防衛省によると10月4日午前7時22分ごろ、北朝鮮から弾道ミサイル1発が発射。
ミサイルは、青森県の上空を通過しておよそ4600キロ飛行し、東北地方の東およそ3200キロの日本のEEZ=排他的経済水域の外側の太平洋に落下したとみられています。
この飛行距離は、北朝鮮が発射したなかではこれまでで最も長いと報じられています。
北朝鮮のミサイルの技術はどれだけ進んでいるのか? 核武装は可能なのか?
『日本が侵攻される日』(佐藤正久 著)より抜粋してお届けします。
* * *
北朝鮮の弾道ミサイル。本当に当たる? ただの脅しでは?
先日、私は知人から次の質問を受けました。
「北朝鮮がミサイルを撃ってきますけど、あんな貧しい国で、高度な技術はあるんですか? 単なる“こけおどし”ですよね? どうせ当たらないでしょ?」と。
私はこう答えました。
「こけおどしではありませんよ。残念ながら技術は相当高い。当たらなきゃいいんだけど、当たっちゃう。だからミサイル防衛はしっかりやらないといけないんです」
日本もアメリカも「ミサイル防衛」には最大限の努力をしています。しかし万全とは言えません。「防衛するだけ」には限界があるからです。
後で話しますが、1発の弾道ミサイルなら撃ち落とせるでしょう。しかし同時に5発6発きたら、パーフェクトに撃ち落とすのはかなり難しい。すでに日本を射程に入れた150発以上が、いつどこに飛んでくるのかは、わからないのです。
2016年9月5日。北海道の奥尻島沖に3発の短距離弾道ミサイル「スカッドER」が落下しました。その正確性は衝撃的でした。これを機に、政府の認識も変わりました。防衛省の評価は「ほぼ同じ地点に落ちた」というものだったからです。推定飛行距離はおよそ1000キロ。東京から鹿児島県までの距離です。その距離を飛ばし、同じ地点に落とす技術を獲得しました。その瞬間から北朝鮮製のスカッドやノドンは、「差し迫った脅威」になったのです。
奇しくもこの日、中国の杭州ではG20(20か国・地域)の首脳会議が開催されていました。北朝鮮の平壌から杭州までは1100キロほど。首脳会議の会場は射程圏内なのです。北朝鮮の真意はわかりませんが「その場にぶち込めるぞ」という脅しにも取れます。
北朝鮮は巡航ミサイル(飛行機のような翼をもって飛ぶ)や、大陸間弾道ミサイル(ICBM/1万キロの長距離を射程にする)、さらには「低軌道・変則軌道」の短距離ミサイルなどを開発し、飛翔実験を次々と成功させています。
「どうせ当たらない」などと侮ることは、到底できないのです。
北朝鮮の最終目的とは。なぜ核やミサイルの技術をもてたのか?
北朝鮮は、なぜ短期間で、高い技術力を獲得できたのでしょう?
「気合いが違うのだ」と私は思っています。根性論なんて古臭いと思うかもしれませんが、技術の進歩には気合いは欠かせません。
明治の日本を思い出してみましょう。江戸の世では刀を差し、ちょんまげを結っていた人々が、わずか30年で大きな艦船を造り、清やロシアに勝った。その気になればできる訳です。
北朝鮮の科学技術者は命がけです。コンピューターのエリート教育を施される子どももいる。徹底的なスパルタ教育がなされ、優秀な科学者が育っていくのです。そして、彼らの頭脳は兵器開発だけでなく、暗号資産(仮想通貨)やサイバー空間でお金を掠め取るようなことにまで使われていく。貧しい国と侮ってはいけないのです。
その背景にあるのは、やはり焦りです。一刻も早く窮状から脱し、金家による支配体制を不動のものにする。これが真の目的です。
そのためには、国民に向けて自分の力を誇示し続けなければなりません。アメリカや西側諸国にも一目置いてもらいたい。韓国や日本より優位に立たなければ、誰も認めてくれません。それには通常兵器ではない核ミサイル技術を磨くのが一番なのです。
核兵器を保有し、それを敵地に正確に到達させるための技術が、一刻も早く必要だったのです。ゆえに彼らは、不正な手段で外貨を獲得し、国民に貧しい生活を強いてまでミサイル開発に注ぎ込むのです。
そもそも、北朝鮮は日本に対しては「併合された恨み」があり、いい感情は抱いていません。加えて日本には在日米軍もいます。
金体制を磐石にし、世界と肩を並べるために核兵器を保有し、それを世界に示すためにミサイル実験をくり返す。その一番の標的になるのが、米軍が駐留する日本です。この事実を決して軽く考えてはいけません。
* * *
続きは幻冬舎新書『日本が侵攻される日』をご覧ください。
日本が侵攻される日
2027年、日本がウクライナになる――。決して脅しではない。ロシア、中国、北朝鮮という三正面に接した我が国の危険性は、日増しに高まるばかりである。理由は世界地図を「逆さ」にすると一目瞭然だ。ロシアはなぜ北方領土を手放さないのか、中国が尖閣を執拗に欲しがる背景、北朝鮮のミサイル発射の脅威……。AIや衛星が主流の現代の戦争においては、島国は安全という理屈も通用しない。元自衛官で「戦場を知る政治家」である著者が指摘する日本防衛の落とし穴。もう無関心ではいられない。