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宇宙はなぜ美しいのか

2021.12.29 公開 ポスト

衝突・合体して若返る銀河。今この瞬間も新しい星が生まれている村山斉

多くの恒星やガス状の星間物質などの集まりである銀河。太陽系が属する銀河系(天の川銀河)のほかにも宇宙にはたくさんの銀河があり、銀河同士が衝突したり合体したりすることもあります。「美しさ」をキーワードに最新の研究成果をやさしく解説した『宇宙はなぜ美しいのか 究極の「宇宙の法則」を目指して』(村山斉著)から、その美しい姿をお届けします(記事の最後に、村山斉さんの講演会のお知らせがあります)。

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宇宙でも少子高齢化が進んでいる

銀河はたくさんの星の集まりですから、全体としてはかなり強い重力を持っています。近くに別の銀河があれば、お互いに影響を及ぼさずにはいられません。重力で引っ張り合った結果、銀河と銀河が衝突したり合体したりすることもあります。

たとえば、りょうけん座にある「子持ち銀河」[1-23]や、かみのけ座にある「マウス銀河」[1-24]を見ると、それぞれ2つの銀河が衝突寸前の距離まで接近しているのがわかるでしょう。どちらも、いずれは合体してひとつの銀河になると思われます。

[1-23]子持ち銀河
Credit:S. Beckwith (STScI) , the Hubble Heritage Team, (STScI/AURA), ESA, NASA
[1-24]マウス銀河
Credit:Pablo Carlos Budassi

その距離がさらに近づいて、すでに合体を始めた状態だと思われるのが、写真[1-25]の銀河。ハートマークにリボンがついているような可愛らしいルックスで、「触角銀河」と呼ばれています。たしかに、2方向に伸びた尾が昆虫の触角のように見えなくもありません。合体する先頭集団から置いてけぼりにされた星たちが、それぞれこのような尾を形成しているのでしょう。

[1-25]触角銀河
Credit:Bob and Bill Twardy/Adam Block/NOAO/AURA/NSF

その触角銀河の中心部にズームインしたのが、写真[1-26]。青白くキラキラと光る星たちが、実にきれいです。これは、銀河同士の衝突によって生まれた新しい星です。生まれたばかりの星は元気で温度が高いので、青白く光ります。ひとつの銀河がずっとそのままでいると、徐々に高齢化して暗くなっていくのですが、ほかの銀河と衝突すると、それまで静かにしていたガスが激しくかき回されて、新しい星が生まれます。人間も、ひとりで過ごすより多くの人たちと交わったほうが元気になるものですが、銀河もほかと交わることで「若返る」のだといえるでしょう。

[1-26]触角銀河の中心部
Credit:NASA, ESA, and the Hubble Heritage Team (STScI/AURA)

実は、宇宙にもベビーブームがありました。現在宇宙にある星の半数以上は、いまから100億年ほど前に生まれたものです。その後は出生率が下がり、少子高齢化が進んでいます。ですが、こうした銀河の衝突・合体のおかげで、いまだに新しい星が生まれ続けています。

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2022年1月9日13時半から村山斉さんの刊行記念講演会を開催します(会場参加&オンライン)。詳細・お申し込みは幻冬舎大学のページからどうぞ。

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宇宙はなぜ美しいのか

夜空を彩る満天の星や、皆既日食・彗星などの天体ショー。古来より人類は宇宙の美しさに魅せられてきた。しかし宇宙の美しさは、目に見えるところだけにあるのではない。これまで宇宙にまつわる現象は、物理学者が「美しい」と感じる理論によって解明されてきた。その美しさの秘密は「高い対称性」「簡潔さ」「自然な安定感」の3つ。はたして人類永遠の謎である宇宙の成り立ちを説明する「究極の法則」も、美しい理論から導くことができるのか? 宇宙はどこまで美しいのか? 最新の研究成果をやさしくひもとく知的冒険の書。

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村山斉

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(カブリIPMU)教授、カリフォルニア大学バークレー校マックアダムス冠教授。1964年東京都生まれ。91年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。東北大学助手等を経て2000年よりカリフォルニア大学バークレー校教授。02年、西宮湯川記念賞受賞。07年から18年10月までカブリIPMUの初代機構長。専門は素粒子論・宇宙論。世界の科学者と協調して研究を進めるとともに、市民講座などでも積極的に活動。『宇宙は何でできているのか』(幻冬舎新書)、『宇宙は本当にひとつなのか』(ブルーバックス)、『宇宙を創る実験』(編著、集英社新書)、翻訳絵本『そうたいせいりろん for babies』(サンマーク出版)など著書多数。

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