パワハラ、モラハラ、セクハラ等、ハラスメント防止への意識は高まる傾向にあるものの、自覚的ハラスメントが横行しています。職場でその時の気分のままにまき散らされる不機嫌も、自覚なきハラスメントのひとつではないでしょうか。
機嫌の良さは、職場の雰囲気、仕事の効率を上げる第一歩。さらに大事にしていきたいものです。
そのヒントを、『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか』からお届けします。
不機嫌をまき散らすのは幼稚さの表れ
本人のモチベーション云々に関わらず、結局、周囲に影響を及ぼすのは、その人の振る舞いである。常に機嫌よく振る舞える人もいれば、不機嫌を前面に出してしまう人もいる。モチベーションが高い人は皆、上機嫌というわけではない。モチベーションは高いものの不機嫌であることもある。
一方で、モチベーションは高くないものの常に上機嫌であるという人もいる。既に述べたように、ハイモチベーション人材は競争心も強く、出世意欲も高い人が多い。そのため、本人の状況の良い時には上機嫌に振る舞いもするが、いったん状況が悪くなりだすと、すこぶる不機嫌になったりもする。
また、モチベーションの高いマネジャーの中には、組織の成果志向を高めるべく、厳しい態度に過度に徹する人もいる。そうした場合、職場には雑談も許されないピリピリとしたムードが漂うことになり、そこで働く人に大きな影響を及ぼす。
上機嫌に振る舞うことは社会人としてのマナーともいえる。イギリス人の作家サッカレーは、「上機嫌は人が着ることができる最上の衣裳である」と言っている。アランも『幸福論』の中で、「私は義務の第一位に上機嫌をもってくるにちがいない」、「不機嫌というものは、結果でもあるが、それに劣らず原因でもある」と述べている。不機嫌は不機嫌を誘発し、全体を不機嫌にしてしまうからだ。
職場にポジティブな空気ができている場合、生産性も高く、創造的な仕事ができやすい。数学者のマルシャル・ロサダは、10年間にわたって、業績のいいチームと悪いチームを研究した。そして、その膨大な数学的モデルに基づき、ビジネスチームに成功をもたらすためには「メンバー間のポジティブな相互作用とネガティブな相互作用の比率」が、最低でも2・9013対1でなければならないことを突き止めた。これは「ロサダライン」、または「3:1の法則」と呼ばれている。
一つのネガティブな意見や行動の悪影響を打ち消すのに、3倍の量のポジティブな意見や行動が必要だということだ。ポジティブとネガティブの割合がこのライン以下だと、チームの仕事ぶりは急速に落ち込む。ラインを上回る比率であれば、チームは能力を存分に発揮する。調査結果によれば、6対1くらいが理想だという。こういう点からすれば、上機嫌を周囲に振りまいてくれる人には感謝すべきであろう。一方、自分の感情のままに不機嫌を振りまいてしまう人は職場に対して大きな害を及ぼしていることになる。
不機嫌な態度をとってしまうのは、自らの不快な感情をそのまま表に出してしまうからで、幼稚であるともいえる。幼い子供であれば、面白くない時には面白くないという感情をそのまま出し、イライラした時にはそのイライラをそのまま表情に表わす。しかし、大人が職場においてそれをやっているようでは社会人とはいえまい。こういう点は、立場上のこともあるであろうが、若手社員よりも中高年社員に多く見られるように思う。恥ずべき実態である。
不機嫌な態度をとってしまう中高年は、社会性に乏しく、幼稚なのである。ハイモチベーション人材が皆、社会性が高く、成熟した人格の持ち主とは限らない。既に述べてきたように、人一倍自我が強いタイプも多く、そのような場合には自己中心的な発想をしがちであり、社会性が欠如していることも多い。
**
続きは、『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか』をご覧ください。