直後の2010年6月に第2回改定(第3次計画)が閣議決定された。

2010年の計画では、2030年に向けた目標として、エネルギー自給率(2010年時点で18パーセント)、化石燃料の自主開発比率(2010年は約26パーセント)をそれぞれ倍増させ、自主エネルギー比率約70パーセント(2010年は約38パーセント)を目指す、とした。

さらに、電源構成に占めるゼロ・エミッション電源(原子力及び再生可能エネルギー由来)の比率を約70パーセントとする(2020年には50パーセント以上とする)となっていた。

日本の電源構成別の発電電力量の推移 出典:2020年度版「原子力総合パンフレット」日本原子力文化財団

つまり、2010年の計画では、2020年には原発と再生可能エネルギーとで50パーセントにすることになっていた。ここで言うゼロ・エミッション電源の大半は原発だったので、実質的には原発の新規建設を推進し、2030年までに14基以上を増設するという、いま思えば、とんでもない計画だった。

関連書籍

菅直人『原発事故10年目の真実 始動した再エネ水素社会』

全廃炉しかない――3.11で総理大臣だった私が、180度方針転換して分かったこと、してきたこと。 ◯原発ゼロでもCO2を削減し、全電力をまかなえる ◯営農しながら発電するソーラーシェアリングの威力 ◯事故後に決めた3つの政策(「エネルギー基本計画の白紙」「保安院の廃止」「FIT制度の創設」)がいま効いている ◯発送電分離・独立がなぜ重要なのか ◯廃炉へ促す「原発一時国有化」のメリット ◯フィンランドのオンカロ視察――使用済み核燃料の地層処分――

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原発事故10年目の真実 ~始動した再エネ水素社会

原発ゼロは達成できる——その論拠、全廃炉へのすべて。3.11で総理大臣だった著者がこの10年でしてきたこと、わかったこととは。事故後、新エネルギーへの道を切り開いた重要な3つの政策から、急成長する再エネの今、脱炭素の裏にある再稼働の動き、全廃炉へ向けた問題と解決の全貌がわかる。

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菅直人

1946年山口県宇部市生まれ。衆議院議員、弁理士。70年東京工業大学理学部応用物理学科卒業。社会民主連合結成に参加し、80年衆議院議員選挙に初当選。94年新党さきがけに入党し、96年「自社さ政権」での第1次橋本内閣で厚生大臣に就任。同年、鳩山由紀夫氏らと民主党を結成し、党代表に就任。2010年6月第94代内閣総理大臣に就任(~2011年9月)。著書に、『大臣』(岩波新書)、『東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと』(幻冬舎新書)、『総理とお遍路』(角川新書)などがある。

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