1. Home
  2. 生き方
  3. 往復書簡 限界から始まる
  4. 「何回も泣いた」上野千鶴子・鈴木涼美の往...

往復書簡 限界から始まる

2022.12.29 公開 ポスト

「何回も泣いた」上野千鶴子・鈴木涼美の往復書簡本が中国でブックオブザイヤー1位に選ばれた理由幻冬舎編集部

上野千鶴子さんと鈴木涼美さんによる1年間の往復書簡をまとめた『往復書簡 限界から始まる』の簡体字版が今年9月中国で発売され、このたび中国の映画や書籍を評価する大手SNSサイト「豆瓣(ドウバン)」のブックオブザイヤー2022の1位に選ばれました。
 

なぜ中国の作家をおさえるほどに評価されているのか? 簡体字版の発行元「新経典文化」の担当編集者の歐陽鈺芳(おうよう・ぎょくほう)さんにその背景を聞きました。以下は、歐陽さんより届いた回答です。

中国で関心が高まるジェンダー問題の波に乗った

#metoo運動や性暴力に反対する抗議の拡がりと共に、今、中国ではジェンダー問題が最も流行のトピックの一つとなっています。書籍市場でもフェミニズムに関する書籍が爆発的に出版されており、『往復書簡 限界から始まる』はまさにこの波に乗り合わせたと言えます。その多くのフェミニズム関連の出版物のなかで、とりわけ本書が成功した一番の理由は、その優れたコンテンツです。

まず、『往復書簡 限界から始まる』は、現代女性の不安や悩みにぴったり符合します。
今の中国の女性は、過去の束縛がある程度解かれ、母親世代に比べると、より多くの選択肢を持つようになりました。しかしその一方で、「娘」「妻」「母」などの社会や家族の役割から解放されたとしたら、個人としての「私」は一体誰なのか? このような悩みや葛藤が浮上することになりました。

本書で上野さんと鈴木さんの対話は、「新しい時代に、女性がどのような自己のアイデンティティ(あるいは女性自己の承認欲求)を獲得するのか」という疑問について、新しい視点と考えを提供してくださいました。

次に、「往復書簡」という形式が効いて、書籍での対話を通じて、上野さんと鈴木さんのこれまで明かされなかった一面を知ることができます。中国の読者は、鈴木さんの勇気と誠実さに感動して、上野さんの優しさと厳しさに涙しました。

こうしたコンテンツと形式の絶妙な組み合わせによって、非常に楽しい読書体験を読者にもたらすことができています。中国のSNSで人気な言葉を使うと、この本を読む感じは「心霊的なマッサージを受ける」ようです。

また、中国版が出版されたばかりのときに、鈴木さんが芥川賞にノミネートされたニュースが中国でも流れ、鈴木さんが共著作者の一人としての『往復書簡』は読者の注目を集めました。

発行して3ヵ月の間に、上野さんと鈴木さんが複数の中国メディアの取材に積極的に協力してくださったのも多くの読者に届いた理由のひとつです。各メディアの影響力と原稿自体の質の高さがあいまって、高い評価を得ることになりました。

さらに、小社のプロモーションとともに、ウィーチャット(WeChat)、ウェイボー(weibo)、小紅書、豆瓣、ビリビリ、ポッドキャストなどのプラットフォームでの印象深い切り口の感想を通じて、恋愛や自己成長に関心のある若い女性を引き付け、フェミニズムに関心を持っている本来のコア層(=すでにジェンダー意識のある読者)を突破しました。

ジェンダーに関心のない層にも届き始めた

読者は主に女性です。なかでも、大学生やより発展した地域のホワイトカラー労働者(サラリーマン)がメインになります。

上野さんはこれまで中国で数多くの本を出版されており、読者層は以上とだいたい重なります。しかし、今回の『往復書簡 限界から始まる』の読者層は、「上野千鶴子という名前を聞いたことがあったけど、上野の本を読むつもりはなかった」人や、「上野をまったく知らなかった」という人もいます。

ジェンダーの議論をあまり気にしない読者のところまで届きはじめています。

「何回も泣いた」「上野先生に2100年まで長生きしてほしい」

読者の感想は主に以下のキーワードにまとめることができます。

①悩みに効く、啓発性がある

「太ももを叩くほど素晴らしい!上野先生は、私の頭の中の混乱や曖昧さを鋭く見抜き、一瞬で霧を晴らしてくれました。――豆瓣ユーザー@猫又

メモを取らない私が、メモを取るためのペンを取り出させた本。鈴木涼美さんの素直に感謝、フェミニズムの光である上野千鶴子を得た世界に感謝します。――豆瓣ユーザー@李晩晩

② 泣くほど感動した

何回も泣いた…—――豆瓣ユーザー@照相来月明

毎年、上野千鶴子さんの本を1冊、2冊と読めることが、ますます幸せなことだと感じています。私の人生には、具体的な痛みを和らげてくれるような長老はいないので、読むたびに涙が出ます。上野先生に2100年まで長生きしてほしい。それまで、どうぞお健やかに。――豆瓣ユーザー@遠方

涙が出ました。二人とも厳しく自分を見つめて反省していました。その真摯な姿に感動しました。――豆瓣ユーザー@Mikkan甜橙樹

*   *   *

本が持つ国を越える力を実感する出来事です。中国の女性をこれほどまでに魅了する『往復書簡 限界から始まる』をぜひお手に取ってみてください。

関連書籍

上野千鶴子/鈴木涼美/伊藤比呂美『限界から始まる、人生の紆余曲折について』

「死ぬ男を看取るって、本当に面白かった。ねえ、上野さん?」(伊藤) 「私も看取ったけど、面白かったとは言えないわね」(上野) 「結婚をめぐる葛藤はほとんどありませんでした」(鈴木) 単行本『往復書簡 限界から始まる』の文庫化を記念した、著者の上野千鶴子さん、鈴木涼美さん、文庫版の解説を担当した伊藤比呂美さんによる鼎談イベント「限界から始まる、人生の紆余曲折について」。因縁の深い3人が鋭く突っ込み、笑い、称えあいながら、それぞれの「想定外の人生」を語り合いました。上野千鶴子の「結婚」に安堵した人たち、鈴木涼美が「産む女」になった理由、伊藤比呂美の「看取り」の快感――。愛と勇気と希望に満ちた2時間のトークを電子書籍化。

上野千鶴子/鈴木涼美『往復書簡 限界から始まる』

「上野さんはなぜ、男に絶望せずにいられるのですか?」「しょせん男なんてと言う気はありません」。女の新しい道を作った稀代のフェミニストと、その道で女の自由を満喫した気鋭の作家。「女の身体は資本か、負債か」「娘を幸せにするのは知的な母か、愚かな母か」――。自らの迷いを赤裸々に明かしながら人生に新たな視点と光をもたらす書簡集。

上野千鶴子/宮台真司/鈴木涼美『「制服少女たちのその後」を語る』

2021年8月26日に宮台真司さんをゲストにお迎えして開催した、『往復書簡 限界から始まる』(上野千鶴子さん×鈴木涼美さん著)刊行記念トークイベントを電子書籍化。宮台さんが援交少女たちへの責任を感じるに至った変容、女子高生という記号に欲情し、いまなお自己愛にとらわれたままの男性への上野さんの厳しい指摘、制服少女だったときの気持ちを否定しない鈴木さん。性を正しく使い、愛へと向かうことはいかに可能か――?  時代の証言者たちが集った緊張感みなぎる2時間をテキスト化してお届けいたします。

{ この記事をシェアする }

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP