
旧知の仲である、清水ミチコさんと光浦靖子さん。お二人のリレーエッセイがスタートします。まずは、カナダにお住まいの“脱皮成功”した光浦さんへ清水さんから。
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急に夏日の暑さになりました。と、書いている今日は、4月の21日(日本時間)です。大谷翔平さんのお子さんのお誕生日の翌日と覚えてください。この2025年は急に冷えたり、いきなり暑くなったり、雷やひょうに突風と、天候がてんこ盛りの荒れ模様です。トランプさんの登場で、経済も世界規模で転がされるように急変、翻弄させられてます。そして業界では、昔のように芸能人が少しずつ徐々にいなくなるという風ではなく、急にすぐ消えるなんていう現象がたびたび起こっています。こんなに特徴的にしんどい時代がかつてあったでしょうか。まるで何かの前兆のようで怖いです。
けれども「巳年はまさに蛇行しながら変化するんですよ」と、ラジオでユーミン様が、あの知的低音ボイスで語っておられました。日本だけでなく世界中も巳年なのかということは今は置いといても、せめて後半からは、蛇のごとく脱皮して、再生する未来に期待したいもんです。
そして脱皮成功といえば光浦さん。業界から距離をとって、今やあきれるほどストレスがなさそうではないですか。スッキリ。しかもこれで今後一生、「あいつ消えた」「干された」などと指をさされたりしない。ここが一番得をしたし、勝ったな! と私は思いました。これからはもうどこに出なくても当たり前であり、どこに出ても許されるという、世間の謎の生涯特別許可証を手にしたようなものです。私と仲の良かった野沢直子さんもその先人で、業界を離れて渡米してからは、羽が生えたかのように自由。もともと自由だったけど。
じゃあなぜ私はとどまってるのかと考えてみると、やはり芸能が何より大好物だったのでした。ザ・日本の芸能。日頃ふと思いついたことを、つたないながらもネタに絞って、お客さんらと共感できて笑いになったなんて時は、これ以上の冒険や快感がほかにあるだろうか? と思うほど嬉しい。逆に私はライブしかできないな。人間、可能性を見つけるより不可能性を知る方が道は早いかもしれません。
60代になってるのにいまだ叱られることも多いけど、ライブには満足があるんだよね。あと若い頃、芸能じゃないバイト生活が長かったせいか、普通の芸能人よりもこの仕事のありがたみが違うんじゃないかな。弁当もらえるし。
って、つらつら書いてみると楽しみが仕事しかなさそうで可哀想みたいだけど。光浦さんたちを見て、自分の居心地を見つけるのが人生の旅なのだとわかりました。
自宅にいるのが好きな私、こないだクローゼットを整理してたら、十数年前に光浦さんが作ってくれた、「サーカスのあざらし」の刺繍のポーチが、引き出しから出てきました。光浦さんたちと一緒にフィジー旅行に行った時にもらったヤツ。覚えてるかな? この頃はまだこんな稚拙だったのか! と思えるようなつたなさが刺繍に残ってるんですよ。私は、物はどんどん捨てて部屋をきれいにしたいとは思ってるのですが、この子は絶対に捨てられません。ちょいヘタってのはどんなものでも可愛いよね。もうヨレヨレだけど、愛嬌があります。いつか、脱皮したヘビのブローチを作ってみてください。愛嬌まだ出るかなあ。
【シミチコNEWS】「清水ミチコ万博 ~ひとり PARADE~in武道館」が5月6日(火・休)午後8:00 WOWOWにて放送されます。