1. Home
  2. 暮らし術
  3. 白いシャツは、白髪になるまで待って
  4. 「可愛いおばあちゃん」にならなくていい

白いシャツは、白髪になるまで待って

2018.06.22 公開 ポスト

『白いシャツは、白髪になるまで待って』刊行記念。

「可愛いおばあちゃん」にならなくていい光野桃

「歳を重ねて、びっくりするほどおしゃれが自由に、楽しくなった」
そう語る、第一線を走り続けたファッションエッセイスト・光野桃さん。新刊、『白いシャツは、白髪になるまで待って』には、毎日使えるおしゃれのヒントを詰め込みました。一部を抜粋してご紹介します。

「可愛いおばあちゃん」に
ならなくていい

 縁側で猫と一緒にこっくりこっくり、丸い背中に皺だらけの笑顔──こんな老女が、いわゆる可愛いおばあちゃん、のイメージだとすれば、もうそんなひとは実際少ないのではないだろうか。なぜ日本人は老人に可愛さを求めるのだろう。失礼ではないのか。それとも老いては子に従い、ペットのように可愛がられる存在でいてほしい、ということだろうか。
 可愛いおばあちゃんではなく、格好いいおばあちゃんを目指したい。
 歳を重ねると、いろいろ余分なものが削ぎ落されてくる。その分、自然体で楽になると同時に、以前より見えるものも多くなる。欲に目がくらんでいたときには見えなかったものが見え、視野が広がる。なにかを伝えるときも、若い頃のように食い下がったりはしない。肩の力がいい具合に抜け、風が細胞のひとつひとつを吹き通る。歳を重ねても、すっくとひとり、軽やかに立っていたい。
 格好いいおばあちゃんは、身軽で自由な生き方の象徴だ。生きてきた歴史を智恵に替えて歩き続ける旅人だ。
 生命力の強さが個性そのものをかたちづくる、そんなおばあちゃんになれたらいいな。

値段を感じさせない装いをする

 これからのおしゃれは「値段を感じさせない」こと。高そうなものを着ているな、とか、安っぽい感じがする、といった印象を与えず、着ているものの価格的なクオリティに目をいかせないこと。それがおしゃれの健やかさのバロメーターでもあるからだ。
 Tシャツ一枚にも、身につけたとき、微妙に高そうに見えるものと安っぽく見えるものがある。その微差を見分け、中間のクオリティのものを選び取る。安ものはいやだが、必要以上に高そうに見えるものもまた、バランスが悪い。この見極めには時間がかかるが、等身大の価格帯を見つけることは、自分らしいバランスの確立につながっていく。
 値段を感じさせない装いのひとには、穏やかな落ち着きがある。背景に、そのひとなりの知的なおしゃれ個人史が透けて見えるからだろう。

{ この記事をシェアする }

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP