精神科医・樺沢紫苑さんの、記念すべき50冊目の著書『19歳までに手に入れる7つの武器』は、アフターコロナとAI時代に対応した、最新版にして決定版の「“人生”というゲームの完全攻略本」!
発売直後から「社会人になる前に読みたかった!」との声も続々届いています。
本連載では、書籍から抜粋して、7つの武器をご紹介します。実は、何歳からでも遅くはありません。7つの武器を手に入れれば、人生は必ずうまくいく。あなたに足りない武器が何か、ぜひ確認してください。
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学校でのスマホ使用禁止は世界のスタンダード
国連の教育科学文化機関のユネスコは2023年7月、「生徒のスマートフォンやコンピューターの過度な使用は、成績に悪影響をもたらし、教室や家庭での学習活動を妨げる可能性がある。長時間のデバイスの使用が『好奇心の低下や不安感の高まり』などのメンタルヘルスの悪化につながる」と報告書をまとめ、学校でのスマートフォンの使用を禁止するよう呼びかけました。
報告書によると、すでに世界の4カ国に1カ国が学校での携帯電話、スマホの使用を禁止、制限する法律や政策を実施しているそうです。
実際、アメリカの7割以上の州、イギリス、フランス、オランダ、スウェーデンなどで、学校へのスマホの持ち込み、使用禁止などの法律がすでに施行されています。「法律で禁止する」ということは、思春期の子供たちの成長、発達、成績に悪影響を与える十分な科学的エビデンスが蓄積されたことを示しています。
その危険性を知らないのは、日本人だけです。その対策で、世界に大きくおくれをとっています。十代に限らず、そもそも大人ですら「スマホの危険性」について知らない人が大部分。せめて、この本を手に取った「あなた」だけでも、「スマホが脳を破壊する」という世界の常識を知ってほしいのです。
スマホ、ゲームのしすぎは「病気」
2022年、精神科の診断基準に新しい病名が追記されました。
それが「ゲーム障害」です。簡単に言えば、
- ゲームをしたい衝動がコントロールできなくなった状態
- 過剰なゲームへののめり込みによって、社会活動に支障をきたす状態
厚生労働省の調査では、「ネット依存」が疑われる人は、成人で推定約421万人、中高生で約93万人もいて、その90%がゲーム障害だとされています。
全国の中高校生の数は約600万人ですから、実に6.5人に1人がネット依存なのです。
高校生女子の場合はチャットや友人とのコミュニケーション、男子の場合はスマホ(あるいはゲーム機)を使ったゲームに夢中になる傾向があります。
スマホもゲームも、時間を決めて、制限して、適度に楽しむのはかまいません。いつの間にか、コントロールを失い、制限なくのめり込んでしまうことが最大の問題です。
ドーパミンの大暴走。誰でも依存症になる
しかし、スマホやゲームの利用しすぎの状態になっていたとしても、「あなたの意思が弱いからだ!」と責められるものでもありません。
なぜならば、十代の皆さんは、誰でも依存症になりやすいからです。
依存症は、「報酬系」と呼ばれるドーパミン神経系の暴走です。
楽しいことをすると、三大幸福物質の一つであるドーパミンが分泌されます。心臓がドキドキするような高揚感とともに、幸福感がわいてきます。ここまではいいのですが、続いて、「もっと欲しい」という、幸福感へのさらなる欲求が生まれるのです。
これが暴走の始まり。「もっと欲しい」は「もっともっと欲しい」に加速していきます。
一方で、人間の脳には、この「もっと欲しい」「もっとやりたい」というドーパミンの暴走を防ぐためのブレーキが備わっています。これを「抑制系」と言います。
しかし十代の脳の成長はまだ不完全です。主に前頭前野が制御するこの抑制系の神経も未発達です。
つまりすべての十代が、依存症に対して、十分にブレーキが利かないのです。
デパートに行くと小さな子供が「おもちゃ買って! おもちゃ買って!」と泣き叫んで駄々をこねている姿を見かけます。あれは抑制系が未発達で、「我慢する」「コントロールする」能力が低いために起こしている行動です。
そこまでひどくはないにしても、十代が「もっと欲しい」欲求や欲望を暴走させないためにはどうすればいいのか?
それは、「小さなブレーキ」を踏むことです。
「スマホ・ゲームは3時間以下」(利用時間の制限)、「夜10時以降は使わない」(スマホ門限の設定)など、ルールや制限を守ることで、ドーパミンの暴走、つまり依存症を防ぐことができます。
ドーパミンは「もっと、もっと」という欲求の物質。あなたにスマホ、ゲームを「もっとやりたい!」という衝動が出ていたら、もはやドーパミンは暴走を始めています。
アルコール依存症で人生を棒に振った人の話や、違法薬物の使用で逮捕された芸能人のニュースを聞いて、自分には全く関係ないことと思っているでしょう。しかし、アルコール依存症も薬物依存症も、スマホ依存症、ゲーム障害も、ドーパミンの暴走という点で、脳の中で起きていることは全く同じです。
スマホ依存症、ゲーム障害に歯止めをかけられない人は、将来、アルコールや薬物など、なにかしらの重大な依存症になる可能性が高いと言わざるを得ません。ですから、ルールや制限を自分に課すこと、つまりコントロール力を身につけないと人生を台無しにしてしまう可能性が高くなります。
まずは3時間以内という制限の中で、スマホを使ってほしい。コントロール力が、まだ不完全な脳のブレーキの代わりとして働いてくれるのです。
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本書ではスマホ使用をいかに自分でコントロールするか、その重要性について詳細に解説しています。耳の痛い話かもしれませんが、ぜひ書籍で確認してください。
19歳までに手に入れる7つの武器
精神科医・樺沢紫苑さんの、記念すべき50冊目の著書『19歳までに手に入れる7つの武器』は、アフターコロナとAI時代に対応した、最新版にして決定版の「“人生”というゲームの完全攻略本」!
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本連載では、書籍から抜粋して、7つの武器をご紹介します。実は、何歳からでも遅くはありません。7つの武器を磨けば、人生は必ずうまくいく。
あなたに足りない武器が何か、ぜひ確認してください。