福島原発も全国の原発の問題も、もう先延ばししない――。急成長する再エネの今を追いながら、原発全廃炉への道筋をまとめた『原発事故10年目の真実 〜始動した再エネ水素社会』(菅直人著、2/25発売)。日本のエネルギー問題の全貌と、未来への希望が見える本書から、試し読みをお届けします。
原発をやめればすべての恐怖は払拭されるが、そう簡単にはなくせない。そこで、総理在任中にできることとして、原子力安全委員会と原子力安全・保安院の改革に着手し、新しい組織を作る方針を明らかにした。
これには新しい法律が必要なので、数か月では難しい。新組織の原子力規制庁と原子力規制委員会を作るのは、次の野田政権に引き継いで、実現してもらった。
私自身が総理大臣として行なったのは、原発ゼロへの第一歩として「エネルギー基本計画を白紙に戻して見直す」と公の場で断言したことだ。
「エネルギー基本計画」は、2002年6月に制定された「エネルギー政策基本法」に基づいて策定されるもので、2003年10月に最初のものが作られた。基本方針として、〈国がエネルギー政策を進めるにあたり、「安定供給の確保」「環境への適合」及びこれらを十分考慮した上での「市場原理の活用」〉と法律に明記されている。
以後、少なくとも3年に一度は改定することになっており、2007年3月に第1回改定がなされ(第2次計画)、私が総理に就任した直後の2010年6月に第2回改定(第3次計画)が閣議決定された。
2010年の計画では、2030年に向けた目標として、エネルギー自給率(2010年時点で18パーセント)、化石燃料の自主開発比率(2010年は約26パーセント)をそれぞれ倍増させ、自主エネルギー比率約70パーセント(2010年は約38パーセント)を目指す、とした。
さらに、電源構成に占めるゼロ・エミッション電源(原子力及び再生可能エネルギー由来)の比率を約70パーセントとする(2020年には50パーセント以上とする)となっていた。
つまり、2010年の計画では、2020年には原発と再生可能エネルギーとで50パーセントにすることになっていた。ここで言うゼロ・エミッション電源の大半は原発だったので、実質的には原発の新規建設を推進し、2030年までに14基以上を増設するという、いま思えば、とんでもない計画だった。
原発事故10年目の真実 ~始動した再エネ水素社会
原発ゼロは達成できる——その論拠、全廃炉へのすべて。3.11で総理大臣だった著者がこの10年でしてきたこと、わかったこととは。事故後、新エネルギーへの道を切り開いた重要な3つの政策から、急成長する再エネの今、脱炭素の裏にある再稼働の動き、全廃炉へ向けた問題と解決の全貌がわかる。