
『発達障害児のママで博士が教える でこぼこちゃんの個性が輝く育て方』は、広島県、愛媛県で6つの療育施設を運営し、のべ1600人の発達障害児(でこぼこちゃん)をサポートした経験を持つ森川敦子氏の初書籍です。(はじめから読みたい方はこちら!)
数年前から頻繁に聞くようになった「グレーゾーン」「HSP」という言葉について、森川氏に作業療法学博士としての見解を綴っていただきました。ぜひご一読ください。
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発達障害とグレーゾーン
グレーゾーンという言葉のイメージは「発達障害に近い特徴はあるけれど、程度が軽い」とか「診断がつくほどではない」、というようなものでしょうか。
多くのママ・パパが「うちの子は診断がつくかつかないかわからない」「ハッキリ発達障害と決まったわけじゃない」という意味で、グレーゾーンという言葉を使っています。
なかには「グレーならセーフでしょ」と、わが子の発達障害を認めたくなくて、何度も診断を受けさせる、そんなママ・パパもいると聞きます。
一見、便利な言葉ですが、この本では基本的に「グレーゾーン」というジャンル分けはしません。
そもそも「グレーゾーン」は、医学的な名称ではなくASD(自閉スペクトラム症)に限定された概念でした。
自閉症の症状はさまざまです。相手をまったく認識しない重度の人から、挨拶が返せる人、普通に生活はできているけれど自閉症的な傾向の人まで、さまざまな程度があり、「自閉症ではない人」との間には明確な境界はなく、連続しています(スペクトラムというのは「連続体」という意味)。
その、白でもなく、黒でもない状態をグレーゾーンと呼んでいたのが、いつのまにかそのままADHD(注意欠陥・多動症)などほかの発達障害に結びつけて使われはじめたのです。
この言葉の流行の背景には、自信を持って発達障害の診断を下せる専門医の不足もあります。
診断がつくかつかないかは大きな問題ではない、と私は思います。
結局は本人や周囲が「困っているかどうか」がすべてではないでしょうか。
たとえばもし、頭がガンガン痛いとき、それが片頭痛か緊張性頭痛かという診断よりも、どうやったら痛みを止められるか、どうしたら再発しないかのほうが大事だと思いませんか?
発達障害の診断や診断名よりも、本人や周囲の「困り感」、苦手や課題をどうやって解消するか、どうしたらもっとひとりひとりが自分らしく輝けるかのほうが大切です。
それに、偏りのまったくない人なんかいません。
そういう意味では、私も、この本を読んでいるあなたも、でこぼこちゃんなのです。
子育てで「こんなはずじゃなかった」「どうしてうちの子だけ」と思うときこそ、ぜひ、お子さんの「でこ」と「ぼこ」をよ~く見てほしいと思います。
HSC(HSP)という「診断」はできない
数年前から「繊細さん」や「HSC(Highly Sensitive Child)」「HSP(Highly Sensitive Person)」という言葉が流行っています。
ビクビクちゃんのお子さんと一緒に病院を訪れ「うちの子はHSPなんで、それで診断名書いてください」という保護者がときどきいらっしゃいます。
でも、どんな名医も、そのような診断はできません。
なぜかというと「繊細さん」や「HSC(HSP)」は医学用語ではないからです。
HSC(HSP)に診断をつけるとしたら、ビクビクちゃんのような感覚過敏は、ASD(自閉スペクトラム症)の特徴のひとつとします。
いずれにしても、「うちの子は繊細さんだ」と気づいてあげられるのはとてもいいことです。
適切な療育を受けることで、さらにお子さんの繊細な能力が伸びる、という可能性もあります。ぜひ考えてみてください。
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本書には、「発達障害の種類や特徴」「受診の仕方」「おうちでできる療育」「学校選び」など、のべ1600人のでこぼこちゃんをサポートしてきた森川先生の効果的なノウハウが詰め込まれています。続きはぜひ、本書でお楽しみください!
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発達障害児のママで博士が教える でこぼこちゃんの個性が輝く育て方

じっとしていられない。お友達と仲良くできない。好き嫌いがたくさん......
「うちの子だけ、どうして?」の悩みが軽くなる!
支援実績1600人・6つの療育施設を運営する森川氏の「発達障害の でこ(得意)を伸ばし、ぼこ(苦手)を補う、効果的ノウハウ」を詰め込んだ1冊。