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原発事故10年目の真実 ~始動した再エネ水素社会

2021.03.26 公開 ポスト

#14

「革新的エネルギー・環境戦略」菅直人

いまも続く福島と日本各地の原発問題。急成長する再エネの現状を追いながら、原発全廃炉への道筋とその全貌をまとめた『原発事故10年目の真実 〜始動した再エネ水素社会』(菅直人著)から、試し読みをお届けします。

 

私がもしあと2年、総理を続けていたら、「エネルギー基本計画」を改定し、「原発ゼロ」を明確にし、後戻りできなくしていた。

2011年6月の政局で、数か月後の退陣を余儀なくされていたので、そこまでは無理と判断した。そこで6月22日に「エネルギー・環境会議」を立ち上げ、約1年後の2012年8月までに「革新的エネルギー・環境戦略」を策定すると決めた。

この会議を野田政権が引き継いで、2012年9月14日に「革新的エネルギー・環境戦略」が決定した。パブリックコメントを導入して、国民の意見も広く聞いて、策定されたものだ。そのプロセスも内容も画期的なものだったが、その後の安倍政権が実質的に抹殺したので、忘れた方も多いと思う。

「革新的エネルギー・環境戦略」では、今後のエネルギー政策の〈第一の柱〉として、「原発に依存しない社会の一日も早い実現」を明確に掲げ、これを確実に達成するために、三つの原則を定めてあった。これにより、〈第二の柱「グリーンエネルギー革命の実現」を中心に、2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する。その過程において安全性が確認された原発は、これを重要電源として活用する〉と明記されていた。

「2030年代」というのは、最長で2039年まで、2012年からだと27年先なので、私も遅すぎると感じたが、脱原発を求める人々の多くも「即時ゼロ」ではないと批判した。

一方、原発推進派には政府の公式文書に「原発稼働ゼロ」と明記されたことはショックだったはずだ。

関連書籍

菅直人『原発事故10年目の真実 始動した再エネ水素社会』

全廃炉しかない――3.11で総理大臣だった私が、180度方針転換して分かったこと、してきたこと。 ◯原発ゼロでもCO2を削減し、全電力をまかなえる ◯営農しながら発電するソーラーシェアリングの威力 ◯事故後に決めた3つの政策(「エネルギー基本計画の白紙」「保安院の廃止」「FIT制度の創設」)がいま効いている ◯発送電分離・独立がなぜ重要なのか ◯廃炉へ促す「原発一時国有化」のメリット ◯フィンランドのオンカロ視察――使用済み核燃料の地層処分――

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原発事故10年目の真実 ~始動した再エネ水素社会

原発ゼロは達成できる——その論拠、全廃炉へのすべて。3.11で総理大臣だった著者がこの10年でしてきたこと、わかったこととは。事故後、新エネルギーへの道を切り開いた重要な3つの政策から、急成長する再エネの今、脱炭素の裏にある再稼働の動き、全廃炉へ向けた問題と解決の全貌がわかる。

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菅直人

1946年山口県宇部市生まれ。衆議院議員、弁理士。70年東京工業大学理学部応用物理学科卒業。社会民主連合結成に参加し、80年衆議院議員選挙に初当選。94年新党さきがけに入党し、96年「自社さ政権」での第1次橋本内閣で厚生大臣に就任。同年、鳩山由紀夫氏らと民主党を結成し、党代表に就任。2010年6月第94代内閣総理大臣に就任(~2011年9月)。著書に、『大臣』(岩波新書)、『東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと』(幻冬舎新書)、『総理とお遍路』(角川新書)などがある。

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