幻冬舎では各電子書店で「”個“を磨け! 新時代のキャリア戦略フェア」を開催しています。その中からおすすめの一冊を紹介します。
『自由な人生のために20代でやっておくべきこと[キャリア編]』本田 直之
自由な人生を実現するために、20代でどう働き、どう勉強するか。第一人者がアドバイスする、新しいライフスタイルの教科書。
会社依存型キャリアは大きなリスク
「シングルからマルチへ」という思考は、キャリアを考えるうえでも非常に有効です。
私は、サバイバル時代には、シングル・キャリアという思考をいったんリセットしたうえで、マルチ・キャリアをリビルドすることが、すべてのビジネスパーソンの課題だと考えています。
シングル・キャリアとは、主に会社の内部で通用するスキルをベースにした「コーポレート・キャリア」だけに依存した働き方。マルチ・キャリアとは、それと並行して、会社を離れても通用する個人のスキルをベースにした「パーソナル・キャリア」を築いていく働き方です。
一つの会社での「コーポレート・キャリア」に固執し、社内での出世を至上目標として定年まで働こうとするのは、典型的なシングル・キャリア志向です。これまで日本のビジネスパーソンにとって、キャリア=コーポレート・キャリアであり、キャリアをマルチでとらえるという発想は存在しませんでしたし、その必要性もありませんでした。しかし、一社に依存する従来の働き方が、いまや非常にリスクの大きなものになっていることは、先に述べたとおりです。
転職をする場合でも、同じ業界内で、小さな会社から大きな会社へ、もしくは、より年収の高い会社へ「ステップアップ」していこうとするのは、エスカレーター方式のシングル・キャリア志向と言えます。
しかし、小さな企業から大企業への転職がステップアップとされた時代は終わりました。会社更生法を適用された日本航空ほか、かつてのナンバーワン企業が、見る間に凋ちよう落らくしてしまうことは珍しくありません。それどころか、業界そのものが消滅しかねないのがサバイバル時代です。
投資銀行、不動産、自動車業界――どんな業界にしろ「自分はこの道一筋を究める」というシングル・キャリア志向は、時代のうねりに逆らった危険な選択だと認識すべきなのです。
ただ、とかく誤解されがちなのですが、シングル・キャリアをリセットし、マルチ・キャリアをリビルドするとは、いきなり会社を辞めるべきだとか、転職ではなく起業すべきだという提案ではありません。
会社でのコーポレート・キャリアも維持しながら、個人のスキルであるパーソナル・キャリアを身につけていく――これが本当の意味でサバイバル時代にふさわしいマルチ・キャリアの構築法です。
キャリアづくりにも「流動性の確保」は必須
マルチ・キャリアについては次章で詳しく述べますが、その本質は「流動性」にあるということも、ここで強調しておきたいと思います。
現代は、キャリアにおいても流動性の確保が大切な時代です。
たとえば戦地で、食糧が尽きてしまったけれど、撤退もできないとき、食糧を確保するにせよ、敵から身を隠すにせよ、重要なのは一つのやり方に固執せず、柔軟に考え、方策を複数持つことです。今日は安全に魚が捕れていた湖でも、明日には敵の目にさらされるかもしれません。突然、魚がいなくなる可能性もあるのですから、「この湖にいれば大丈夫」と腰を据えてしまっては生き残れません。
それよりは、「今日は魚が捕れる湖、明日はキノコが採れる森」と移動し、さらに小動物を捕獲できる茂みを複数見つけようと動き回っていたほうがいいのです。
投資にたとえてみてもわかりやすいでしょう。
マーケットが安定している時代は、一〇年満期・固定金利の金融商品を買っても、リスクはそうありません。しかし金融情勢が不安定な時代、急激にインフレが進んだりすると、一〇年固定の国債や社債、定期預金などは、紙くず同然になってしまう可能性があります。
景気が不安定で先が見えない時代の資産運用の基本は、流動性の確保です。キャリアもまったく同じです。チャンスのときは一歩踏み込み、ピンチのときは素早く引ける自由度を残しておく。すなわち、状況に応じて、常に複数の方策が確保されているのが、マルチ・キャリアの本来の姿です。
「個」としてスキルを提供するという発想
会社員として仕事をしながら、マルチ・キャリアをリビルドするために必要なのは、働き方の意味づけの転換です。
かつては企業が個人に代わって意思決定し、キャリアを選択してくれました。
「あなたの配属はここです。三〇歳になったので、ここの支店に転勤しなさい。四〇歳になったので課長にしてあげましょう。五〇歳あたりで海外に赴任して、戻ってきたら部長のポストを用意しておきましょう」とレールを敷いてくれたのです。年齢ごとの報酬も仕事の内容も決められていたのが、「雇われ型」という働き方でした。
ことに大企業では、社員住宅や家族手当、福利厚生制度など至れり尽くせりのサービスが提供され、ライフスタイルさえも会社が決めてくれました。
しかし、グローバリズムの波に洗われ、最近のように企業の業績が悪くなってくると、企業はもはや社員のキャリアを守ってはくれません。効率化、スリム化、システム化、少人数化。ゆとりがない企業の多くが人員を削減するのは当然の話です。そのような大きなうねりに気づかず、雇われていることに安心し、どっぷりと企業に依存していては、ある日突然、途方に暮れるはめになります。
もちろん、いきなり起業したり、無理をして独立したりする必要はありません。しかし、サバイバビリティを高めるためには、自分は雇われて仕事をしているのだという考え方をリセットし、自分は個人として企業に対してスキルを提供しているのだという考え方の転換が必要です。
あなたの仕事は時給型か? クリエイティブ給型か?
