コロナ禍で早期退職の募集が急増している昨今。業績良好な企業の「黒字リストラ」も少なくないといいます。長年、尽くした会社から、もし突然「戦力外通告」を突きつけられたら……あなたならどうしますか? 小林祐児さんの『早期退職時代のサバイバル術』は、そんな大リストラ時代を生き残るための術がつまった一冊。会社にとどまる人も、転職する人も、懐にしておきたい本書から、一部をご紹介します。
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「セルフ・アウェアネス」を取り戻す
中高年の転職をよりよいものにするために、最も大きなポイントを一つ挙げるとするならば、それは「4ない」問題の中の「話さない」問題です。
本書では、中高年になると、他者との交流全般が量的にも質的にも低下してしまうことをすでに見てきました。他者との交流も対話の機会も減り、自己開示しようとしないというコミュニケーションの薄弱化は、セルフ・アウェアネスを向上させる機会を奪うと述べましたが、それが転職にも大きな影響を与えます。
セルフ・アウェアネスは、中高年で全体的に下がっていく傾向が見られました。また、「内面的」「外面的」の区別で見れば、中高年は特に「外面的自己認識」に偏っていくのです。
人は年齢を重ねて「自己を確立」していくにつれ、自分自身のことを改めて見つめようとはしなくなります。しかしそれでいて、周囲の人と比較したときに地位や出世の格差が目にとまるようになり、自分の市場価値が低下していないだろうか、などの危惧を抱くようになります。
しかし、「自分が何を実現したいのか」「どんなことで嬉しいと感じるのか」といった内面的なセルフ・アウェアネスは満足のいく転職のためにやはり必要なことです。
「話さない」問題が重要であるのは、こうしたセルフ・アウェアネスを高めるような機会を奪ってしまうからです。
他者との交流をもっと増やそう
中高年の「話さない」傾向は、転職サービスのカウンセリングやアドバイスを受けるときにも現れます。「いいから自分が行ける求人を出してくれ」「なぜ初対面の人間に自分の本音を話さなければいけないのだ」という態度で対話の場に現れる人もしばしば見られます。
特に、今の会社に強い不満があったり、早期退職募集によって会社都合で転職せざるを得ない状況に追い込まれた人は、カウンセラーに強い態度をとったり、必要な情報を十分に話そうとしません。
しかし、そもそも転職相談の相手は、求人情報を引き出すだけの検索窓でも、「自分は何をすればいいのか」という正解を与えてくれる神様でもありません。
それよりも、その人たちとの対話のキャッチボールを通じて自分自身のことを言語化し、客観化し、セルフ・アウェアネスを高めるための機会を与えてくれる相手として見るべきです。
まず転職に悩むミドルにとって必要なことは、「話さない」問題について、意識して乗り越えることです。相談相手とはどんどん積極的に自己開示していく態度で臨みたいものです。
中高年の多くは、カウンセリング全般に対して消極的です。「精神的に問題がある人が受けるもの」といった偏見を持っている人もいます。中高年になるほど、転職相談も含めて自分の仕事を他者に相談する割合は減っていきます。
「話す」ということを通じて、内面的な自己認識と外面的な自己認識を共に高めることによって、「何が自分にとって大事なことなのか」「どんな転職を目指したいのか」という判断をより正確なものにすることができるはずです。
そのために必要なことは、一人で思い悩むことではありません。少しでも他者に対して自己を開き、不安や弱み、苦悩などを含めて開示していくことからスタートすること。一見遠回りのようですが、これこそがよりよい中高年転職のための近道だと思います。
早期退職時代のサバイバル術
コロナ禍で早期退職の募集が急増している昨今。業績良好な企業の「黒字リストラ」も少なくないといいます。長年、尽くした会社から、もし突然「戦力外通告」を突きつけられたら……あなたならどうしますか? 小林祐児さんの『早期退職時代のサバイバル術』は、そんな大リストラ時代を生き残るための術がつまった一冊。会社にとどまる人も、転職する人も、懐にしておきたい本書から、一部をご紹介します。