子どもと親しくなり、信頼関係を築いた上で、その信頼を巧みに利用して性的な接触をする「グルーミング」。見ず知らずの相手を狙う痴漢や盗撮などとは大きく異なります。性犯罪者治療の専門家、斉藤章佳さんがこの性犯罪の特徴やそれを取り巻く問題について解説した幻冬舎新書『子どもへの性加害』より、一部を抜粋してご紹介します。
※性被害・性加害の具体的な描写があります
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Twitterの裏アカウントで男子中学生を選り好み
現在服役中のB(40代男性)のグルーミングのターゲットは男子中学生ばかりだった。彼がグルーミングを行うのは主にTwitterで、個人が特定されない「裏アカウント」で性的な発言をしたり、性器の画像をアップしている未成年の投稿者を選り好み、言葉巧みに接近していった。ダイレクトメッセージでのやりとりを経て、実際に顔を合わせると、バリアフリートイレで肛門性交に及ぶのも彼の常套手段だった。彼によれば、性加害が終わった後には、毎回数千円の現金を渡していたという。
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グルーミングの被害にあうのは女児だけではありません。よく「うちの子は男の子だから大丈夫」と語る親御さんもいるのですが、残念ながら男児の被害も多いことを述べておかなければなりません。
加害者らは異口同音に、小学校1~3年生ぐらいまでの低学年の男児がもっともグルーミングしやすいターゲットだと述べます。この年齢なら、「何をされたのかわからないだろうから」「訴えなさそうだから」と言うのです。また、小学校低学年の時点では、男児も女児も体つきに大きな差はないため、「女児の代わりに男児を触る」と言う加害者もいます。
警察庁のデータによれば、2022年に特定された児童ポルノ被害児童1487人(総数)のうち男児が206人、女児が1281人でした。およそ14%が男児だったわけです。この「男児も性被害にあう」という事実はいまも周知されているとは言いがたい状況ですので、より広く注意喚起されるべきでしょう。
なお、政府はジャニーズ事務所の性加害問題を背景に、2023年9月に「男性のための/男の子と保護者のための性暴力被害者ホットライン」を初めて開設しています。期間限定ながら、男性や男児の性被害に向き合う気運の高まりも見受けられます。
ちなみにこの加害者Bは、「行為後に金銭を受け取っているのだから、彼ら(被害男児)もビジネスだった」「自分の行為は性加害ではない」と終始一貫して主張していました。Bが自らの認知の歪みに気づき、加害行為をやめ続けられるようになるまでには、かなり長い年月がかかると思われます。
「ターゲットにしやすい」から男児を狙う
法務省の「性犯罪に関する総合的研究」では、強制わいせつの被害者数の20年間(1995~2014年)の推移が性別及び年齢層別にグラフで示されています。2014年に強制わいせつの被害にあった男性は214人、女性は7186人と、圧倒的に女性のほうが多いですが、男性だけで見ると、0~12歳の被害者が半数以上を占めています。
加害者の目線でいえば、「自分が性的に見る対象が男性だから、加害行為の対象も男児になる」という、いわば性的指向(セクシュアリティ)だけが理由ではありません。なかには、「女児よりも男児のほうが声を上げにくいから狙いやすい」という理由で男児をターゲットにする者もいます。一般的に、女児よりも男児のほうが警戒心が薄いことや、男児のほうがズボンを脱いでしまいやすいことなどといった傾向を加害者が熟知しているからです。
加害者はどうすれば自分が逮捕されずに問題行動を続けられるのか、そのためにはどんな選択肢がもっとも正しいのかを熟知しています。
たとえば面識のない間柄のグルーミングにおいて、女児がトイレに入る際、その後をついて行くと、おそらく周囲の人からも不審に思われ、場合によっては通報されてしまいます。しかし、自分が男性で、グルーミングのターゲットが男児なら、同じタイミングでトイレに入ることも容易でしょう。そこで加害者は「ちょっと来てごらん」などと言葉巧みに男児を個室に誘い込み、性器を触ったり、口淫させたり、半裸の下半身の写真を撮ったりといった加害行為に及びます。
このように、「男児のほうが物理的にターゲットにしやすい」という理由から男児を狙う加害者が実は多いことは、あまり知られていないように思います。
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性的グルーミングについて、より詳しく知りたい方は幻冬舎新書『子どもへの性加害』をお求めください。
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※性被害・性加害の具体的な描写があります