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広く弱くつながって生きる

2018.06.09 公開 ポスト

これからの時代の働き方佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト)

リーマンショックと東日本大震災を経験して、人とのつながり方を「浅く、広く、弱く」に変えた、作家・ジャーナリストの佐々木俊尚さん。その結果、組織特有の面倒臭さから解放され、世代を超えた面白い人たちと出会って世界が広がり、小さいけれど沢山の仕事が舞い込んできたそうです。そして、困難があっても「きっと誰かが助けてくれる」という安心感も手に入りました。SNSで大きく反響を呼んだ、新刊『広く弱くつながって生きる』には、誰でも簡単に実践できる、人づきあいと単調な日々を好転させる方法が書かれています。

(写真:iStock.com/jyapa)

40代になったら終活を始めてみる

 1980年代以降に生まれた、35歳以下の人たちはバブルも知りませんし、不況の最中に育っています。そのため、物事をゼロベースで考えており、期待しない潔さのような感覚を備えています。私が彼らとつきあうのは、それが気持ちいいからです。

 35~45歳の人たちは団塊ジュニア、ロストジェネレーションなどと言われ、悲観的な感覚があります。最近はますます悲観的になっているようで、もっとひどい目にあうのではないか、逃げ切れないんじゃないかと感じているようです。

 そして、45~55歳が「何とか逃げ切りたい」と思っているバブル世代。この世代はまだ終身雇用の時代に入社していますので、それなりに人生設計をしてきたはずです。奥さんは専業主婦で、子どももきちんと学校に入れてという人が多くを占めるでしょう。

 そのため、荒波が波及する不安はいつも抱えているはずです。事実、メガバンクや東芝の社員など、逃げ切れなかった人がボチボチ出てきています。

 ところが、外に出ていく自信がないので、ぬるま湯につかったままの人が山ほどいます。そういう状態から脱却して外に関係性を広げるには、意識的に価値観を変えるしかないでしょう。

 方法としてはいろいろありますが、一つには40代以降になったら終活を始めてみてもいいと思います。終活はだいたい60代、70代くらいからが一般的なイメージですが、40代からでも早すぎることはありません。

 いまから20年後は2038年。いま40歳ならば60歳、50歳ならば70歳です。自分が高齢になった時のイメージを描いておき、いまから計画を立てるのです。つまり、終活というよりは、老活でしょうか。

 まずは日本がどうなっているかをある程度イメージしてみるといいでしょう。この先どんどん人口が減り、オリンピック終了後ぐらいから首都圏近郊の一戸建て地域の過疎化が始まるほか、2030年頃にはタワーマンションがゴーストタウン化する恐れがあると言われています。どう考えても現状の生活スタイルを維持できなくなるのは明白です。

転職可能年齢は上昇していく

 日本では15歳以上65歳未満を「生産年齢」と呼び、文字通り生産が可能な年齢としています。そのため、今後65歳以上が増えるにあたって、生産年齢の一人が65歳以上を2人養うという構図がよく持ち出され、現役世代の負担の重さが強調されます。

 第1章で紹介した河合雅司さんは、その改善を提案しています。いま中卒で働く人はかなり少ないため、生産年齢の下限を18歳以上くらいにします。一方、上限は70~75歳未満程度まで上げます。すると、生産年齢人口が増えますので負担率はかなり下がるのです。なにか数字のマジックのようですが、こうした方が実情にあっているように感じます。

 事実、自身の経験を長く活かせる仕事が増えてきていますし、転職が可能な年齢もかなり上がってきました。

 私は1999年に38歳で転職しましたが、当時はギリギリの年齢でした。40代に入ると、まったく転職先がない時代だったのです。また、フリーになったのは4年後の42歳。この時も周囲からは「40代でフリーになるなんて」「やめておけ」とかなり言われました。

 一方、現在は40代の転職など一般的になっています。たとえば、厳しい状況が続く大手家電メーカーは、40代後半から50代くらいの人材をかなりリストラしていますが、意外に多くの人が家電ベンチャーや中国系家電メーカーなどに転職し、仕事を続けています。

