好評につき、第二期開催が決定した、コラムニスト近藤勝重さんによる、文章が学べるサロン「幸せのトンボ塾」。近藤さんから直接添削指導が受けられる、少人数制の贅沢な講座です。
具体的には、どんな内容の講座になるのか?あらためて文章を学びたいと思う方へ向けて、2016年に開催した、第一期受講者のお一人で、国語教師の中原真智子さんによるレポートをお届けいたします。
* * *
9月3日(土)東京の幻冬舎へ行ってきました。
幻冬舎といえば、興味深い本がそろった出版社です。ついに私も出版!…できたらいいのだけれど、それはまだまだ夢です。
なぜそのような場所に行ったかというと、そこで開かれていた近藤勝重氏の文章サロンに参加したからです。
近藤さんは毎日新聞やサンデー毎日に連載を持っている方です。文章の書き方や川柳等の本を多数出しています。その中に「健さんから手紙」という本があって、私の最愛の人、高倉健さんとも親交がありました。その方の文章講座が東京の幻冬舎で開かれるという案内が来たので、通うことにしたのです。9月から2月まで毎月第1土曜日の1時から3時までの2時間、全6回です。その第1回目行ってきました。
幻冬舎は明治神宮近く、渋谷区千駄ヶ谷にあります。そこの一室に17人の受講生がいました。平均年齢はかなり高いです。私より若い人は3、4しかいません。自由な時間がたっぷりありそうな方ばかりです。わざわざ他県から来ている人は私だけかもしれません。いいんです。自己満足なんです。
講座では、まず話題の本「コンビニ人間」について触れ、近藤さんの近所のコンビニに、最近原稿用紙が納入されなくなった話をされました。それから書くことの核心に及び、「うまいへたよりも、書く以上は誰も書いていないことを書く」ことの大切さを話されました。含蓄のある言葉が次々に出てきます。「文章を書く人間は上から見てはいけない。見下ろしたところに何の文章も生まれない」「決めつけてものごとを見ない」更に、こうも言われました。
「文章とはだれも書いていないことを、誰にも分かるように書くこと」
…ハードルが、高いです。
近藤氏から配られた「作文10ヶ条」を書き出します。
(1)何よりも見方。脱社会通念、独自の視点を心がけ、誰も書いていないことを書こう。
(2)常日頃の通俗的な事柄に人間のいじらしさと真実を見つけよう。
(3)思うことより思い出すこと。論よりエピソード。要は自ら体験したネタであれということ。
(4)主張より告白。自慢話より失敗談。それらを正直に書いて、人間的弱さをさらけ出そう。
(5)起承転結は「転」のネタが勝負どころ。「起」は場面。「結」はさっと小粋に終わろう
(6)人間とは?生きていくとは?人生とは?をいつも念頭に置いて細部に目を凝らそう。
(7)説明よりも描写。頭より心。頭は物事の筋道の理解にとどまる。心が納得し、うなずける文章を書こう
(8)視る。触る。触るように視る。眼でも聴き、耳でも視る。さらに嗅ぐ。味わう。そうして初めて五感が活用できる。
(9)現在(今の状況の描写)、過去(背景などの説明)、未来(これからどうなる)の順を踏んで伝わる文章を目指そう。
(10)自分と人、物、自然との関係(距離)を描くこと、それが文章だと心得よう。
近藤さんが主催している川柳会にはこんな川柳が寄せられています。
*ばあちゃんのお腹にパパがいたんだね(7歳)
*感想を書く気で読めばつまらない(小5)
*雪だるま作り終わって邪魔になる(中1)
*抱き上げたこともあったと妻を見る
*嫌なヤツ アイツのなかに僕を見た
どれも短い言葉の中に真実が宿っています。はっと気付かされて納得します。ユーモアもあります。こんな風なことが文章で書けるでしょうか。
近藤さんは「それまで意になかったことに思いが及ぶこと」つまり「気付くこと」には次の4つがあると書いていました。(毎日新聞夕刊に連載しているコラム「しあわせのトンボ」9月1日より)
(1)「あっ」と思わず声を上げたような体験
夏目漱石「虞美人草」…「あっと驚く時、はじめて生きているなと気が付く」
(2)細部に目を向けてわかった本質や真実
寺田寅彦の句…「塵の世に清きものあり白菜哉」
(3)他と比べて「そうか、そういうことなんだ」と思い知ったこと
岸本水府の川柳…「ぬぎすててうちが一番よいといふ」
(4)時の経過とともに実感できたこと
児童文学者あまんきみこさんの言葉…「若い頃の初体験はまったく知 らないことを知ること。年を重ねた人の初体験は、言葉に身体的な喜び や悲しみが寄り添うものである」
ふふん、なるほどなるほど。このような話を2時間聞いた後、次回のための宿題が出ました。「気付いたこと」について原稿用紙1枚分の文章を書くことです。
しゃ~!予想はしていたけど、やっぱり書くのね、当然ね。テーマは「気付いたこと」。何に気付けばいいんでしょう。(1時間経過)で、さっきこんなの書きました。ん~「あっ!」も「へ~なるほど。」もない文章です。どんな指導を受けるでしょう。追って報告します。(気が向いたら)
気付いたこと 中原真智子
この夏、オランダへ一人旅をした。
中学生の時「アンネの日記」を読んで、少女アンネの感性と悲惨な最期に心を打たれた。自分と変わらない年頃の少女の筆力と人生に圧倒された。大人になって、時間とお金が自分で管理できるようになると「アンネの隠れ家に行きたい。この目で見たい。」と思うようになった。隠れ家はオランダにあった。
英語が話せず地図も読めない自分が、ちゃんと行くことができるのか。予約していた宿は隠れ家のすぐ近くだ。着いたその日、中一英語で話した。「アイライクアンネ。アイワンチューゴー!」すると、翌日の予約をしてくれた。アンネが暮らした家をこの目で見て歩いた。壁に貼られた写真や屋根裏部屋の窓から見えたポプラの木は、アンネが見たものと同じなのだ。無理やり感動を探して歩いた。
夢は、あっけなく叶うことがある。ちょっともの足りなく感じてしまうのは、ぜいたくというものだろう。
9月19日(月)
3連休最終日
中原真智子
* * *
<2017年9月9日から開催決定!>
近藤勝重さんから直接文章指導が受けられる、第二期「幸せのトンボ塾」のお申し込みも受け付けております。
近藤勝重氏に学ぶ文章上達の極意
好評につき、第二期開催が決定した、コラムニスト近藤勝重さんによる、文章が学べるサロン「幸せのトンボ塾」。
プロのコラムニストである近藤さんから直接添削指導が受けられる、少人数制の贅沢な講座です。
具体的には、どんな内容の講座になるのか?
あらためて文章を学びたいと思う方へ向けて、第一期受講者のお一人で、国語教師の中原真智子さんによるレポートを全7回でお届けいたします。