生成AIの台頭で、勝ち組から底辺に転落していく人が続出する、とはいったいどういうことか?
我が子の未来のためにまず大人ができることは、現実を見つめること。
富永雄輔さんの最新刊『AIに潰されない「頭のいい子」の育て方』より、AIによる激変具合について。
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加速度的に、AIが人間の仕事を奪っている
改めて私が言うまでもなく、今後はAIに取って代わられ、職を失う人が続出します。
実際に、スーパーのレジはどんどんセルフタイプに変わっています。かつては「レジ作業の速いパートさん」は店にとって財産だったものの、必要がなくなれば一瞬にしてクビを切られてしまうわけです。
しかも、そうした変化は今後、すごいスピードで進んでいきます。今のところはまだ、買い手側に不正がないかなどをチェックしたり、操作をサポートしたりする人員が配置されていますが、それもすぐに不要になるでしょう。
飲食店の注文や配膳はもちろんのこと、たとえば「○○の窓口」「○○インフォメーションセンター」のような、「誰かが対応してくれるだろう」はずの場所も、待っているのはロボットであることが珍しくなくなりました。
ファミレスでは、注文はタッチパネルで行い、ロボットが料理を運んでいます。アメリカ・サンフランシスコでは、2023年に完全自動運転の無人タクシーの運用が始まりましたし、日本でも2026年には無人タクシーのサービスを始めることを、ホンダと米ゼネラルモーターズ社がついに発表しました。
また、人手不足が深刻化している建設現場でも、AIの活用が進んでいます。
ある日のテレビニュースの画面には、ブルドーザーやクレーン車などが行き来し、山を切り崩したり土砂を運んだりといった、よくある工事現場が映し出されていました。しかし、よく見ると、どの車両にも人が乗っていません。それらは、現場から遥かに離れたところにある操作ルームで動かされているのです。
取材されていた操作スタッフは女性で、子育てや家事の合間を縫い、都合のいい数時間を選び働いている人もいるとのこと。服装もラフで、若い女性スタッフの足下はキャラクターが描かれたサンダル履きという軽装でした。
この方法なら、リアルな建設現場で起きがちな事故が彼女たちを襲うことはありませんから、ヘルメットすら必要ないわけです。
当然、雇用主にとっても従業員が怪我をするというリスクが減るし、遠く離れた工事現場に行く必要がないので働き手も見つけやすく、よりチャレンジングなビジネスを展開しやすくなるでしょう。
一方、旧態依然としたスタンスでいる働き手は淘汰されます。たしかに、今この瞬間に限って言えば、建築業界は働き手不足です。だから、ある程度の経験を持つ人は重用されるでしょう。しかし、それもいずれ終わります。
企業が求めている「働き手」は「人」とは限りません。「ロボット」でもいいのです。
むしろ、AI化を進めた企業にとって、古い人は邪魔になるでしょう。
5年後に、2割の職業は消えている!?
このように、私たちの生活に即した場所に次々と新しいシステムが入り込み、「昨日までいた人」が消えてしまったケースをあちこちで目にするようになります。
リアルに、AIは人間の仕事を奪うのです。
さて、ここまではみなさんも充分に理解しているだろう話です。問題は、実はその理解ではあまりにも浅く、あまりにも遅いということなのです。
先に挙げたような事例は、私たちに起きている変化のごくごく表層的な部分を示しているに過ぎません。従来のAIが、与えられたデータを大量に学習することによって、これまで人がやっていた仕事ができるようになっただけ。言ってみれば、「優秀な作業員としてのAI」が誕生しただけのことです。しかし、すでにいろいろな識者も述べているように、チャットGPTに代表される生成AIの出現で、多くの「仕事そのもの」が消えていきます。私は、5年後には今ある仕事の2割はなくなっていると踏んでいます。
しかも、なくなる仕事は、ホワイトカラーに集中します。生成AIは、単純に言われたことをやるのではなく、自ら計画し、さまざまなコンテンツを生み出すことができます。つまり、「自分の仕事は『考えること』だからロボットには代替できない」と思っていた人たちの仕事は、優秀な生成AIに簡単に取って代わられるのです。
スマホで不要になったのは「モノ」、AIで不要になるのは「ヒト」
私が社会人になった当時、多くの人がいわゆるガラケーと呼ばれるタイプの携帯電話を使っていました。その頃はすでに電波状況も良くなっており、私もどれだけその存在に助けられたかわかりません。
そして、米アップル社が開発したiPhoneを、ソフトバンクが導入したのが2008年。翌2009年には、NTTドコモがアンドロイド搭載のスマホを売り出しました。しかし、ガラケーと比較して値段も高く、ポケットに入れて持ち運ぶにはずっしり重いスマホは、評価がイマイチでした。
私自身、「パソコンもあるのに、誰がこんなもの使うんだよ」と思っていた一人です。それが今や、スマホなしの生活は考えられません。
現在、10代から20代の約97パーセントはスマホを所有しています。パソコンに触ったことすらない人でも、高齢者でさえもスマホは持っています。今では自治体も、スマホを持っていることを前提とした手続きをしているほどで、まさに、あっという間に浸透しました。
私は、同様のことがチャットGPTについても起こると思っています。今はまだ「よくわからない」だの「なんだか怖い」だのと様子見している人もいるようですが、そうした人々も否応なく利用するようになり、すぐに「チャットGPTがない世界なんて考えられない」と言うようになるでしょう。
もちろん、チャットGPTで終わりではありません。現時点では想像すらできない機能を、生成AIは続々と可能にしていくでしょう。「そんなのあり得ない」ということが、数年以内に誰にとっても「ないなんて考えられない」になります。今の私たちがもうスマホのない生活なんて想像できないのと同じです。私たちはすでに、AIなくして生きられない世界に足を踏み入れているのです。
それが、なにを意味するのでしょうか。
スマホの普及によって必要がなくなったものはたくさんありますね。公衆電話はもちろん、さまざまなポイントカードや紙の証明書類も減ってきました。電子マネーが当たり前になれば、近いうちに財布もなくなるでしょう。実際、もう長財布のような大きな財布を使わない人が増えています。
それらの製造に携わってきた人たちにとっては困ったことですが、スマホのおかげで格段に便利になったと感じている人が大半でしょう。すなわち、私たちはスマホを歓迎し、使いこなしているわけです。
ただし、AIに関しては、そう単純にはいきません。AIが発展していくことによって不要となるのは「モノ」ではなく、間違いなく「ヒト」だからです。
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【新刊】AIに潰されない「頭のいい子」の育て方
生成AIの台頭により、5年後には今ある職業の2割が消えると言われる。まず淘汰されるのは、ホワイトカラーの中のエリート層だ。そんな時代の「頭のよさ」とは何なのか。親は何を目指して子どもを育てればいいのか。「親自身の成功体験を忘れろ」「“一つを極めろ”より、“あれもこれも”の選択肢を」「いつも勝てる場より、競争を」など、親の価値観転換を迫る緊急提言とともに、「愛嬌がある」「負けた回数が多い」など、伸び伸びと強く生きていける子どもの特徴も解説。子どもの未来への不安を払拭する、きれいごと抜きの実践的子育て論。
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