人間は間もなく、AIにかなわなくなる。すると、人間の世界はどうなる?
富永雄輔さんの最新刊『AIに潰されない「頭のいい子」の育て方』より、身も凍る未来予測…。
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すでに私たちは、AIに操られている
もともと私たちは、なにかの根拠として数値を欲しがりました。偏差値も会社の人事査定もその一つであり、デジタル化が進めば、スコア化はさらに進みます。
スコア化は、コストパフォーマンス・タイムパフォーマンス(以下、コスパ・タイパ)の面で非常に優れていますが、一方で、案外大事なものを見落とします。
新型コロナが流行り始めた当時は、盛んに「体温37.5度」が用いられました。美術館もイベント会場も飲食店も……あちこちに体温計が用意され、「37.5度以上の人はお断りします」という姿勢が貫かれました。
では、37.4度なら感染の疑いはないのかといったら、医師ですら確かな返事はできなかったはずです。ただ、なにか判断の拠り所が必要だったために、みんなでそのスコアを基準に動いていたわけです。
スポーツのチームが新たに選手を選ぶときにも、たびたびスコアによる選別が行われます。たとえば、身長175センチ以上という数値基準を設ければ、174.5センチの人ははじかれます。どれほど優れていても、はじかれるのです。
それでも、こうした事例においては、多くの人が「合理化のためには仕方ないのだろうけれど、本当はもっと丁寧に個別に見たほうがいいのに」と感じるはずです。
問題なのは、自らのコスパ・タイパを追求するために、良かれと思ってやっていることが、スコア化に操られているだけの結果になっているケースです。
今、飲食店を選ぶときに、多くの人が「食べログ」などのサイトを活用しますね。あれも、こちらは使いこなしているようで、実は操られている側面が多々あります。
評価スコアが高ければ、「美味しいはずだ」と思い込み、思考停止したまま迷わずに予約してしまう。
「美味しいはずだ」と思い込んでいるから、バイアスがかかって実際の味の評価も甘くなる。
逆に、評価が低ければ、自分が「良さそう」と思っていてもためらってしまう。それによって、本来だったら自分にとってはすごく良かったかもしれない店との出会いの機会を喪失する。
誰かを接待するときなど、「ここにしよう」と決めていた店の評価が低いと、予約する勇気がなくなる。
誰かに接待されたときに、その店の評価が低いと複雑な気持ちになる。
しかし、隠れた名店というのも間違いなくあります。
このように、スコア化のマイナス要素はいくらでも出てきます。
とはいえ私は、こうしたサイトを否定するつもりは毛頭ありません。これからの時代、AIと組んだスコア化がどんどん進むのは止めようがありません。そうしたものは、大いに利用したらいいでしょう。利用できなければ、落ちこぼれてしまいます。
ただ、そのときに、「利用しているか、利用されているか」という検証は必要です。
すでにAIは、人々が考えている以上に深く、私たちの生活に入り込んできています。AIとはうまく付き合わないといけません。抵抗している時間があったら、いち早くAIの使い方をマスターしましょう。大事なのは、AIに淘汰される側ではなく、AIを使える側に入ることです。
「1パーセントの人が99パーセントを支配する時代」を覚悟せよ
データ処理能力では、人間はAIにはかないません。だから、AIが得意な分野にしがみついていれば、潰される人間が次々と出てきます。
逆に、人間を遥かに超えた処理能力を持つAIを徹底的に使いこなせる立場になれば、その人はこれまでの何百倍もの成果を出せます。しかしもちろん、そういう人はほんの一握りです。
ということは、これからのビジネス界では、1パーセントの人が99パーセントの人を支配するようになるわけです。しかも、1パーセントの人が扱う額が莫大になるので、その格差はどこまでも拡大します。
そういう時代が、「やがて」来るのではなく、「すぐ」来ます。
新しい時代には、なにか才能のある人間はどんどん稼げるし、なにも才能がなければどんどん落ちていきます。そして、新しい時代に求められる「才能」は、親世代であるみなさんが共有していたものとは違い、実に多様化しています。
だから、「今、成功している親」ほど危険だとも言えるのです。
一方で、多様化しているがゆえに、希望もあります。以前のように、いろいろな科目で優秀な成績を収め、東大や医学部に進学できる人間だけに才能が見いだせるわけではありません。理科だけが得意だったり、絵が上手だったり、討論に強かったり、あるいは性格がいいというのも才能になり得ます。
そうした特性のうち、明らかに突出したものがあるなら、それをとことん伸ばしてあげれば1パーセントのすごくできる人になるでしょう。
それが見当たらない場合は、いくつか伸ばせそうなところを掛け合わせていくことで、その子だけの強みにしていくことが可能です。99パーセントの中にあっても、豊かに暮らしていくことができるでしょう。
これからの親は、我が子に対して、それを絶対にやらなければなりません。凡庸な子どもを凡庸なままにしておかず、その凡庸さの中からマネタイズできる要素を探し出し、掛け合わせて、生き残れる道を創出してあげましょう。上司と部下も同様です。
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【新刊】AIに潰されない「頭のいい子」の育て方
生成AIの台頭により、5年後には今ある職業の2割が消えると言われる。まず淘汰されるのは、ホワイトカラーの中のエリート層だ。そんな時代の「頭のよさ」とは何なのか。親は何を目指して子どもを育てればいいのか。「親自身の成功体験を忘れろ」「“一つを極めろ”より、“あれもこれも”の選択肢を」「いつも勝てる場より、競争を」など、親の価値観転換を迫る緊急提言とともに、「愛嬌がある」「負けた回数が多い」など、伸び伸びと強く生きていける子どもの特徴も解説。子どもの未来への不安を払拭する、きれいごと抜きの実践的子育て論。
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