「推し」とは─ー
自分が支持、愛好している対象。
アイドルグループのファンが自分の好きなメンバーを表すのに使用する「推しメン(イチ推しメンバー)」をさらに短縮した言葉。(『片想い探偵 追掛日菜子』本文より)
皆さま、最近、恋してますか? 最後にときめいたのはいつですか?
この本の主人公である追おい掛かけ日菜子は、好きになっては相手を調べ上げて追っかける超ストーキング体質の女子高生。なぜか好きになった相手(毎回変わる)が事件に巻き込まれ、日菜子は助けたい一心で、培ったストーキング術を駆使し、事件解決の糸口を見つけ出していく、という手に汗握るミステリーです。
私、最初は日菜子のことを冷ややかな目で見ていました。手の届かない存在を好きになって、振り向かれたら興味がなくなる「片想い専門」なんて、報われないじゃないか、と。
ところが……。最近、人生初の「推し」が出来まして。若い整体師さんに一目惚れしてしまいました。すべてを忘れさせてくれるその笑顔、尊い。つらい。無理。生まれ変わったら、彼が毎朝顔をうずめるタオルになりたい。今なら日菜子の気持ちが分かる。付き合いたいとかじゃない。ただ、生まれてきてくれてありがとう、と世界に向かって叫びたい。
そして、施術中の何気ない会話から、フルネームや家族構成、日常のルーティーンを推理し、ついに彼のフェイスブックアカウントを発見。彼がよく行く美容室に、偶然を装って行ってみよう……としたところを、作者である辻堂ゆめさんに止められました。危ない、日菜子につられて何かを踏み外すところだった……。
話を戻して、この本の主人公である日菜子は、私のようにカワイイ(?)感じではなく、法律のグレーゾーンに軽く片足を突っ込んでいます。会話の盗聴、ツイッターアカウントのなりすまし、住居の特定、不法侵入などなど。でもこれは自身の欲求を満たすためではなく、推しがピンチに陥ったときに発揮されるのです。推しを救うため技術と知能を駆使して必死になる姿には、ハリウッド映画並みの壮大な「愛」を感じます。「彼氏より推しとのほうがずっと幸せな関係を築ける」なんて愛の名(迷)言もざっくざく。
そんな主人公のブッ飛んだキャラクターに目がいきがちですが、作者は「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞した新進気鋭の作家・辻堂ゆめさん。日菜子の推理や毎回のどんでん返しは、ミステリファンを唸らせること間違いなし。
この夏、あなたも「推し」を作ってみてはいかがでしょうか。しかし、くれぐれも法律の範囲内で楽しんでくださいね。
『片想い探偵 追掛日菜子』担当編集者 伊東
片想い探偵
- バックナンバー
-
- 【須藤凜々花さん激推し本】総理大臣が誘拐...
- 【須藤凜々花さん激推し本】コミックエッセ...
- 【須藤凜々花さん激推し本】天才子役に爆破...
- 【須藤凜々花さん激推し本】「推し」の力士...
- 【須藤凜々花さん激推し本】目の前で「推し...
- 【須藤凜々花さん激推し本】彼氏なんていら...
- 【須藤凜々花さん激推し本】ミステリ史上最...
- ~ジャンル横断!推しがいる人 座談会~推...
- ~ジャンル横断!推しがいる人 座談会~ぶ...
- ~ジャンル縦断、推しがいる人 座談会~推...
- ~ジャンル横断!「推し」がいる人 座談会...
- 東大卒小説家×元アイドル 学問ガチ対談
- 結婚は自分を磨くチャンス
- ネットで好きな相手の素性を探るSNS世代
- 「あらゆる経験が作品の鮮やかさ、深さを作...
- 今後「小説だけを書く作家」はいなくなる?
- 平成生まれ作家が3人集まると
- 特別編 推理作家×探偵対談 実は手作り?...
- 推理作家×探偵対談探偵直伝・浮気がバレな...
- 推理作家×探偵対談9割がクロ!浮気調査の...
- もっと見る