小さな憧れがたくさん叶う世界へ
思い出がよみがえる家電、世界一優秀なペット、ロボットスーツで無限に移動……。5分で胸が高鳴ってくる、ショートショートアンソロジー
発売中の小説アンソロジー『未来製作所』は、未来のモビリティやものづくりをテーマにした5人の作家(太田忠司、北野勇作、小狐裕介、田丸雅智、松崎有理)によるショートショート小説集です。想像を超える新しい世界を小説でつくるには、今の技術を可能なかぎり知りたいということで、執筆前に株式会社デンソーに潜入取材を刊行!その様子を5回に分けてレポートします。最終回は、いつでも、どこでも、自由に移動できる世界の実現可能性について考えてみます。
取材・文 塚本佳子
人生には突然思いもよらないことが起こります。発売中のアンソロジー『未来製作所』に収録されている松崎有理さんの「山へ帰る日」は、大学生が登山中に滑落し、携帯電話で助けを呼ぶところから始まります。脊髄を損傷した彼は、20歳の夏、車椅子生活を余儀なくされます。
人生がガラリと変わってしまい、これまで一人でできていたことが、人の手を借りないとできなくなるということも。そんな時こそ、テクノロジーが活躍する出番です。
実際に、ハンディキャップのサポートで大きな貢献をしています。「平昌パラリンピック」はまだ記憶に新しいと思いますが、多くの選手が最新テクノロジーである車椅子や義足を駆使して、活躍を見せてくれました。
デンソーでは障害者の自立支援として多くのことに取り組んでいます。その一つが「大分国際車いすマラソン」の支援活動。同大会は世界初の「車いすだけの国際マラソン大会」で、世界各国から多くの選手が参加しています。
現在、車椅子はたくさんの特長を備えて、驚くほど進化し続けています。凸凹道でもスムーズに走れたり、運動に積極的に取り組むことができたり、暮らしを快適にするだけでなく、利用者の行動範囲をより広げ、競技での記録さえ狙えます。もはや福祉用具の範疇を超えて、モビリティへと進化しつつあるのです。
「山へ帰る日」の主人公も事故から数年後、再び一人で登山口に立つことができました。怪我が回復したからではなく、最新型の車椅子とも呼べる「スパイダーチェア」を手にしたからです。どんなモビリティかは、ぜひ本書で確かめてみてください!
デンソーへの潜入取材を通して、空飛ぶ車や自動運転など未来のモビリティの現状や、人間をアシストしてくれる数々のロボットたちを知ることができました。
アンソロジー『未来製作所』の参加作家のひとり、太田忠司さんは作家になる以前、自動車部品メーカーに勤めていた経験があります。そんな太田さんはデンソーの工場を見学して、「当時より技術も人づくりも格段に進歩している」と驚きの声をあげました。
日々、生活の中で当たり前のように受け入れているテクノロジーの進化も、その誕生の裏にはたくさんの人たちのびっくりするようなアイデアと、たゆまぬ努力が存在します。
現場の方々がみなさん楽しそうに、「人のためになるモノづくり」に取り組んでいる姿が印象的でした。
映画の世界の話だと思っていた「空飛ぶ車」や、アニメの世界に出てくる時空を飛び越えられる「タイムマシーン」「どこでもドア」さえも、人間とロボットが協力することで実現できる日がくるかもしれない。
そんな未来のモビリティに思いを馳せることで、現状の移動の素晴らしさにも気づくことができました。
10編からなるアンソロジーは、現場で働いている人々との交流があったからこそ誕生した作品たちです。モノづくりをする人たちの熱い気持ちと、それにインスパイアーされた作家のコラボレーションを、ぜひお楽しみください。
書籍関連情報
小さな憧れがたくさん叶う世界へ
思い出がよみがえる家電、世界一優秀なペット、ロボットスーツで無限に移動……。5分で胸が高鳴ってくる、ショートショートアンソロジー
6月21日発売 ショートショート・アンソロジー『未来製作所』の特集です。
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