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衰えません、死ぬまでは。

2025.01.04 公開 ポスト

第22話 苦闘の末につかんだ筋トレ三原則 後半

“筋トレ困難派”の人でも2か月続く、筋トレの3原則、見つけた!宮田珠己

筋トレマニアの息子の作る料理で「低カロリー糖質脂質制限生活」のおかげか、中性脂肪が大幅に減った宮田さんだったが…。

ある日、息子が大量のドーナツを買ってきたのを見てしまう!

*   *   *

え、ドーナツあり? 菓子パンといっしょだろ。

と驚いていると、息子は「今日はチートデイ」と言って、ドーナツをひとりで6つぐらい食べてしまった。わけがわからん。

すると娘が解説してくれた。ダイエットと筋トレで体を絞っていくと、途中で体重の減少が止まってしまう時期がくる。そのとき、さらに絞るために、代謝をあげる必要があって、その弾みをつけるため、月に1度か2月に1度ぐらいチートデイと称し、バカ食いする日を設けるのだと。

 

おお、そういうことなら早く言ってくれ。だったら私も鶏皮とか牛丼とか濃厚なアイスとか食べるぞ、と思ったら、お父さんはまだ早いと却下されたのであった。なんでだよ。

お父さんはまだそんなに絞れてない、とのこと。

いや、そこまでストイックにやらないといかんのか。

(写真:宮田珠己)

もともと私は甘党なのであって、スイーツ男子と言ってもいいぐらい、否、スイーツおじさん、もしくは、スイーツお爺さんになる日も近いんだけども、とにかくコーヒーには砂糖もミルクも入れる派であり、もし自分が飲食業をやるとしたら絶対鯛焼き屋と決めているぐらいなんだが、筋トレしてる人ってみんなここまで食事制限してるの?

牛丼つゆだくも、うどん屋の天かすも、チョコレートケーキも食べずに生きてんの?

筋トレとは、ただ日常+腕立て伏せ+腹筋という生活をするのではなく、これまでとは別の世界線で生きることなのらしい。そこまでの覚悟が必要だったのだ。

そんなわけで、中性脂肪が2年で半減した喜びと、好きなものを自由に食べられない悲しみがいっしょくたになっている毎日である。もしダイエットしなきゃと思っている読者がいたら、私からのアドバイスは、こうだ。

別の世界線で生きよ。

日常生活に何かを足したり引いたりする程度ではだめなのである。

それで、結局筋トレは続いているのか、私の運気は上がりそうなのか、という話に移りたい。

(写真:宮田珠己)

なんと信じられないことに、筋トレ、続いているのである。

前回書いた通り、超低ノルマのレコーディング筋トレ、名づけてサステナブル筋トレを採用したことで、もう2カ月も毎日続いている。2カ月ぐらいで偉そうな顔をするなと言われそうだが、これだけ続いたのは学生時代の部活以来であり、個人的には快挙と言っていい。

そこで今回、筋トレが続いた理由を解明すべく、多少繰り返しになるが、どのようにやってるかまとめてみようと思う。

前提として、まず心が弱い人、何をやっても続かない人、つまり今までの私のような人がターゲットであることを確認しておきたい。ポイントは大きく3つ。

 一、    ちょっとしかしない

 二、    けど毎日やる

 三、  記録をつける

である。

まず、第一原則の〈ちょっとしかしない〉だが、全体で10分を超えると無理である。苦痛を感じる前にやめる。私の場合、腕立て10回、プランク90秒、バックランジ30回だけ。ただこの回数にも秘訣があって、あくまでこの数字は参考ということ。その日の気分で、これ以上やってもこれ以下でもいい。とにかくやりたくなくなったところでやめる。

そして2セット不可。1回休んでしまうともう1回やろうという気持ちになれないのが、われわれ筋トレ困難派の性だからである。このことが第二原則の〈毎日やる〉に大きく影響する。

正直、たったこれだけの筋トレでも、気が重い。毎日やるなんて不可能に思える。だがやってみると10分かからないから、案外きつくないな、と思えるわけである。案外きつくないと思えるけど、翌日になるとやっぱり気が重い。気が重いけどやってみたらすぐ終わる。この繰り返しで、徐々に自分を慣らしていく。

どうしてもやる気が起きないときは、床に敷いた筋トレマットの上に腹ばいになって、しばらくじっとしているといい。弾力のあるマットは温かみがあって、ただ腹ばいになっているだけで気持ちがいい。

筋トレなんてやらないよ、という態度で腹ばいになっていると、だんだんちょっとやってもいいかなという気持ちになってくるものだ。それでちょっとやって終わるのである。

それでも一度サボってしまうと雪崩をうってサボりはじめるのは、筋トレ困難派あるあるなので、とにかく毎日一度、筋トレマットで腹ばいになることだけは守る。筋トレじゃないよ、腹ばいになるだけだよ、と自分に言い聞かせながら。

(写真:宮田珠己)

そして第三原則の〈記録をつける〉だが、これにもコツがある。つけるのは体脂肪率や体重ではなく、やった回数である。変化のない数字を記録してもモチベーションはあがらない。2カ月続けても、体脂肪率も体重もたいして変わらない。毎日同じだと記録をつけても退屈なので、つけるのは回数。

さらにここで肝腎なのが、毎日のノルマを設定しないこと。腕立て10回というのは、あくまで目標値であって、7回でも20回でもいい。そして毎日変わるともっといい。

私はエクセルで表をつくって記録をつけているが、累積回数を表示するようにしたところ、数字はどんどん膨らむ一方だ。すると、表を見るのがだんだん楽しくなってくる。

おお、今月はこんなにやったかと、たいした量じゃないにもかかわらず、やった感が出てくる。

そうやって2カ月。それでも挫けそうなときがあるから、筋トレ困難派の意志の力をなめてはいけない。というか、なめないといけない。できるわけねーと。そしてハードルを可能な限り下げるのだ。

そんなんで効果あんのか、と思うかもしれない。たしかに本格筋トレ派に比べたら、あんまりないだろう。だが、わずかながら、私のお腹の肉が締まってきた感があるのは、気のせいだろうか。2カ月やって体重も体脂肪率も変化はないけど、なんとなく太ももがしっかりしてきたように思うのは、錯覚だろうか。

サステナブル筋トレの真価が問われるのは、これからである。

(連載は「小説幻冬」でも掲載中です。次号もお楽しみに!)

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衰えません、死ぬまでは。

旅好きで世界中、日本中をてくてく歩いてきた還暦前の中年(もと陸上部!)が、老いを感じ、なんだか悶々。まじめに老化と向き合おうと一念発起。……したものの、自分でやろうと決めた筋トレも、始めてみれば愚痴ばかり。
怠け者作家が、老化にささやかな反抗を続ける日々を綴るエッセイ。

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宮田珠己

旅と石ころと変な生きものを愛し、いかに仕事をサボって楽しく過ごすかを追究している作家兼エッセイスト。その作風は、読めば仕事のやる気がゼロになると、働きたくない人たちの間で高く評価されている。著書は『ときどき意味もなくずんずん歩く』『ニッポン47都道府県 正直観光案内』『いい感じの石ころを拾いに』『四次元温泉日記』『だいたい四国八十八ヶ所』『のぞく図鑑 穴 気になるコレクション』『明日ロト7が私を救う』『路上のセンス・オブ・ワンダーと遥かなるそこらへんの旅』など、ユルくて変な本ばかり多数。東洋奇譚をもとにした初の小説『アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険』で、新境地を開いた。

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