妊娠・出産、セックス、美容・健康。女性が日々を心地よく過ごすためには、性器についての知識とケアは欠かせません。しかし、いくら親しい間柄でも、人に相談するのはためらってしまう……。そんなあなたに手にとってもらいたいのが、森田敦子さんの『感じるところ』。女性器の役割から、心との関係、毎日のケア、婦人科とのつき合い方まで、知りたかったことがぎゅっと凝縮されています。その中身を一部、ご紹介しましょう。
頼れる婦人科医の見つけ方
私が敬愛するフランスのセクソロジーの権威、ベランジェール・アルナール先生は、今でも臨床の現場で婦人科医として患者さんに接しています。この33年間、毎年平均で7000人の患者さんが世界中からアルナール先生のもとに訪れています。
アルナール先生の専門は乳がん、子宮がん、子宮頸がんなど。けれどもセクソロジーにおける悩みで来られる女性たちも大変多いのです。
アルナール先生が診察をする際に心がけるのは対話をすること。患者さんのセクシャリティについて話を聞くときは、必ず自分のセクシャリティの話をするそうです。そうするとお互いに信頼関係が築けるため、なんでも話せる存在になると語ります。
出産後セックスレスになってしまったカップル。
セックスに痛みを感じるようになってしまった女性。
不感症になってしまった女性。
性欲が減退し、パートナーの要求に応じることが苦痛になってしまった女性……。
非常にデリケートな事情が多く、まして人に簡単に聞いてもらえないような話でもあります。
そんなことを話してもらうためには、お互いの信頼関係に尽きると感じます。
日本では婦人科というと“女性疾患の治療に行くところ”というイメージが大きく、産婦人科であればどうしても妊娠、出産で行くところと考えてしまいます。
それ以外の腟まわりの悩みであると、足が遠のいてしまうのが通常のようです。
しかし私は、婦人科には女性の体を専門に診て、一生を通じて女性の体を守ってくれるところであってほしいと思います。
アルナール先生ほどではなくともきちんと話を聞いてくれる婦人科医は日本にもいます。日本ではまだまだセクソロジーという学問が広域に知られているわけではありませんが、丁寧にアドバイスをしてくれる先生もいます。
たとえば、私がとてもお世話になっている産婦人科医の松峯寿美先生は、患者さんと接するときに患者さんを緊張させないよう気をつけているとおっしゃっていました。松峯先生は「腟は口の中と同じで、人にやたらと見せる場所ではないけれど大切な場所。だから気軽に婦人科に来てほしい」と語ります。
女性器関連の大きな病気では、初期症状がないものが多いそうです。なので、月経やおりものの状態が少しでもいつもと違ったり、かゆみや痛みがあったりしたら迷わず婦人科に相談に行ってください。
プライベートな話で恥ずかしいという気持ちはよく理解できます。でもその気持ちを少し横に置いてみてください。
男性のドクターでも問題はありません。女性のドクターだからいいというわけではありませんし、プロの先生ですから恥ずかしがる必要はありません。
どうしても話しづらいようでしたら、初めは女性のドクターを探してみましょう。
自身の一生を通じてお付き合いできるドクターを探すわけですから、時にはがっかりすることもあるかもしれません。
そんなことに負けないで、信頼でき、些細なことでも親身になってくれる“マイ婦人科医”と呼べる人を持てたら、人生が変わってくること間違いなしです。
病院に行くかどうか、迷ったとき
信頼できる“マイ婦人科医”を見つけても、どんなときに病院に行けばいいのかわからなければ、意味がありません。女性特有の病気と症状を、ある程度知っておきましょう。
女性特有の症状として最初に思い浮かぶのは、不正出血ではないでしょうか。生理でもないのに出血をするとびっくりしてしまいますよね。
出血の仕方にもいろいろな種類があります。少しショーツにつく程度のものから生理のように出血するもの、また、血の固まりが出てくる場合もあります。色や量によって、いくつかの疾患が疑われます。
セックスの後の出血は接触による出血がほとんどです。
それ以外にも、腟炎、腟部びらん、子宮頸管ポリープ、子宮内膜ポリープ、子宮がんの初期……、ホルモンの作用が上手くいっていないために起こる機能性出血というものもあります。
かかりつけ医がいれば、すぐに診てもらい、原因を聞くことができるので安心できると思います。
おりものでも腟の状態を推し測ることができます。女性器の各部から分泌液や浸出液が出ているため、おりものは誰でもあります。正常なおりものでは、腟の内側を潤す程度のわずかな量で、弱酸性なので少し甘酸っぱいニオイがします。
中には異常を知らせるおりものがあります。白いクリームのような状態のものが多く出たり、悪臭があったり、カッテージチーズのようなおりものが出てきたときなどは、カンジダ症が疑われます。
かゆみを伴っているときも同様。膿が出ているときも、すぐに病院で診てもらうことをおすすめします。
下腹部の痛みや、ふくらみ、しこりにも気を配ってチェックしましょう。
痛みやふくらみの中には、鼓腹といってお腹をさすってあげてお腹のガスを抜いたり、排便で治ったりするものもあります。そうでないときは病院で相談してみてください。
生理の異常、カンジダ外陰炎、トリコモナス腟炎、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮がんなど、女性特有の病気には様々なものがあります。
痛みや状態が通常ではないと感じたときはそのままにしないで、やはり病院で診ていただくことをおすすめします。
腟まわりのことは誰でも不安です。信頼している婦人科の先生から「大丈夫だよ!」と一言いただけたら、スーッと気持ちが楽になります。
自分でセルフケアすることも大切ですが、何か異常を感じたときは、勇気を持って診てもらいましょうね。
* * *
この続きは書籍『感じるところ』をお求めください。
感じるところ
妊娠・出産、セックス、美容・健康。女性が日々を心地よく過ごすためには、性器についての知識とケアは欠かせません。しかし、いくら親しい間柄でも、人に相談するのはためらってしまう……。そんなあなたに手にとってもらいたいのが、森田敦子さんの『感じるところ』。女性器の役割から、心との関係、毎日のケア、婦人科とのつき合い方まで、知りたかったことがぎゅっと凝縮されています。その中身を一部、ご紹介しましょう。