残酷なニュースを見聞きしてはショックで寝込んだり、小説を読んでは興奮して眠れなくなったり、外的刺激にすこぶる弱い私は、毎日、自分の中だけのことで大変忙しい。
しかし、私も伊達や酔狂で長年、情緒不安定をやっているわけではないので、精神的に成長しないまでも、こんな自分との付き合い方だけは覚えてきた。
泣いたり笑ったり寝込んだりしていると、食事の支度ができないこともあるので、台所には必ず大きな鍋いっぱいにスープの用意をしてある。
冬にはカリフラワーのポタージュスープ。春には、クレソンのスープやアスパラのスープ。その中でも一年を通して作るのは、たくさんの野菜と完熟トマトを入れたミネストローネだ。作り続けてすでに30年近く。私のミネストローネはだんだん美味しく、懐かしい味になってきた。
私の中には「思い出のミネストローネ」がある。大学4年生の夏休みに卒業旅行で、同級生のマキちゃんと行った、ローマのホテルのミネストローネだ。
私とマキちゃんは、マキちゃんのお姉さんのロンドンのアパートを拠点にして、そこからボストンバックを引き摺りながら、真夏のローマに出掛けた。
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さすらいの自由が丘
激しい離婚劇を繰り広げた著者(現在、休戦中)がひとりで戻ってきた自由が丘。田舎者を魅了してやまない町・自由が丘。「衾(ふすま)駅」と内定していた駅名が直前で「自由ヶ丘」となったこの町は、おひとりさまにも優しいロハス空間なのか?自由が丘に“憑かれた”女の徒然日記――。