「そんなことを言っても、うちの会社は成果主義を導入していて、年功給から実力給に変わっている。自分はすでに個として働いている」といった感想を持つ人もいるでしょう。
しかし、日本の多くの企業が現在取り入れている実力給は、評価の基準がかなり曖あい昧まいです。会社で成果を出して評価されているとしても、個人のスキルが高いからとは限りません。会社での成果は多くの場合、自分が所属していた部門の事業がたまたま好調だったといった、そのときどきの外的な事情で決まってきます。
会社で業績を上げたことを自分の力量だと勘違いして、実際に独立してみたら、どこからも仕事がこなかったというのは、よく聞く話です。
スキル提供型の働き方をしていくためには、自分の仕事を個人のスキルという視点から評価する自分なりのものさしが必要です。そのときに有効なのが、「自分がしているのは、時給型の仕事か? クリエイティブ給型の仕事か?」という問いです。
時給型の仕事とは、労働した時間に応じて対価を得る仕事です。ある意味、誰がやっても成果に変わりがない業務であり、仕組み化や効率化によって圧縮しやすい部分です。また、人件費が安いところを選んでアウトソーシングすることが可能なため、業績が悪いと真っ先にカットの対象になります。
ダニエル・ピンクは次のように述べています。
ホワイトカラーが従事する左脳型のルーチン・ワークの大部分が、今ではアジアの国々で驚くほど安いコストで行われている。そのため、先進国のナレッジ・ワーカーたちは海外に委託できないような新たな能力を身につける必要に迫られている。
そして、オートメーションにより、ひと昔前のブルーカラー労働者がロボットに職を奪われたのと同じような影響を、現代のホワイトカラー労働者も受け始めた。すなわち、左脳型の職業につく人たちは、コンピューターが安く、迅速に、上手にこなすことができないような能力を新たに身につけなくては淘汰されるのだ。
(『ハイ・コンセプト』三笠書房)
ここでいう「ルーチン・ワーク」が、時給型の仕事にあたります。
続きは本編でお楽しみください。
***
『自由な人生のために20代でやっておくべきこと[キャリア編]』本田 直之 目次抜粋
◆第0章 「安定」から「自由」へ―一〇〇年に一度の変化を
人生最大のチャンスに
◆第1章 個人サバイバルの時代―大きなうねりに目を向ける
◆第2章 決め手はサバイバビリティ―シングル思考から
マルチ思考へ
◆第3章 会社で働き、キャリアを磨く
―コーポレート・キャリアの法則
◆第4章 一生通用するキャリアを築く
―パーソナル・キャリアの法則
◆第5章 自由に生きるためのトレーニング
―思考・行動・仕組みを鍛えなおす
実施期間:5月18(金)~5月31日(木)
『自由な人生のために20代でやっておくべきこと[キャリア編]』 本田 直之
『多動力』 堀江貴文
『日本3.0』 佐々木紀彦
『独裁力』 川渕三郎
『渋谷ではたらく社長の告白〈新装版〉』 藤田晋
『会社員の経験をフリーランスで生かす仕事術』 はあちゅう / ヨッピー
『新企画 渾身の企画と発想の手の内すべて見せます』 鈴木おさむ
『35歳の教科書 今から始める戦略的人生計画』 藤原和博
『察知力』 中村俊輔
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“個”を磨け!新時代のキャリア戦略
これからの時代、ビジネスパーソンが意識していくべきキャリア構築に関する書籍を紹介します。