
地方ロケでの撮影の場合、朝一の時は泊まっているホテルからみんなで撮影場所に移動する。
我々の出発時間より1時間前から、車両部さんは車の雪下ろしをしてくれていた。我々の出発は早朝なのに、更にもっと早くから動いてくれていたのだ。
雪だらけの道をしばらく進むと、他のスタッフさんが乗っている、本体車や機材車が数台連なって停まっていた。
何やら雪で危なくなっている道の様子を見に行ってくれていたようだ。慎重に判断していくみんな。
実は私が合流する前の日、マイクロバスがスタックしてしまったそう。普段はバラバラに移動しているけれど、もう、そうなるだろうと見越して、全車両連なって移動していたそう。案の定、ハマってしまい、みんなで降りてロケバスを外から押して、押して、押して、なんとか脱出したそう。動画を見せてもらったけど、吹雪の中をみんなでかなり押して、もはや1番の感動場面録れてるって感じの映像。現場で見たことない衝撃映像だよねっとみんなが言っていて、でもそれを乗り越えて脱したみんなは、なんだか物凄い絆が強くなっているように感じた。インしてから私は少し空いて、久しぶりに現場に行ったので、みんなの空気感の変化に驚く。いやぁ、色んなことが起こる現場だからこそ、そこで働くみんなの強さってかっこいいなぁ。
話を戻す。
数分してからやっと進み始めた。これ以上はマイクロバスでは危ないとのことで、降りて徒歩で支度場まで行くことになった。
メイク部さんはいつも道具をスーツケースに入れて運んでいる。雪の上を行くも、スーツケースのタイヤは雪の上をうまく転がってくれないようだ。
すごく重たそうだけれど、気合いで持ち上げて運んでくれている。
私は転ばずに歩くことに集中する。
みんな大変そうな中、戦力にならなくて申し訳なく思うけれど、転んで怪我をして撮影に支障が出てしまわないよう(それが1番迷惑だから)とにかくゆっくり進む。
今回、支度場(したくば)としてお借りしている空き家の大きな一軒家は、歩いてきた道から全く見えない。けれど、みんなが曲がったところを曲がると、信じられないくらいに積もった雪。
そこを通れるように雪かきしてくれていたスタッフさん。制作部さんだけでは足りずに、まさかの美術部さんたちも手伝ってくれていた。
家に入るまでにこんなに大変だなんて、想像出来ておらず、びっくり通り越してもはや圧巻の景色。

やっと支度場に辿り着くと、いつもの何倍も時間が経っていた。荷物についた雪で廊下は雪まみれ。
拭いても拭いても、雪が増えていく。
雪国の生活って大変なんだなぁと実感。
支度をして、撮影現場に向かう。
録音部さんはソリに機材を乗せて運んでいる。おもしろい光景。
車から降りるシーンのため、私は劇用車に乗る。みんな外からこちらを撮影していく。車からみんなの動きを観ていたけれど、どんどん吹雪になり、みんなが見えなくなった。
雪や風が降ったり止んだり。ころころ変わる天気に、さっきと光が繋がらないと苦戦しながら撮影していく。車についたいい感じの雪は、晴れるとぐんぐん溶けて、最初に撮ったカットと全く繋がらない。
さっきは吹雪だったのに。もう溶けるって。雪の繊細さに苦戦する選出部さん。さっきは吹雪すぎでよけていた窓ガラスの雪を、今度は足して足して、調整する。結局、天気に合わせて最初のカットが撮り直しになり、なんとかOKが出た。
次は車から出て、走っていくシーン。
吹雪が強くなる。
そこそこの吹雪の演出の為、ブロワーでカメラ前に雪を舞わす。本番に近づくとブロワーが必要ない程、もはや吹雪すぎる吹雪になった。
吹雪のシーンをリアル吹雪の中で撮影する組は初めてだよと口々にみんなが驚く。そしてラスト。ここを撮り切ってしまわなければ、クランクアップ出来ないという訳で、慎重さと勢いとで、謎の連帯感が増していく現場。全員がスーパーヒーローに見えたのでした。
衣装部さんはカイロを貼れるだけ貼ってくれたり、撮影部さんはカメラを吹雪から守って守って、手の空いてる人はみんなくっついて吹雪をよける壁になってくれたり。
みんなのパワーで、印象に残るシーンが撮れていくんだなぁと撮影クルーのかっこよさに唸りました。
なんと監督の次回作はまた雪の中での撮影。
ほぼ同じスタッフで雪山で撮影するそう。
もうみんな雪の扱いがどんどん上手くなっていく。服装だったり、歩き方だったり、危機管理能力だったり。自分の仕事の技術だけでなく、撮影現場の環境に順応していく能力にも脱帽です。
変な仕事だなぁと言いつつ、でも良い画が撮れていればいいと言うかっこいいヒーローたち。
必ず、作品には残ります。
我々俳優部がお芝居する舞台にたどり着くまでに、本当に何人ものスタッフさんの力が合わさっていることを、改めて深く深く感じた現場でした。大きな怪我なくクランクアップを迎えたかっこいいチーム。
私も完成が楽しみです。