富士山の見える町で介護士として働く日奈、海斗、畑中、そして東京のデザイナー宮澤という4人の視点から彼らの人生を描く窪美澄さんの最新刊『じっと手を見る』。
読んでくださった書店員さんからは、自分と重ねたり、昔を思い出したり……とたくさんの感想が届きました。
有隣堂伊勢佐木町本店 佐伯 敦子さん
すごくよかったです。
ここではないどこかを人は夢見たり、希望をいだいたりするけれど、本当はそんなものどこにもなくて、だから目の前の大切な人を大切だって気づかなくてはいけなくて、見失ってはいけないものが、すぐそこにあるのに、と読みながら思いました。
人間って、生きていくことって、どこか、こっけいだな。でも、それでも愛しさを感じられる。どんな人の人生にも。
窪さん、やっぱり大好きです。窪さんの窪さんらしい最高傑作!
大盛堂書店 山本 亮さん
指先で自分と相手の輪郭と心をなぞる。なぞってもその人生は確かな物にはならないし、よるべのない日常は続いていく。
でも読後、何とも心地良い水のようなものに満たされていくのはなぜだろうか。
窪さんが真摯に抱えていた「宿題」の答えがここにあります。
窪さんの作品の中でも個人的には一番好きかもしれません。
文教堂北野店 若木 ひとえさん
読み終えて、1週間経って、浮かび上がってきたのは海斗でした。
生きてゆくために働く中で、捨ててしまわなければならないことはあると思います。それは、「甘え」かもしれません。
そして身につけていかなければならない「分別」という術もあるでしょう。
働いた人の手は、わかります。体のどの部分よりも雄弁に語りかけてくるから。
啓文社ポートプラザ店 井戸 佳子さん
ぐいぐい読みすすめる本でした。
とりあえず、海斗、人が良すぎ! という点がもどかしかったです。
文教堂青戸店 青柳 将人さん
人を好きになると触れたくなるし、嫌いになれば叩きのめしてやりたくなる。
結局どちらも自身の寂しさから湧いて出てくる、人と触れ合いたいという感情なのではないだろうか。
本作を読んで、思い出してみて欲しい。
あの日、あの時、言葉に出来なかった感情が、全部ここに詰まっている。
ゲオ 星 由妃さん
自分を見失いかけた時、ただ黙って側にいてくれた人がどんなに優しい人だったのかと思い出す。身体の相性だけでは心の隙間は埋められない。
「そばにいてほしい」と声を出して言えたならどんなに楽なのだろう。
窪さんの作品はいつも心にズシリと響く。
ジャック鷲津駅前店ブック館 野末 さち子さん
地方都市特有の閉鎖感の中で生活している主人公達に自分を重ねていました。
先の見えない苦しさ、もうどうにもならないもどかしさの中で彼らが迷いながら傷つきながら生きていく姿に心が苦しくなりました。
色々な形の出会いや別れの中で、日奈や海斗が、彼らなりに一生懸命に生きている姿をそこから見付出す希望に少し救われたような気持ちになりました。
マルサン書店仲見世店 小川 誠一さん
石川啄木を連想させるタイトル。
はっきり言って重いし悲しい。
うまくいかないことばかりだが、でも日奈と海斗はこの先うまくやっていけそうな気がする。
積文館書店 松本 愛さん
女も男も、なんでこんなに幸せになるのが下手なんだろう。
第三者から見ると、「こっちの方がきっと幸せになれると思うよ」ってわかるのに、幸せになれなくてもそっちのほうにいっちゃう。
読みながらもどかしいやら、イライラするやら。
でもこれがリアル!これが現実!
探り探り、行きたい方向に進んだり、流されたり。幸せ一直線!なんてムリな話だ。
本の王国豊田吉原店 莨谷 俊幸さん
自分の人生において、自分は主役だが、他人の人生においては脇役。
登場人物がそれぞれ主役となって紡がれる連作短編集。
淡々とつづられるそれぞれの視点からの日常だが、読み終わった後に「じっと手を見る」というタイトルの深み・重みが感じられた。
<イベントのお知らせ>
窪美澄 × 前野健太トークイベント
『じっと手を見る』刊行記念
「帰る場所、好きな人、誰かと生きること」
日程 2018年5月8日 (火)
時間 19:00〜20:30(開場 18:30〜)
料金 1,350円(税込)
定員 110名様
会場 青山ブックセンター 大教室
お申し込みは、下記をご覧ください。
青山ブックセンターHP
じっと手を見る
窪美澄さんの小説『じっと手を見る』をさまざまに紹介。