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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

2025.02.28 公開 ポスト

大麻を「違法薬物」にしたのはGHQだった…日本人と大麻の古くて深い関係武器になる教養30min.編集部

昨年、75年ぶりに全面改正された「大麻取締法」。日本でもようやく「医療大麻」が合法化されましたが、いまだに「大麻=悪」と思い込んでいる人も多いのではないでしょうか? このたび著書『あたらしい大麻入門』を上梓した、ノンフィクション作家の長吉秀夫さんに、日本人と大麻の古くて深い関係についてうかがいました。

*   *   *

大麻は日本人にとって神聖なものだった

──『あたらしい大麻入門』はタイトルの通り、多くの日本人が「一度でも手を出したら人生を台なしにする」と考え、政府も厳しく規制してきた大麻について書かれた本ですね。

「ダメ、絶対!」と切り捨てる前に、一度よく考えてみてほしいんです。世界の大麻に対する評価は、日本のそれとはまったく異なります。「大麻を吸ったら人生おしまい」なんてことは誰も言っていませんし、むしろ医療で使えるということが明らかになり、その価値がますます見直されています。

そもそも大麻は、昔から日本にあるもので、人々から大切にされてきました。たとえば、大麻草から採れる繊維はとても丈夫で、野良着としてはもちろん、畳の経糸(たていと)や、下駄の鼻緒などにも使われてきました。

 

日本人とずっと一緒にあったものなのに、それを禁止しろと命じたのが、戦後のGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)です。

1948年、アメリカの占領下で大麻取締法が制定されました。当時の官僚はこれに反対して、地元の農家を連れてGHQに直訴に行くこともあったそうです。しかし、結局のところは押し切られ、とりあえず全面禁止ではなく「免許制」にするところまで譲歩させました。

 

──大麻というのは、日本人にとって大切なものだったんですね。

神社の神具にも、大麻は使われています。たとえば、しめ縄や鈴緒(鈴を鳴らすために使われる紐)は麻でできています。

伊勢神宮のお札はそのものズバリで、「神宮大麻」と呼ばれています。大麻には神が宿っている、あるいは神そのものという考え方が、日本にはあったということです。

 

また、食用としても使われてきました。縄文時代の遺跡からは、煮炊きした痕跡も見つかっています。今でも、七味唐辛子の中に丸い粒が入っていますよね。あれは大麻の種で、麻の実(おのみ)と呼ばれています。

麻の種をしぼれば、オイルになります。食用として、あるいは行灯などを燃やすエネルギーとしても重宝されてきました。

 

さらに、溶剤としても使われてきました。現在ではペンキの溶剤といえば石油ですが、かつては麻の実がよく使われていたんです。

ところが、石油産業が生まれたことで、麻は一気に退場させられてしまいました。第一次世界大戦のころからアメリカで石油への転換が始まり、それが新たに占領した日本にも押しつけられたというわけです。

このようにして、戦後のアメリカ的な価値観の中で、大麻に対する偏見や誤解が生まれてきたということだと思います。

大麻取締法はなぜ改正されたのか?

──そんな日本人の大麻文化を破壊した大麻取締法が、なぜ改正されることになったのでしょうか。

大麻が薬としてよく効くことが世界的にわかってきたのが、一番大きい要因だと思います。

現在、アメリカでは、ほとんどすべての州で医療大麻が合法化されています。連邦法では合法化されていませんが、州法でそうなっている以上、連邦政府も無視することはできません。

そこでバイデン前大統領は、近々、連邦法を変えることを検討していました。となると、日本も足並みをそろえる必要が出てきます。

 

また、国際条約でも、加盟国の投票により大麻の医学的有用性が認められました。このとき日本は反対票を投じましたが、憲法上、日本の法律は国際条約に準拠しなくてはなりません

こうした流れがあって、ようやく昨年、75年ぶりに大麻取締法の改正が行なわれたというわけです。

 

──アメリカ、日本以外の国はどのような状況なのでしょうか。

ヨーロッパでは、80年代くらいから「非犯罪化」の流れが進んできました。法律では規制されているけれども、これを犯罪として扱わないという運用方法です。

大麻を使うことは違法だけれど、犯罪ではないので行政執行はしない。要するに、逮捕はしないし、刑罰もないということです。そうなると、大麻に関する研究もすごく進むんです。

 

──今回の大麻取締法改正のポイントは、どんなところですか?

もっとも大きなポイントは、医療大麻の合法化です。それと産業用大麻の促進が、法改正にあたっての二本柱でした。

ところが同時に、嗜好大麻の使用がより厳罰化されることになったんです。「大麻の乱用防止」がいつの間にか先に来て、医療大麻のことが二の次になってしまった。メディアもふくめて、そのまま法改正を迎えてしまったという感じですね。

 

──医療大麻の薬効成分と、嗜好大麻の陶酔成分が、どちらも大麻に入っていることが問題なのでしょうか。

基本的に、CBD(カンナビジオール)にしても、THC(テトラヒドロカンナビノール)にしても、ほとんど害はないんです。ところが、THCだけが規制の対象になっています。

CBDには気分が落ち着く成分がふくまれていますが、THCにはいわゆる「ハイになる」成分がふくまれています。といっても、幻覚が見えたりはしません。お腹がすいたりなど、ポジティブな効果です。

車の運転をするときに判断が多少遅くなったりするので、その意味では危険があると言えるでしょう。しかし、それ以外の危険はないというのが、世界の常識になりつつあります

 

※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【前編】長吉秀夫と語る「『あたらしい大麻入門』から学ぶ大麻との新しい付き合い方」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。

 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』はこちら

書籍『あたらしい大麻入門』はこちら

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