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5度のがんを生き延びる技術

2024.10.19 公開 ポスト

難病は1年でも2年でも時間を稼ぐことが大事。臍帯血移植を受ける白血病患者の決意高山知朗

最新刊『5度のがんを生き延びる技術 がん闘病はメンタルが9割』が話題を呼んでいる、元がん患者の高山知朗さん。3度目のがん・白血病ではつらい臍帯血移植を経験しました。

白血病とは、臍帯血移植とはどんなものなのか? 移植患者ががんばるべきこととは? 高山さんの新刊から抜粋して掲載します。


*   *   *

白血病と造血幹細胞移植

造血幹細胞移植にもいくつか種類があります。私の治療においては骨髄移植あるいは臍帯血(さいたいけつ)移植の2つの可能性がありました。

そもそも白血病とはどういう病気か、その治療法としての造血幹細胞移植とはどんな治療なのかを簡単に説明してみます。

さらに、骨髄移植と臍帯血移植についても、先生の説明を参考にして自分なりにまとめてみました。

白血病とは

白血病は白血球ががん化して白血病細胞となり、それが血液中で異常に増え、正常な白血球、赤血球、血小板が減少する病気です。

造血幹細胞移植とは

健康な人(ドナー)から採取した造血幹細胞を患者に移植することで、正常な血液細胞が作られるようにする治療です。

たとえ話で説明すると、白血病患者の体の中で、正常な血球を押しのけて大量増殖している異常細胞(白血病細胞)と、その異常細胞を大量生産している故障した工場(骨髄)を、正常な血球も含めて丸ごと全て破壊して(前処置)、そこに新たな工場(ドナーの造血幹細胞)を移設してきて(移植)、正常な血球が製造できるようにする(生着)、というのが造血幹細胞移植治療です。

骨髄移植とは

骨髄バンクに登録されたドナー、あるいは血縁ドナーから骨髄を採取し、患者の静脈に注入します。骨髄内に含まれる造血幹細胞が患者の骨髄に移動し、新しい血液細胞の生成を始めます。

患者と血液のHLA型がマッチするドナーを骨髄バンクあるいは血縁者から見つけた上で、移植時にそのドナーに入院していただいて、手術室で全身麻酔下にて骨髄を採取し、患者に移植します。

そのためドナーが仕事等の都合があって入院できない場合は、HLA型がマッチしたとしても移植に至らないケースがあります。そうした調整が必要なため、移植までの準備期間は4~5か月とのことでした。

臍帯血移植とは

赤ちゃんが生まれたときへその緒に残った血液(臍帯血)を採取し、冷凍保存している臍帯血バンクがあります。そこから、患者とHLA型がマッチする臍帯血を取り出して解凍して患者の静脈に注入します。

そうすると臍帯血に含まれる造血幹細胞が患者の骨髄に移動して、血液細胞の生成を始めるのです。

身長を測られる生まれたての赤ちゃん(生後0日・分娩室)

すでに臍帯血バンクに冷凍保管されている臍帯血を移植すればよいので、移植までの準備期間は1か月程度とのことでした。

ただ、骨髄移植と異なり、臍帯血中から採取できる幹細胞数は限りがあるため、体の大きな患者の場合は移植に必要な量の幹細胞を得られない可能性があります。

実績のある骨髄移植、近年増加する臍帯血移植

先生によると、臍帯血移植は骨髄移植より新しい治療ではあるものの、治療成績は近年では骨髄移植に迫っているそうです。

臍帯血バンクでドナーが見つかる確率も以前より上がっていて、今では97%ほどだといいます(確率は私の治療当時のもの。以下同)。

また、移植の成功を意味する生着率については、以前は骨髄移植が97%で臍帯血移植は85%とかなりの差がありましたが、今では臍帯血移植の治療技術の向上によって差が縮まってきています。

生着とは、移植した造血幹細胞から新たに血液が造り出されるようになることを指します。

こうした状況を背景に、最近は臍帯血移植の実施件数が増加しており、骨髄移植の実施件数を上回っているようです。

 

私は悪性リンパ腫の治療時に、移植も治療の選択肢としてあったため、骨髄バンクの検索をしていました。しかしそのときはマッチするドナーさんが見つからなかったのです。

そうした経緯があって、骨髄移植ではなく臍帯血移植を受ける方向で準備を進めていくことになりました。

1年でも2年でも時間を稼ぐことが大切

私のタイプの白血病の場合、移植の前処置の抗がん剤治療だけで白血病細胞を完全に根絶することは難しく、残ってしまった白血病細胞は、移植した臍帯血の免疫反応により駆逐する必要があります。