 今後、AIの進化で仕事が減る一方、少子高齢化や人口減少によって人材も減ります。そのため、AIでは無理な仕事であれば人材不足が加速します。必然、転職が可能な年齢も上がっていかざるを得ないでしょう。

 人手不足が加速する仕事としては、一つにはものを作る・書く仕事。あるいは、人をマネジメントする仕事、ホスピタリティの仕事などです。これらを若干考慮しつつ、自分の専門性を見極めて転職活動をしていけば、まだまだ長く働ける可能性が出てきます。

どんな職能でもプロになり得る

 自分のスキルを難しく考える必要はありません。これまでの職務や何らかの経験で得た技能を、どのように活かすかがポイントです。

 たとえば、私の知人に、デパートで販売をしていた女性がいます。子どもができて退職し、いま40代になりました。多少は時間ができたのでもう一度働こうと思い、「パートタイムで販売の仕事をします」とネットで情報を流したところ、優秀な販売員だったため多くのお店からオファーがきました。

「しっかり接客ができる」という自分にとっては当然のことも、客観的に見ると非常に重要なスキルなのです。

 仕事のやり方にしても、パートタイムを本業にしてかまいません。しかも、複数の場所で仕事をすると精神的にも楽になります。一つの会社やお店に使われている感覚から、自分が選んでいろいろな現場に出るという感覚になるからです。雇用主と対等な関係になると言ってもいいでしょう。

 その販売員の女性も依頼をいくつか受けて、意外に高収入を得ているそうです。コンビニ店員やスーパーのレジ打ちにしても、助っ人的なプロとして充分成立すると思います。

小さな仕事をたくさん積み上げる

 みなさんもまずは自分のスキルを棚卸ししてみてください。いま40歳であれば、もう20年近く仕事のキャリアがありますので、必ず積み上げてきたスキルが見つかるでしょう。そして、どういう副業の可能性があるかをリサーチするわけです。

 クラウドソーシングの専門サイト「クラウドワークス」「ランサーズ」などを見てみると、実際にやるか・やらないかは別にして、「こんなことが仕事になるのか」「これくらいできるな」と感じる仕事があります。今後の方向性やスキルを確認する手助けになりますので参考にしてください。

 今後、大企業をはじめ副業禁止規定は緩くなるでしょうから、仕事を見つけたら週末などに少しずつ始めてみてもいいでしょう。セカンドキャリアでは小さな仕事をたくさんやった方が健全かも知れません。3万円の仕事でも、10案件やれば30万円になるわけですから。

 実際、『月3万円ビジネス』(晶文社)という本があるくらいです。いろいろな事例がありますが、たとえば妊婦さんが着るマタニティドレスは一時期しか必要ありません。そこで10着ほど購入して貸し出せば、月3万円くらいにはなるそうです。ほかにも卵を一日20個売る仕事、稲刈りの助っ人など、読むだけでも楽しい本です。

 あるいは、田舎には意外に仕事があります。交通の便が悪い場所は、買い物や通院などに困っている高齢者が多いですし、ちょっとした力仕事も喜ばれます。よく報道される雪下ろしにしても、大雪の日に5人ぐらいのチームを組んで売りこんでみるのもありでしょう。

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佐々木俊尚 作家・ジャーナリスト

新聞記者時代、著者の人間関係は深く、狭く、強かった。しかしフリーになり、リーマンショックと東日本大震災を経験して人とのつながり方を「浅く、広く、弱く」に変えた。その結果、組織特有の面倒臭さから解放され、世代を超えた面白い人たちと出会って世界が広がり、妻との関係も良好、小さいけど沢山の仕事が舞い込んできた。困難があっても「きっと誰かが少しだけでも助けてくれる」という安心感も手に入った。働き方や暮らし方が多様化した今、人間関係の悩みで消耗するのは勿体無い! 誰でも簡単に実践できる、人づきあいと単調な日々を好転させる方法。

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