日本経済が低迷し、苦しい生活から抜け出せないのは、取られすぎの「税金」のせい。話題の『税金下げろ、規制をなくせ』(光文社新書)の中で、「大減税」と「規制廃止」で復活した米国経済を喝破した渡瀬裕哉氏による、日本政治と経済を立て直すための集中講座。『税金下げろ、規制をなくせ』第一章から試し読みをお届けします。
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有権者が政治に無関心で、政治家にお任せの立場でいると、政治が腐敗して彼らの利権が作られていくのは万国共通です。
アメリカも、昔は規制だらけで、税金は増える一方でした。しかしアメリカは、その“負の連鎖”を断ち切りました。どうやって?
アメリカ人も、かつては減税を望む有権者が「腐敗をなくしてみなさんのもとにお金を戻します。(≒減税します)」と発言する議員を連邦議会に送っているだけでした。しかし、当選後「あとは先生、よろしくお願いします」とお任せし、その後のメンテナンスを怠っていたのです。つまり今の日本のような状態でした。
それでは、政治家は真面目に有権者のためになど働きません。例えばアメリカでは、公共事業の箇所付けによる利権誘導は、政治家の腐敗の象徴として「イヤーマーク」と呼ばれていますが、やはり堂々と行われていました。利権づくりに国籍や人種の壁はありません。そして、税金は上がっていきました。
しかし、やがて減税を望む有権者の中にこう思った人たちが出てきました。
「こいつら(減税を約束した議員)に騙されているんじゃないか?」
彼らは減税団体を組織し、1980年代後半には「全米税制改革協議会(ATR)」という全国規模の納税者団体へと発展しました。同団体は連邦議会議員の候補者に対して「増税反対」に同意するように求めています。
今ではアメリカ共和党の、連邦議員のほぼ全員、多くの地方議員が、同団体の求めに応じて「すべての増税に反対する」署名にサインしています。有権者が、それを約束させるのです。もし約束を破ったら、減税団体員がネガティブキャンペーンをはります。共和党議員も自党の支持者から強烈な野次や罵倒(ばとう)が飛んでくるのですから、たまったものではありません。当然、次の選挙では不利になります。そのため、なかなか約束は破れません。利権が欲しいのは人の常ですが、議員は選挙に受からなければ元も子もありません。約束を守ったほうがメリットが大きい、そう思えば、議員たちも約束は破りません。
日本の場合、一人ひとりの議員が議会で何を言ったかなど一般の人は知りません。しかし、政治制度の違いもありますが、アメリカでは、連邦議員の投票記録が有権者の団体によって詳細に分析され、点数化されています。減税に賛成した人は高得点を得て、反対した人の得点は下がります。共和党系なら「保守度」という点数(ゼロから100点)がつけられています。それは公表され、一般の人も点数を見れば、裏切り者が誰かすぐにわかってしまいます。
つまり、有権者は、まず、「すべての増税に反対する」と議員に約束をさせる。そして、各議員が本当に反対したか、質問や議決に当たっての投票など議場での行動を評価する。裏切った議員は、次の選挙で落とす(票を入れない)。共和党陣営に関しては、これが徹底されているのです。
民主党陣営にも有権者の団体があり、議員の実際の行動を見て評価し、次回の選挙の参考にするという点は同じです。ただ、民主党は増税したい人たちなので、評価基準は当然、違います。
※次回「1994年の保守革命」5月19日(水)公開
減税が経済を動かす
増税はいらない。税金は下げられる。いま下げないと、日本はこの低迷から永遠に抜け出せない――。米国経済の復活の土台となった「大減税」「2対1ルール」を例に、俊英の政治アナリストが説く日本のための減税論。2021年の衆院選で減税政治家を大量に送り出すために知っておきたいプレ講座。