しかし、移植した臍帯血の免疫反応でも白血病細胞を根絶できなかった場合、再発してしまう可能性が高くなります。

それでも、移植を行なって、再発までの時間を1年でも2年でも稼ぐことで、分子標的薬などの新しい治療法の選択肢も増えてくる、と先生は言います。

例えば、当時メディアで話題となっていた免疫チェックポイント阻害剤のオプジーボについても、いずれ急性骨髄性白血病にも使えるようになる可能性があるとのことでした。

免疫チェックポイント阻害剤とは、がん細胞が免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みを解除する薬のことです。

また、染色体異常のある白血病に対応する薬なども開発されているようです。

このように新しい治療法が日々開発されているので、1年でも長く生きれば、それだけ新しい治療薬が使えるようになって、治せる可能性が増えてきます。

だからこそ、まずは抗がん剤と移植で1年でも2年でも時間を稼ぐことが大切なのだというお話でした。

 

まだまだ人間の体には分からないことが多く、医学はいまでも発展途上で、だからこそ、これからも新たな治療法が開発される余地が大きいのでしょう。

一連の話を聞いて、自分を含め、治療の難しい病気の患者は、治療法の研究の最前線に立っているのだという思いを強くしました。

移植患者ががんばるべき3つのこと

先生は、患者自身にがんばって欲しいこととして次の3つを挙げました。

1 リハビリ──なるべく起きて過ごす

入院中、寝てばかりいると筋力が低下し、退院後の社会復帰に影響する。また褥瘡(じょくそう。床ずれ)や肺の障害の原因となる。リハビリで筋力の低下を最小限に抑えること、日中はできるだけ起き上がった状態で過ごすことが大切。

2 清潔ケア──うがい、歯磨き、手洗い

治療中の感染症を防ぐために手洗いはもちろんのこと、うがいや歯磨きも重要。口の中に細菌があると口内炎や咽頭炎の原因になる。うがいで喉の乾燥を防ぐことも大事。

3 食事──少しでも口から食べる

量は少なくてもいいのでできるだけ口から食べる。栄養は点滴で入れているので、口から食べるのはゼリーでもプリンでもなんでもいい。口から食べることで胃腸を動かすことが大切。

 

こうした日々の地道な努力を患者自身がどれだけ積み重ねられるかが、感染症などの合併症の予防につながり、早期退院にもつながるし、その後の社会復帰にもつながると先生に言われ、私も治療が始まったらこの3つはがんばろうと思いました。

特にリハビリについては、理学療法士さんとのリハビリだけではなく、廊下を歩く、ベッド脇でスクワットをする等、自分でできることもしっかりやろうと決めました。

早く退院するため、早く以前の日常を取り戻すため、できることはなんでもやるという気持ちでした。

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5度のがんを生き延びる技術

2024年10月9日発売の高山知朗著『5度のがんを生き延びる技術 がん闘病はメンタルが9割』の最新情報をお知らせします。

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高山知朗

1971年、長野県伊那市生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)、Web関連ベンチャーを経て、2001年に30歳でITベンチャー企業の株式会社オーシャンブリッジを設立。11年、40歳で脳腫瘍(グリオーマ)を発症して手術を受け、腫瘍は全摘出されたものの視覚障害が残る。13年には悪性リンパ腫を発症し、約7か月間入院して抗がん剤治療を受け寛解に至るが、体力面の不安から17年に会社をM&Aで売却。その直後に急性骨髄性白血病を発症し、臍帯血移植を受けて約8か月の闘病の末に寛解に至る。20年には大腸がん(直腸がん)、24年には肺がんを告知されて手術を受ける。53歳の現在は、3か月ごとに検査のため通院しながら、妻と娘とともに自宅で元気に暮らす。

5度のがん闘病の記録をつづった「オーシャンブリッジ高山のブログ」は、がん患者とその家族から「勇気が湧いた」「希望の光が見えた」「冷静で客観的な文章で分かりやすい」と絶大な人気を誇る。著書に『治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ』(小社刊)がある。

オーシャンブリッジ高山のブログ http://www.oceanbridge.jp/taka/

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