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脳が冴え続ける最強メソッド

2018.05.24 公開 ポスト

食べたものによって、脳の状態は激変。脳を冴えさせる食事とは?寒竹泉美(サイエンス・ライター)

世界のビジネスエリートたちは、肉体をメンテナンスするのと同じように、脳のケアにも投資を始めています。日本でも昨年、認知症を予防するための脳トレーニングジム「ブレインフィットネス®」の誕生が話題に。5月にはこの脳トレーニングジムのプロデューサー髙山雅行氏と脳科学者の杉浦理砂氏の共著『ブレインフィットネスバイブル 脳が冴え続ける最強メソッド』も刊行されます。
今回は脳の働きに大きな影響を与える食習慣について。書籍の内容の一端をご紹介するコラムシリーズです。

間違った食習慣があなたの脳を鈍らせているかもしれない

食習慣が脳の働きに影響を与えるということは多くの研究が証明していますし、その一部はテレビや本などで取り上げられ、一般の人たちにも紹介されています。
でも、〇〇が脳にいい、または脳に悪いという話だけを聞いても、実際に食習慣全体の改善に取り組む人はあまりいないのではないでしょうか。
習慣を変えるのはとても面倒で、現状、困ったことが起きていなければ、このままでいいかなと思ってしまいますよね。

たとえ、将来、大変な病気になるかもしれないよと脅されても、病気になった場合を想像するのは恐ろしいので、普段は悲観的な人でもこんなときだけ楽観的になり、「ならないかもしれない」可能性しか見なくなったりします。結果、病気になって初めて自分の体と真剣に向きあい、後悔するという人が少なくないのです。

書籍『ブレインフィットネスバイブル 脳が冴え続ける最強メソッド』によると、脳に悪い食習慣は、将来の認知症のリスクを上げるだけではなく、以下に挙げるような困った状況を引き起こしている可能性があるというのです。
イライラ/眠気/倦怠感/吐き気/頭痛/集中力がない
やる気が出ない/精神的な興奮状態が続く/不安になりやすい

脳に良い食習慣を実践すれば、このような状態を改善できる可能性があります。将来のリスクだけではなく、現状の改善も見込めるわけです。それなら、取り組みがいがあるのではないでしょうか。

「脳が疲れたから、甘いものを食べる」は正しいか

脳が疲れたから甘いものを食べるという習慣のある人は多いのではないでしょうか。また、疲労回復と称して、甘いコーヒーや砂糖がたっぷり入った栄養ドリンクを飲む人もいるでしょう。

糖が不足すると脳は「糖を早く摂取せよ!」と指令を出します。そうすると、私たちは一刻も早く甘いものを食べなければという衝動に駆られます。我慢していると、イライラして集中できなくなってしまいます。
ではその衝動に従って、がぶがぶと甘いドリンクを飲んだり、パンや麺類などの糖質を大量に摂取したりすると、どうなるでしょうか。

『ブレインフィットネスバイブル』を読むと、脳の疲労をとるために糖を大量に摂取するという行為は、逆に仕事の効率を落としてしまうことがわかります。

空腹時にいきなり糖を大量に摂取すると、血液中に糖があふれてしまいます。糖は細胞のエネルギーとして大切な栄養素ですが、いつまでも血管の中を流れていると血管の壁にべたべたくっついたり、酸素を運ぶ赤血球の働きを邪魔したり、細胞を傷つける活性酸素を発生させたりして、体に害を与えてしまいます。そういうことが起こらないように血液中の糖を監視しているのが「インスリン」です。血液中の糖が多くなりすぎるとインスリンが一斉に出動し、糖を血液中から細胞内に移動させ、脂肪に変えて貯蔵します。
大量に分泌されたインスリンが血液中の糖を一気に処理してしまうと、ふたたび糖が不足してしまいます。そうすると慌てた脳はまた「糖を早く!」と指令を出します。私たちは、さっき糖を摂取したばかりにもかかわらず、糖が欲しくなり、イライラして集中できなくなってしまうのです。

何を馬鹿なことをやっているんだと脳を責めたくなりますが、これは、食料を手に入れることが困難だった大昔のシステムがそのまま残っているせいなので、仕方がないのです。狩猟採集時代に生きる私たちの祖先は、栄養豊富な食料を見つけたら、何が何でも手に入れなければ生きていくことができませんでした。それで脳は必死に「今すぐ手に入れて摂取せよ」と命令を出すのです。また、そのころは、飢えをしのぐことが重要な課題だったため、過剰な糖を処理するインスリンの出番は今ほど頻繁ではなかったでしょう。

このような脳の事情をふまえて、現代に生きる私たちは、血糖値を急激に上げない工夫をする必要があるのです。

ミネラル不足がイライラや集中力低下を招く

集中力がない、やる気が出ない、不安になりやすい、すぐにイライラするなどと感じている人は、もしかしたらミネラルが不足しているかもしれません。

脳では、「神経伝達物質」や「ホルモン」が重要な役割を果たしています。神経伝達物質やホルモンは、衝動や感情、モチベーションや幸福感などの精神的な活動や、睡眠や免疫機能などにも深く関わっています。これらの物質を作ったり、うまく働かせたりするために必要なのがミネラルです。

ミネラルというのは、体の中で「金属イオン」として働く栄養素です。
たとえば、マグネシウムは神経伝達物質の合成に必要で、大豆、ナッツ類、魚介類、海藻、ほうれん草などの濃い緑色の葉野菜などに多く含まれています。
亜鉛はストレスなどによる神経のダメージを抑制します。牡蠣、牛肉、豚レバー、煮干しなどに多く含まれています。
鉄は貧血を改善するために必要だということはよく知られていますが、意欲をつかさどるドーパミンや脳を休息させるセロトニンなどの神経伝達物質の合成を助ける役割ももっています。

偏った食事やコンビニで買った加工食品ばかり食べているとミネラルは不足してしまいます。時間がなくて栄養バランスの取れた食事を作るのは難しいという人も、居酒屋や総菜屋などでメニューを選ぶときに、ミネラルが含まれている食品を意識して選ぶといいかもしれません。

食習慣が変わると脳も体も変わります。食生活の改善は、認知症のリスクを上げる生活習慣病も予防できて一石二鳥です。頭も体も健やかに長い人生を送りたい人や、仕事のパフォーマンスを少しでも上げたいと願っている人は、『ブレインフィットネスバイブル 脳が冴え続ける最強メソッド』を参考に、脳を鈍らせている食事の改善から始めてみてはいかがでしょうか。

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