怒りたくないのに、怒ってしまう……怒ると心は乱れ、能力は曇り、体内を有害物質がかけめぐり、それが他人にも伝染する。あらゆる不幸の元凶である「怒り」を、どうしたら手放せるのか? ブッダの教えをやさしくひもとき、怒りの毒にまみれた毎日を清々しい日々に変える仏道入門『もう、怒らない』(小池龍之介・著)から、日々を生きるヒントをお届けします。
ムカつきの原因は「不当に扱われた」と感じること
このような、何の役にも立たない怒りのエネルギーは、なぜどのようにして生まれるのでしょうか。
怒りは「怒鳴る」とか「なじる」などの行動として表れますが、その前段階で、心は「ムカッ」としたり「イラッ」としたりしています。この、不機嫌になるという現象が、怒りの始まりです。
では、私たちは、どんなときに不機嫌になるのでしょうか。
それは面白いことに、他の人間が相手である場合が圧倒的に多いのです。
たとえば暑い日には「暑くてイライラする」人が少なくありません。その暑さが、単に自然現象としてだけでなく、建物のメンテナンス担当者のミスでエアコンが故障したためだと分かると、イライラが増大します。
相手が自然現象の場合は、そのまま受け入れることができても、人が相手の場合、「配慮して違う対応をすることだってできたはずなのに、よりによって私にこんな被害を与えるなんて」と感じてしまうからです。
理不尽なほど大量に仕事を与えられて、ムッとしたときを例に考えてみましょう。不機嫌の理由として想定できるのは、(一)「仕事量が増えるのがしんどい」、(二)「私だけにやらせるなんて、私をないがしろにしているに違いない」のいずれかでしょう。
(一)は「暑いのがつらい」と同じで、それだけなら大きな怒りにはならないはずです。どんなに大量でも、与えられた仕事ではなく、自らの責任で引き受けた仕事であれば、それほどイラつくことなく取り組めるでしょう。
しかし、(二)が加わることで、怒りは激しく増幅します。すなわち、「ほかの人ではなく何で私に」「やって当たり前という頼み方が無礼だ」など、相手が人間の場合、「自分が不当に扱われた」と感じることで、ムッとしたり不機嫌になったりしやすくなるのです。
もう、怒らない
怒りたくないのに、怒ってしまう……。煩悩の仕組みを知れば、悪循環は断ち切れる。
ムカつく、妬む、悔む、悲しい、虚しい……。仏道では、これら負の感情を、すべて「怒り」と考える。怒ると心は乱れ、能力は曇り、体内を有害物質がかけめぐり、それが他人にも伝染する。あらゆる不幸の元凶である「怒り」を、どうしたら手放せるのか? ブッダの教えをやさしくひもとき、怒りの毒にまみれた毎日を清々しい日々に変える仏道入門。