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原発事故10年目の真実 ~始動した再エネ水素社会

2021.03.31 公開 ポスト

#17

原発ゼロを、自民党と経産省、電力会社が認めないことで弊害が出ている菅直人

いまも続く福島と日本各地の原発問題。急成長する再エネの現状を追いながら、原発全廃炉への道筋とその全貌をまとめた『原発事故10年目の真実 〜始動した再エネ水素社会』(菅直人著)から、試し読みをお届けします。

立地自治体の事情

原発立地自治体が、財政上の理由で原発の継続を求める事情も理解している。しかし、原発には未来がないことは明らかだ。

地方政界で中心にいる60代、70代が生きている間は原発からの固定資産税や電源三法(後述)による補助金や交付金でやっていけるかもしれないが、その先をどうするのか。

全原発の廃止を即時決定し、立地自治体に十分な手当をし、廃炉にしていくべきなのである。ゼロにすると決めれば、立地自治体としても次の振興策を考えるであろう。原発に希望があると思っている限り、自治体も前へ進めない。

原発ゼロを、自民党と経産省、電力会社が認めないことで弊害が出ている

民主党政権が作った国の革新的エネルギー・環境戦略で最長2039年まで、40年ルールの法律でも2049年までという原発ゼロの時限装置はできていた。

さらに、それぞれの原発の再稼働がしにくいよう審査基準も厳格にしたので、再稼働は困難だ。テロ対策の特重施設には数千億円が必要で、採算が合うのか疑問視されている。

各地で原発の運転停止を求める裁判が起こされ、電力会社が敗訴している。

新規着工の計画はまだ残っているが、進展はしていない。

2013年から2015年までの約2年間、現実にすべての原発が止まり、原発ゼロが実現した。その結果、電力が足りなくなり大混乱に陥ることもなく、原発ゼロが夢物語ではないことが実証された。

原発メーカーの東芝、日立は原発事業から撤退しており、残る三菱重工も海外セールスがうまくいっていない。今後、原発を建てようにもメーカーが事実上ないのだ。

立地自治体が再稼働を求めているのは財政のためで、代替の財源があればいい。

放射性廃棄物の最終処分地を決めるためにも、原発ゼロを決めたほうがいい。

このように原発ゼロの結論が出ているのに、経産省・電力会社、そして自民党が認めようとしていないだけなのだ。

政府として原発ゼロを決めないがために、日本は再生可能エネルギーの分野で技術的に他国に後おくれをとるなど、さまざまな弊害が生じているので、これをどうにかしたい。

関連書籍

菅直人『原発事故10年目の真実 始動した再エネ水素社会』

全廃炉しかない――3.11で総理大臣だった私が、180度方針転換して分かったこと、してきたこと。 ◯原発ゼロでもCO2を削減し、全電力をまかなえる ◯営農しながら発電するソーラーシェアリングの威力 ◯事故後に決めた3つの政策(「エネルギー基本計画の白紙」「保安院の廃止」「FIT制度の創設」)がいま効いている ◯発送電分離・独立がなぜ重要なのか ◯廃炉へ促す「原発一時国有化」のメリット ◯フィンランドのオンカロ視察――使用済み核燃料の地層処分――

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原発事故10年目の真実 ~始動した再エネ水素社会

原発ゼロは達成できる——その論拠、全廃炉へのすべて。3.11で総理大臣だった著者がこの10年でしてきたこと、わかったこととは。事故後、新エネルギーへの道を切り開いた重要な3つの政策から、急成長する再エネの今、脱炭素の裏にある再稼働の動き、全廃炉へ向けた問題と解決の全貌がわかる。

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菅直人

1946年山口県宇部市生まれ。衆議院議員、弁理士。70年東京工業大学理学部応用物理学科卒業。社会民主連合結成に参加し、80年衆議院議員選挙に初当選。94年新党さきがけに入党し、96年「自社さ政権」での第1次橋本内閣で厚生大臣に就任。同年、鳩山由紀夫氏らと民主党を結成し、党代表に就任。2010年6月第94代内閣総理大臣に就任(~2011年9月)。著書に、『大臣』(岩波新書)、『東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと』(幻冬舎新書)、『総理とお遍路』(角川新書)などがある。

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